茶店の歌姫5 スーパー

渋谷かな

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エヘッ! 18 大嶽丸

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「なに!? 酒呑童子に続き、玉藻の前までやられたというのか!?」
 鬼神、大嶽丸が手下から報告を受けている。
「信じられん! いったいどんな奴が倒したんだ!?」
 大嶽丸は同じ日本の大妖怪の二人が倒されたことに驚いた。
「この者の様です。」
 手下から写真を受け取る。
「カワイイ! どこに行けばおみっちゃんに会える?」
 大嶽丸はおみっちゃんに一目ぼれした。
「茶店でアルバイトをしているそうです。」
 おみっちゃんは茶店にいます。
「直ぐに会いに行くぞ! おみっちゃん!」
 恋に一途な鬼神大嶽丸であった。

「おまえたち! 修練は茶店のアルバイトだよ! 筋トレするよりも、勉強するよりも茶店でバイトする方が経験値が稼げるからね! イヒッ!」
 女将さんは妖怪たちに茶店の仕事を無料で手伝わせていた。
「ただ無料で働かせてアルバイト代を払いたくないだけだもんね。コンコン。」
 女将さんの根性を良く知っているおみっちゃん。
「コンコン。」
 油揚げさえ食べることができれば、他人が過労死しても気にしないコンコン。
「なんで私たちまで!?」
 茶店では鬼も狐もタダ働きさせられていた。
「文句があるんならおみっちゃんの歌を聴くかい? どっちらでもいいんだよ。私は。」
 女将さんはおみっちゃんの歌で脅す。
「働きます! お団子作りは楽しいな! アハッ!」
 妖怪たちはそれほどおみっちゃんの歌を聞きたくなかった。
「歌が怖いって、どんな妖怪の物語だよ。」
 呆れる女将さん。

「おすすめ料理はなんですか?」
 お客さんが尋ねてきた。
「今日はあんこ巻きです。お茶とあって美味しいですよ。」
 妖怪の店員が進める。
「ところで・・・・・・おみっちゃんはどこですか?」
 お客さんはおみっちゃんに興味がある様子。
「見てませんね。今日は休みかもしれませんね。」
 店員さんは素直に答えた。
「休み? なら、出てきてくれるように茶店に人々を皆殺しにしましょうか。」
 お客さんは大嶽丸だった。
「え?」
 茶店で大嶽丸が暴れ出す。

「大変だ! おみっちゃん!」
 おみっちゃんのお家に茶店のバイトの妖怪が慌てて走ってくる。
「ふあ~。どうしたんですか?」
 欠伸をする寝起きのおみっちゃん。
「コン~。」
 コンコンは抱き枕替わりで温かいらしい。
「茶店に化け物が現れて暴れているんだ!」
 日本の三大妖怪の大嶽丸来店。
「なんだ。そんなことですか。大丈夫ですよ。茶店には私の師匠がいますから。」
 おみっちゃんの師匠は女将さん。
「茶店が壊されそうになったら女将さん自ら戦うから大丈夫ですよ。エヘッ!」
 女将さんに全幅の信頼を置いているエヘ幽霊。
「おやすみなさい。睡眠不足はお肌に悪いので。zzz。」
 深い眠りに着くおみっちゃん。
「コン。zzz。」
 コンコンも就寝する。

