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16日目 ガミジン ハーデース 全員

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「ナイモンしようぜ! みんな!」
 サトはナイト・オブ・モンスターというスマホゲームで遊ぶのが好き。
「今日は学校の代表するナイト・オブ・モンスターを決める戦いを全員でするのよ!」
 スズが現れる。スズのナイモンは赤ドラゴン。
「全国大会! 世界大会に出場するのは俺だ!」
 タカが現れる。タカのナイモンはドラゴン。
「わ、私もがんばります!」
 タナが現れる。タナのナイモンはドラゴン。
「やっと、この前の決着が着けれるね。」
 イトが現れる。イトのナイモンは大魔法使い。
「楽しみだね! みんなでナイモン・バトル!」
 ワタが現れた。ワタのナイモンはゴブリン。
「代表になるのは俺だ!」
 ヤマが現れる。ヤマのナイモンはゴーレム。
「・・・・・・ロボット大好き。」
 ナカが現れる。ナカのナイモンはキラー・ロボット・マーク2。(ニュークリア・ボム仕様)
「僕の百目に勝てるかな? アハッ!」
 コバが現れる。コバのナイモンは妖怪の百目。
「勝つのは俺だ!」
 カトが現れる。カトのナイモンは魔王ドラゴン・キング。
「みんな勢ぞろいだ! 大人数でやるナイモン・ファイトは面白いだろうな!」
「回線が重くならないか心配だわ。」
「大丈夫。ナイモンはデータが軽いから。」
 ナイモンは短時間で勝負がつくと想定されているからデータは軽いはずであった。
「う、うわわわわ!? 人がたくさんで困っちゃう!?」
「おやおあ? タナは人見知りかい? そういう時は人間と思わなければいいんだよ。」
「そ、そうなの!? なら、みんな、熊さんだ! わ~い! 可愛い熊さんがいっぱい!」
「それでいいのかな?」
 タナはイトの助言で人見知りを克服した。
「それにしても、現時点でも無課金者と課金者のナイモンの違いが目立つな。」
「無課金者はNOM1で手に入るドラゴンだし、課金者はガチャから出たナイモン・・・・・・どうせ、俺の家は貧乏だよ!」
 ワタとヤマはナイモン・ファイトで戦ったので交流がある。
「・・・・・・ロボットは僕だけ。アハッ。」
 ナカは人目は気にしない。
「カト。俺っていう奴が多いね。」
「そうか?」
「カトにタカにヤマ。3人もいるよ。」
「なら、ナイモン・ファイトで勝った者が俺様に進化だ! 俺のドラゴンキングに勝てる奴はいないがな! ワッハッハー!」
 カトの魔王ドラゴン・キングはコバの核爆弾で一撃でやられている。
「それでは10人でナイモン・ファイトを始めます!」
「よし! いくぞ!」
 サトは気合を入れる。
「ナイモン! ファイト!」
 サトの学校の代表を決める戦いが始まった。
「サトの名において命じる! いでよ! スラちゃん!」
「スラ!」
 サトはナイモンカードからスラちゃんを呼び出す。
「スラちゃん! 変身だ!」
「スラ!」
「ナイモン! 変身!」
 スラちゃんは鎧に変身し、サトの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! スライムの騎士! スライム・ナイト! 参上!」
 サトはスライムの騎士になった。
「サト。もう赤スラじゃ相手にならないわよ?」
「いいんだ! 僕はスラちゃんが大好きだから! アハッ!」
 サトはスラちゃん推し。
「スズの名において命じる! いでよ! ドラゴン!」
「ドラ!」
 スズはナイモンカードからドラゴンを呼び出す。
「ドラゴン! 変身!」
「ドラ!」
「ナイモン! 変身!」
 ドラゴンは鎧に変身し、スズの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! ドラゴンの騎士! ドラゴン・ナイト!」
 スズはドラゴンの騎士になった。
「スズもドラゴンか!? このままでは、みんなドラゴンになってしまう!? 早くNOM2を実装してくれ!」
「ていうか、私のドラゴンは普通のドラゴンじゃないし。」
 スズのドラゴンは進化すると赤ドラゴンになれる。
「タカの名において命じる! いでよ! ドラゴン!」
「ドラ!」
 タカはナイモンカードからドラゴンを呼び出す。
「ドラゴン! 変身だ!」
「ドラ!」
「ナイモン! 変身!」
 ドラゴンは鎧に変身し、タカの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! ドラゴンの騎士! ドラゴン・ナイト!」
 タカはドラゴンの騎士になった。
「俺もドラゴンなんだよね。」
「い、いいじゃないですか!? ドラゴン!?」
 タカもナイモン・カードはドラゴン。
「タナの名において命じる! いでよ! ドラゴン!」
「ドラ!」
 タナはナイモンカードからドラゴンを呼び出す。
「ドラゴン! 変身だ!」
「ドラ!」
「ナイモン! 変身!」
 ドラゴンは鎧に変身し、タナの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! ドラゴンの騎士! ドラゴン・ナイト!」
 タナはドラゴンの騎士になった。
「わ、私もドラゴン!」
「ドラゴン3連チャン? もっと個性やアイデンティティーを大切にした方がいいよ。」
 イトはドラゴンに関心はない。
「イトの名において命じる! いでよ! 魔法使い!」
「マホ!」
 イトはナイモンカードから魔法使いを呼び出す。
「魔法使い! 変身だ!」
「マホマホ!」
「ナイモン! 変身!」
 魔法使いは鎧に変身し、イトの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! 魔法使いの騎士! マジック・ナイト!」
 イトは魔法使いの騎士になった。
「全員分の変身シーンは必要なのだろうか? 読者サービスで必要なのかな?」
「なんでイトの魔法使いは最初なのにあんなに強いんだ!?」
 ワタの素朴な疑問である。
「ワタの名において命じる! いでよ! ドラゴン!」
「ドラ!」
 ワタはナイモンカードからドラゴンを呼び出す。
「ドラゴン! 変身だ!」
「ドラドラ!」
「ナイモン! 変身!」
 ドラゴンは鎧に変身し、ワタの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! ドラゴンの騎士! ドラゴン・ナイト!」
 ワタはドラゴンの騎士になった。
「4人目でごめんなさい!」
「ドラゴンの騎士ばっかりじゃん!? ドラゴンの騎士育成学校なのか!?」
 みんな、ドラゴンが手に入る魔王の城に物語が進んでいるのであった。
「ヤマの名において命じる! いでよ! ドラゴン!」
「ドラ!」
 ヤマはナイモンカードからドラゴンを呼び出す。
「ドラゴン! 変身だ!」
「ドラドラ!」
「ナイモン! 変身!」
 ドラゴンは鎧に変身し、ワタの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! ドラゴンの騎士! ドラゴン・ナイト!」
 ヤマはドラゴンの騎士になった。
「俺もドラゴンの騎士だ! なんか文句あるか?」
「・・・・・・興味ない。」
 ナイト・オブ・モンスターはまだNOM1だけなので強いナイモンの選択肢が課金しないと、基本ドラゴンしかないのかもしれない。
「・・・・・・ナカの名において命じる。いでよ。キラー・ロボット・Z!」
「キラキラ!」
 ナカは物静かにナイモン・カードからキラー・ロボット・Zを呼び出す。
「キラー・ロボット・Z。変身だ。」
「キラキラ!」
「変身。キラー・ロボット・Z。」
 キラー・ロボット・Zは鎧に変身し、ナカの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター。ロボットの騎士。キラー・ロボット・Z・ナイト。」
 ナカはキラー・ロボット・Zの騎士になった。
「・・・・・・ロボット、カッコイイ。」
「やるな! ナカ! しっかり短時間でマーク2からZに進化している! 僕もみせてやろう! 新種の妖怪を!」