「おみっちゃんはまだ来ないのか!」
 怒る大嶽丸。
「ギャアアアアアアー!」
 茶店の妖怪店員たちは全滅する。
「うちの子は指名料が高いよ。イヒッ!」
 そこに女将さんが現れる。
「なんだ? おまえは。」
 大嶽丸は尋ねてみた。
「私はこの茶店の女将だよ。いうなればおみっちゃんの母親代わりさ。」
 とてもそうは見えない守銭奴な女将さん。
「おまえの娘を頂こう。鬼神の花嫁になれることを有難く思え。」
 おみっちゃんは大嶽丸の花嫁にさせられる。
「いくらだい? うちのおみっちゃんの見受け代は?」
 金額さえ良ければおみっちゃんを売り飛ばす。それが女将さんである。
「千両箱でどうだ?」
 大嶽丸は千両箱でおみっちゃんを買い取ろうとした。
「安すぎる。おみっちゃんにはたくさんご飯を食べさせてるんでね。その分の食費代を払ってもらわないと。」
 本当はおみっちゃんは幽霊なので食費はタダである。
「あんなカワイイ顔をしてよく食べるんだな。それなら千両箱2個でどうだ?」
 おみっちゃんの価値は千両箱2個で倍になった。
「ダメだ。あとあんたが怪我をさせた店員たちの治療にかかる費用で千両箱をもっと貰わないとね。」
 慰謝料を要求する女将さん。
「ほれ。千両箱3個だ。これでおみっちゃんは頂くぞ。」
 大嶽丸は千両箱3個を女将さんに差し出した。
「まだまだ。おみっちゃんはよく働く子でね。千両箱100個は用意しな。そしたら喜んでおまえに嫁がせてやるよ。」
 強欲な女将さん。
「千両箱100個!? そんな無茶苦茶な。せめて半分の50個でどうだ?」
 さすがの鬼神も千両箱100個は持っていなかった。
「ダメだね。びた一文も負ける訳にはいかないね。」
 女将さんの辞書に銭で引くことはない。
「仕方がない。こうなったら力づくでおみっちゃんを奪ってやる。」
 大嶽丸は戦闘モードに入る。
「おみっちゃんの家はお墓になぜかあるログハウスだよ。行っといで。」
 女将さんは親切におみっちゃんの居場所を教える。
「ありがとう。行ってきます。」
 素直におみっちゃんの家に向かう大嶽丸。
「私の茶店は誰にも壊させないよ! イヒッ!」
 おみっちゃんよりも茶店が大切な女将さん。
「おみっちゃんが好きなのか・・・・・・物好きもいたものだ・・・・・・千両箱3個か。儲かったな。イヒッ!」
 女将さんの一人勝ち。

「zzz・・・・・・苺のショートケーキ・・・・・・私は幽霊だから食べれませんよ・・・・・・美味しい・・・・・・zzz。」
 幽霊でも夢の中なら食べ物も食べれるおみっちゃん。
「コン。」
 おみっちゃんの寝言がうるさくて外にトイレに行くコンコン。
「コン!?」
 コンコンは驚いた。目の前に大嶽丸が現れたのだから。
「おい、そこの狐。おみっちゃんの家はどこだ?」
 大嶽丸がコンコンに尋ねる。
(こいつ!? おみっちゃんを狙っている!? 僕が何とかしなくっちゃ!)
 コンコンは小さな勇気を振り絞る。
「コン。」
 知りませんとコンコンは言っている。
「いったいどこにあるんだ? おみっちゃんの家は。」
 大嶽丸はおみっちゃんの家を見つけられなかった。
「コンコン。」
 隣のお墓じゃないですかねとコンコンは言っている。
「そうか。じゃあ、隣のお墓まで行ってくるか。」
 大嶽丸は去って行った。
「コン。」
 いい仕事をしたなとコンコンは自分を褒めた。

「ふあ~。よく寝た。」
 おみっちゃんは目覚めた。
「zzz。」
 コンコンは眠っていた。
「も~う。まったくコンコンは低血圧で朝が起きれないんだから。おまえは女子か。」
 なぜコンコンが寝不足なのか理由を知らないおみっちゃん。
「コンコンの朝ごはんを作らなくっちゃ。」
 着替えてコンコンの朝飯の油揚げを作ろうとするおみっちゃん。

「なんじゃこりゃ!?」
 おみっちゃんは茶店にやって来て驚いた。
「祝! おみっちゃん! 日本の大妖怪! 襲名!」
 朝目が覚めるとおみっちゃんは日本の大妖怪になっていた。
「女将さん!? なんですかこれは!?」
 おみっちゃんは女将さんに尋ねてみた。
「おみっちゃん、大嶽丸も倒したんだろ。すごいね。」
 おみっちゃんは寝ていただけである。
「え?」
 もちろん寝ていたおみっちゃんには何のことだか分からない。
「これで酒呑童子、玉藻の前、大嶽丸の日本三大妖怪を倒したんだから、おみっちゃんは4匹目の日本の大妖怪になったんだよ。イヒッ!」
 日本の4大妖怪の一角になったおみっちゃん。
「私が大妖怪なんですね。お祝いにコンサートを開きますよ! エヘッ!」
 ただでは転ばないエヘ幽霊。
「茶店でもおみっちゃん大妖怪就任キャンペーンだ! めでたい紅白餅を売りつけるよ! 買わない奴は寝床におみっちゃんが行って歌を歌うよ! 歌を歌われたくなかったら茶店の売り上げに貢献しろ! イヒッ!」
 おみっちゃんに便乗する女将さん。
「コン。」
 油揚げって美味しいなと思うコンコンであった。
 つづく。
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