 ドラゴンの騎士祭りは5人で終わった。
「コバの名において命じる! いでよ! 妖怪! 八岐大蛇!」
「ヤマヤマ!」
 コバはナイモンカードから八岐大蛇を呼び出す。
「八岐大蛇! 変身だ!」
「ヤマ!」
「ナイモン! 変身!」
 八岐大蛇は鎧に変身し、ナカの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! 八岐大蛇の騎士! エイト・ヘッド・ドラゴン・ナイト!」
 ワタは八岐大蛇の騎士になった。
「どうだ? ドラゴンの騎士たち! 僕の方が強いぞ! アハッ!」
「もう何でもありになってきたんだな。」
 果たしてドラゴンは頭の数が多い方が強いのだろうか。
「カトの名において命じる! いでよ! 魔王! ドラゴン・キング!」
「マオマオ!」
 カトはナイモンカードから魔王ドラゴン・キングを呼び出す。
「魔王ドラゴン・キング! 変身だ!」
「マオ!」
「ナイモン! 変身!」
 魔王ドラゴン・キングは鎧に変身し、カトの体に装着していく。
「ナイト・オブ・モンスター! 魔王の騎士! ドラゴン・キング・ナイト!」
 カトは魔王ドラゴン・キングの騎士になった。
「結局、子供にウケるのが変身シーンや新しいナイモンの登場なのだ! ワッハッハー!」
「カッコイイ! 魔王ドラゴン・キングだ! わ~い!」
 あくまでもサトは10才の男の子です。
「はあ、はあ、はあ! みんなが準備できたので戦いを始めよう!」
「サト!? あんたバテバテね!? 今度からは総出演じゃなくて、総当たりでもピックアップで随時に登場にした方がいいわね。」
「そうだ。それかトーナメント大会方式にした方がいいぞ。」
「だ、大丈夫!?」
「そんなに疲れていると私と戦う前に死んじゃうよ?」
「がんばれ! サト! 僕は応援してるぞ!」
「俺の出番が回って来なくて困るぜ!」
「・・・・・・ロボット、カッコイイ。」
「見せてやる! 八岐大蛇の実力を!」
「俺の魔王が1番だ! ワッハッハー!」
 それぞれ心配と気合を入れる。
「ナイモン! ファイト!」
「おお!」
 サトたちの10人での全員での戦いが始まる。
「この中で一番速いのは誰だ? 戦闘機!?」
「・・・・・・メガ・ビーム・ランチャー。発射。」
 10人の中で1番素早さが早いコバの強烈なビーム攻撃。
「ギャア!? 俺か!?」
 タカは倒された。
「一撃!? 一撃でドラゴンの騎士を倒したというのか!? なんて恐ろしいナカのロボットなんだ!?」
 他のドラゴンの騎士たちは特に恐怖した。
「・・・・・・僕のロボットが1番カッコイイ。」
 ナカはロボット推し。残りの人数は9人になった。
「おっ!? 次は僕の番なのか! よし! 疲れているから、物陰に隠れていよう! みんなが潰し合ってくれれば戦う人数も減るしね。アハッ!」
 サトは行動をパスして体力の回復を優先した。
「まずい! ドラゴンの騎士は最強のナイモンのはずなのに、目の敵にされているわ!?」
「どうしてもドラゴンの騎士の人数が多いから雑魚扱いだ!?」
「ど、どうしよう!?」
「課金のナイモンがそんなに偉いのかよ!?」
 残りのドラゴンの騎士のスズ、タナ、ワタ、ヤマはドラゴンの騎士同士で会議する。
「同盟を組みましょう! 私たちドラゴンの騎士4人で他のナイモンを倒すのよ!」
「おお!」
 こうしてドラゴンの騎士同盟が成立した。
「まずは赤ドラゴンに進化ね!」
「おお!」
「ナイモン! 進化!」
 スズたち4人のドラゴンの騎士は赤ドラゴンに進化した。
「ナイト・オブ・モンスター! 赤ドラゴンの騎士! レッド・ドラゴン・ナイト!」
 スズたちは赤ドラゴンの騎士になった。
「これで私たちは大丈夫! 他の人たちを倒したらドラゴンの騎士同士決着をつけましょう!」
「おお!」
 一致団結するドラゴンの騎士たち。
「どうして他の人たちを倒せると思うのかな?」
「イト!?」
 そこにイトが現れる。
「どうして人と同じドラゴンを選択したの? ただ強いから? 愛着を持って長くナイモンを育てた方が強くなれるのに。君たちを見ていると残念だよ。」
「なによ!? たかが魔法使いの分際でドラゴンに偉そうにしないでよ!」
 スズはイトに食って掛かる。
「だ、ダメ!? い、イトを刺激しちゃあ!?」
「そうだよ!? 危険なんだ!?」
 タナとワタはイトの恐ろしさを知っている。
「危険? 危険なのはドラゴンの騎士4人に戦いを挑もうとしている、あの女よ!」
 スズはイトのことを何も知らない。
「そうだ! さすがのイトでも俺たち4人を相手にして生きていられる訳がねえ! やっちまおうぜ!」
 何を血迷ったのかヤマは強気である。
「いいよ。私は。1対4でも。私に拍が付くというものだからね。ニコッ。」
 イトは微動だにしない。
「君たちにいいものを見せてあげるよ。自然の属性は火、水、風、土が4大自然なんだけど、もし4つの属性の魔法を一度に仕えたら便利だと思わないかい?」
「はあっ!? 何言っているのよ! どんな魔法使いでも一度に違う属性の魔法を出すなんて無理よ!」
「それはどうかな?」
 スズは同じ女としてイトに負けたくなかった。
「イトの名において命じる! ファイア! ウォーター! ウインド! アース!」
「バカな!? 一度に4つの魔法を使うだと!? しかも4つの属性の魔法!?」
 イトは4つの属性の魔法を使って見せる。
「最初っから一人のナイモンを使い続けていれば、みんなのナイモンもこれぐらいに強くなっていたのにね。もったいない。じゃあ、さようなら。」
 イトは魔法を放つ。
「ギャア!」
「ギャ、ギャア!」
「ギャア!」
「ギャア!」
 スズ、タナ、ワタ、ヤマは倒された。
「1ターン目でドラゴンの騎士は全員退場だね。」
 イトは静かに勝ち誇る。
「ま、まだよ!」
「あら? 生きていたの。赤ドラゴンを進化させて生き残ったんだね。」
「ナイト・オブ・モンスター! ドラゴン・メタルの騎士! ドラゴン・メタル・ナイトよ!」
 しかしスズは赤ドラゴンを進化させイトの魔法を塞いでいた。 
「いいね。そうこなくっちゃ。ニコッ。」
 イトは楽しそうだった。
「俺も混ぜてくれ!」
「カト!?」
 そこにカトが現れる。
「やっと俺の出番だ! 魔王ドラゴン・キングの実力を見せてやる! くらえ! ドラゴン・キング・ファイア!」
 カトの魔王ドラゴン・キングが口から火を吹いた。
「私に魔法は効かないわよ!」
 スズはメタル・ボディーなので魔法攻撃はダメージを受けない。
「マジック・バリア! 私にはどんな魔法も通じないよ! アハッ!」
 イトも魔法のバリアを張り攻撃を防ぐ。
「はあっ!? 俺は魔王だぞ!? なんで魔王の攻撃が何回も防がれるんだよ!? 理解できねえ!?」
 カトは魔王ドラゴン・キング・ナイトなのだが、決定的なダメージを与えることができなかった。
「それは火力が弱いからだ!」
「コバ!?」
 そこにコバが現れる。
「僕の八岐大蛇は口が八つあるから火力も強力だよ! くらえ! エイト・ヘッド・ドラゴン・フレーム!」
 コバの八岐大蛇が8つの炎を吐いた。
「私には炎は効かないわよ! オッホッホー!」
 スズはメタル・ボディーなので炎の攻撃でダメージは受けない。
「マジック・バリア!」
 イトは魔法力でバリアを張る。
「俺は魔王だ! 炎が怖くて魔王がやっていられるか!」
 カトは炎を耐えることを選択した。
「やるな。俺の炎を耐えるとは!?」
 スズ、イト、カトはコバの炎攻撃に耐えた。
「だが、八岐大蛇の本当の恐ろしさはここからだ! なんてったって八岐大蛇は8回連続攻撃だからな!」
「なに!?」
 驚愕の八岐大蛇の8回連続攻撃。
「くらえ! 必殺! エイト・ドラゴン・ヘッド・アタック!」
 八岐大蛇の攻撃。
「ギャア! そんなのあり!?」
「ギャア! おいおい? それでいいのかい?」 
「ギャア! 俺は魔王だぞ!?」
 スズ、イト、カトは倒された。
「勝った! やっぱり妖怪が最強なのだ! ワッハッハー!」
 コバは勝ったと油断した。
「・・・・・・投下。」
 その時、上空で待機していたナカが核爆弾を八岐大蛇を目掛けて発射する。

ドカーン!

 爆発でキノコ雲ができる。
「ギャア! 何が起こったんだ!?」
 コバが倒される。
「・・・・・・勝った。」
 衝撃でボロボロになりながらもナカは地上に降りる。
「・・・・・・ロボットが1番強い。」
 ナカは勝ったと油断した。
「ふあ~あ! よく寝た!」
 その時、地面からサトが目を覚ました。
「なんじゃこりゃ!?」
 核爆弾の後は何も残らない。
「僕がお昼寝している間にいったい何があったんだ!?」
 戦い続けていたサトは疲れて寝ていた。
「あ、あそこにナカのロボット。もう頭も片腕もないんだね。アハッ!」
 サトはナカを発見する。
「いくぞ! スラちゃん! エル! 進化だ!」
「スラ!」
「エル!」
「ナイモン! 進化!」
 スラちゃんはスライム・ライト・ナイトに進化する。
「ナイト・オブ・モンスター! スライム・ライトの騎士! スライム・ライト・ナイト! 参上!」
 サトは光のスライムの騎士に進化した。
「いくぞ! ナカ! くらえ! 必殺! スライム・ライト・ソード・スラッシュ! でやあ!」
 サトは光の一撃を放つ。
「・・・・・・動け。動いてくれ。」
 しかしナカのロボットは傷つきすぎて動かなかった。
「・・・・・・ギャア!」
 ナカは倒された。
「何がどうなってこうなったのかは分からないけど、勝ったぞ! アハッ!」
 サトは10人戦で勝利を収めた。
「よし! 次は物語だ! アハッ!」
 サトはストーリー・モードを始める。

「やって来ました! 冥界!」
 サトは冥界に奈落を抜けてやってきた。
「あれ? テューポーン? エキドナ? あいつらどこに行ったんだ?」
 一緒にやってきたテューポーンとエキドナの姿が見えなかった。

「お目通しいただきありがとうございます。冥王ハーデース様。私は魔王シュベルト様の僕、悪魔ガミジンと申します。」
 悪魔ガミジンは冥界の冥王城にいる冥王ハーデースに謁見していた。
「何の用だ? 魔界の悪魔が?」
 冥王ハーデースは感情なく質問する。
「はい。魔王様から冥王様に伝言があります。」
「伝言?」
「生きた人間が冥界を歩んでいると。」
「なに!?」
 冥王ハーデースの顔色が変わる。
「死者しかおらぬ冥界に生きた人間がいるだと!?」
「はい。地上の人間の光の騎士です。」
「バカな!? あり得ない。冗談を言うな。冥界に生きた人間がいる訳がない。」
 しかし冥王ハーデースは悪魔ガミジンのいうことを信じなかった。
「本当でございます! 冥王様!」
「消されたくなかったら消えろ。もし本当に生きた人間がいるのなら、その人間を自分で殺して私の目の前に首を持ってこい。そうすれば信じてやろう。いね。」
「失礼いたします!」
 悪魔ガミジンは消されたくないので一目散に逃げだした。
「こうなったら自分で光の騎士を殺してやる! ここは死者がたくさんいるから私の方が有利! ワッハッハー!」
 悪魔ガミジンはサトの元に向かった。

「これで良かったのであろう?」
「はい。ありがとうございます。冥王様。」
 冥王の前にテューポーンとエキドナが現れる。
「奈落と冥界は盟友関係。それにおまえたちは私の友人だからな。」
「そうです! 私たちとハーデース様はお友達です! アハッ!」
「エキドナは相変わらず明るいな。本当に奈落の姫か?」
「よく言われます。私は母親に似ているので。アハッ! テューポーンは根暗ですよ!」
「うるさい!」
 冥王ハーデースとテューポーンとエキドナは知り合いだった。
「でも私も興味はあるな。奈落でも冥界でも死なない人間に。」
 冥王ハーデースはサトに興味津々だった。
「不思議なことに光の騎士なのに奈落で出会った時には悪魔の鎧を着ていました。それ故に闇の中でも生きていられるのでしょう。」
「私も最初は敵意があるのかと思ったのですが、まだ10才の純粋な少年。地上に戻ることだけを考え、私とテューポーンとも親しくなりました。冥王様。サトの命を奪うのはお許しください。」
 テューポーンとエキドナはサトのことが好きになっていた。
「分かった。気に障らなければ冥界を通ることを許してやろう。だが、ますます興味が湧いた。一度、会ってみたいものだ。その人間に。」
 冥王ハーデースはサトに関心を示した。

「まったくテューポーンとエキドナはどこに行ったんだ? 僕一人でも先に進んでやる! 地上では魔王の進行が進んでいるはずだ! 早く帰って光の騎士として魔王を倒すんだ!」
 サトは光の騎士としての使命に燃えていた。

ああ・・・・・・あああ・・・・・・。

「なんだ!? 人間!? いや!? こいつらは死骸だ!?」
 サトの前に複数の死体が襲い掛かってくる。
「その通りだ! 光の騎士! おまえにはここで死んでもらう!」
「何者だ!?」
「私は悪魔ガミジン! 死者を扱うことができる悪魔だ! ここがおまえの墓場になるのだ! いけ! 死体ども! 必殺! コープス・ジムナスティクス!」
 悪魔ガミジンは死体を操る。
「ガオー!」
 悪魔ガミジンの指示で死体たちがサトに襲い掛かる。
「クソッ!? 力が使えなければ僕はただの剣士!? しかし冥界には地上の光が届かない!? いったいどうすればいいんだ!?」
 サトは死体の群れに苦戦する。
「ガオー!」
「光の騎士よ! おまえも死体になるがいい! ワッハッハー!」
 斬っても斬っても新しい死体が現れサトに襲い掛かる。

ワッハッハー! 俺の力を貸してやろう!

「この声は!? バエル!?」
 窮地に陥ったサトの心に悪魔バエルの声が聞こえてくる。
「どうして今まで聞こえなかったバエルの声が聞こえるようになったんだ!?」
「奈落の王子や姫と親しくなったんだ! おまえの中で闇に対する理解が出来たんだ! 決して闇の全てが悪い訳じゃない! 俺もおまえなら人間だが、悪魔である俺のことを分かろうとしてくれると信じている! だから、おまえは俺の悪魔の鎧を装備することができ、奈落や冥界でも生きてこられたのだ!」
 サトと悪魔バエルは悪縁という友情で結ばれている。
「光の騎士の僕に悪魔の力を使えというのか!?」
 サトは人間として、光の騎士として悪魔に魂を売るのは抵抗があった。
「なら、こうしよう。俺も魔王になりたい。だから地上に帰るまでは休戦だ。地上に戻ったら再び光の騎士と悪魔として雌雄を決しようではないか?」
 悪魔バエルの悪魔の囁き。
「分かった! 休戦だ! 今は目の前の悪魔を倒すことが優先だ!」
「契約成立だな! ワッハッハー!」
 サトは悪魔バエルと休戦して共闘することにした。
「おい! 人間! 闇の進化だ!」
「闇の進化!?」
「さあ! 唱えよ! デビル・エボリューションだ!」
「よし! バエル進化だ! デビル・エボリューション!」
 サトの装着している悪魔バエルの鎧が進化していく。
「ナイト・オブ・モンスター! 悪魔バエルの騎士! デビル・ナイト・ダーク・バエル!」
 サトの悪魔バエルの鎧が更に闇へと進化した。
「闇が溢れている!? これなら勝てる!」
 サトの体から闇が醸し出される。
「なんだ!? あれは光の騎士から闇が放たれている!?」
 悪魔ガミジンも見たことがない闇がサトから放たれている。
「よし! いくぞ! 悪魔ガミジン! くらえ! 必殺! ダーク・バエル・ソード・スラッシュー!」
 サトは闇の一撃を放つ。
「ギャア!」
 悪魔ガミジンを倒した。
「スゴイ!? これが闇の力!? これなら地上に戻れるぞ!」
 サトは強大な闇の力に呑み込まれていく。

「面白いな! あの人間。遂に闇の力までも使い出したぞ! ワッハッハー!」
 冥王ハーデースはサトに興味津々。
「いけない! サト! これ以上、冥王を刺激しては!?」
「もしも冥界の王のハーデース様が動いたら私たちではどうすることもできない!」
 テューポーンとエキドナはサトの身を案じるのだった。

 つづく。
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