あなたの月 8月

渋谷かな

文字の大きさ
43 / 72

新 葉月とチキン

しおりを挟む
「痛い!? 誰よ!? こんな所にスイカを置いたのは!?」
 道を歩けばスイカに転ぶ。
「甘い! おいしい!」
 拾ったスイカはきれいに食べる。

「え? ええー!? しまった!? 逆!? アチチチチチッ!?」
 花火に火をつけては持ち手の逆に火をつけてしまい炎上。
「たまやー! かじやー!」
 で、自分が撃ち上花火になる。

「海は広いな! 大きいな!」
 海水浴に行き海で遊んでいる。
「キャアアアアアアー!? 誰か助けて!? 死ぬ!?」
 波にさらわれて沖まで流される。
「さ、さ、鮫!?」
 鮫に食べられそうになり、奇跡的に鮫に乗って浜辺に戻って来る。

「夏なんか、夏なんか、大っ嫌いだ!」
 私は夏が大っ嫌いだ。
「好きで8月に生まれたんじゃない! 名前が葉月で夏が嫌いで悪いー!」
 八月葉月。普通の高校一年生の女子高生。ちょっとおバカなだけである。

「夢と希望があれば生きていけるよ! さあ! 今日よりも素晴らしい明日へ飛び立とう! ラララララ~!」
 葉月の夢はアイドルになること。
「私をスカウトしないなんて、見る目がないのね。プン。」
 しかし窓ガラスが割れまくるほどの致命的な音痴であった。

「ギュルギュル!? は、腹が痛い!? さっき食べたスイカに当たったのか!?」
 ある日、葉月はお腹を壊した。
「卑しい自分に腹が立つ!」
 葉月曰く、食べ物に罪はないのだ。

「ただいま! 肉屋でニワトリを買ってきたぞ!」
 父親が生きたニワトリを買ってきた。
「さすが、あなた! 今夜はフライドチキンね!」
 母親もニワトリを喜んだ。
「コケッ?」
 自分が油に放り込まれて死ぬとも気づいていない哀れなニワトリ。

「ダメー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 
 その時、葉月が大声で静止する。
「え!?」
「コケッ!?」
 思わず動きが止まる両親とニワトリ。
「食べるなんて、ニワトリさんが可哀そう! やめて! お父さん! お母さん!」
 葉月は見ず知らずのニワトリを助けた。
「わ、分かった。」
 葉月の必死のお願いはニワトリをフライドチキンの刑から救った。
「ギュルギュル!?」
 葉月はトイレに走った。
「どうしたんだ? 葉月。」
「スイカを拾い食いしてお腹の調子が悪いんですよ。」
「そうか。だからフライドチキンは今日じゃなく、明日にしようってことだな。」
「そうですね。葉月が一番フライドチキンが大好きですからね。」
 妙な所で納得する両親たち。
「コケッ!」
(見つけた! 私の干支守だ!)
 そうとも知らないでニワトリは葉月の行為に涙を流し感動した。

「ああ~、スッキリした!」
 トイレで用を済ました葉月はにこやかだった。
「コケッ。」
 トイレの前でニワトリが待っていた。
「ごめん、待たせて。どうぞどうぞ。」
 トイレを進める葉月。
「最近のニワトリは洋式トイレを使うのか、すごいな。」
 感心する葉月のIQはかなり低い。
(私はトイレではない!)
 その時、どこからか声が聞こえてきた。
「あれ? おかしいな? 誰もいないのに声がする!?」
 しかし周りを見渡しても誰もいない。
(私は目の前にいるではないか!)
 また同じ声が聞こえてきた。
「目の前?」
 葉月は目の前のニワトリを見つめる。
「まさか!? ニ、ニ、ニ、ニワトリが喋った!?」
 気づいてはいけないものに気づいてしまった葉月。
「コケッ。」
 仁王立ちしているニワトリ。
「幻聴だ!? まさか私が若年性アルツハイマー型認知症だったなんて!?」
 自分のことを病気にして現実から目を背ける葉月。 
(こらー! しっかりしろ!)
「ウワアアアアアー!? ニワトリが喋った!?」
 また驚く葉月。
「コケッ。」
(喋っているのではない。おまえの心に呼びかけているのだ。)
「私の心?」
(そうだ。おまえは私の干支守になったのだ。)
 葉月は干支守になった。
「干支守って何?」
(干支守とは、干支に仕える人間のことをいう。私は酉の干支のニワトリ様だ。)
「ニワトリ様って・・・・・・。」
(頼んだぞ。葉月。)
「ウワアアアアアー!? どうして私の名前を!? 変態!? ストーカーのニワトリだな!?」
(誰が変態ストーカーだ!? おまえのニワトリを大切にする心に感動して、私の干支守にしてやったんだぞ!? 私に感謝しろ!)
「なぜニワトリに感謝しないといけない!?」
(おバカなおまえの人生を私が助けてやろうと言っているんだ! 私がいれば、スイカにつまづくこともないし、花火で火傷することもない。ましてや海で溺れたり、鮫に命を狙われることもない。)
「おおー!?」
 ニワトリ様の言うことに感動する葉月。
「じゃあ、じゃあ、私、アイドルになりたいんだけど、・・・・・・最強に音痴なんだ! 私の音痴も治せる!?」
 葉月の夢はアイドルになること。しかし彼女は致命的なほどに音痴らしい。葉月が歌えば山が崩れ、海が二つに割れるらしい。
「コケッ!」
(私に不可能はない!)
「コケコッコー!」
(くらえ! 干支パワー! ダー!)
 酉の干支のニワトリはエネルギーを高めて葉月に力を送る。
「コケッ!」
(歌ってみろ。)
「おまえに会いたくて~、会いたくて~、目覚めたらすぐ。」
 葉月は歌って見せた。
「おお!? 私の火曜サスペンス劇場ボイスが治っている!?」
 歌声は綺麗な声だった。
「コケッ。」
(見たか。私の実力を。)
 堂々と二本足で立つニワトリ。
「スゴイ!? これなら私の夢が叶う!」
 葉月は干支の力に感激した。
「やります! 干支守!」
 キラーンっと決める葉月。
(交渉成立だな。)
「チキン、これからよろしくね。」
(チキン?)
「ニワトリ様はダサいから、これからはチキンって呼ぶよ。」
 ニワトリ様は、チキンと名付けられた。
「さあ、チキン。お腹が空いたので何か食べに行こう!」
「コケッ!」
 ご飯と聞いて喜ぶチキン。
「フライドチキンがいいな。」
「コケッ!?」
 ニワトリがフライドチキンを食べる共食いが始まった・・・・・・ではなく、葉月とチキンの新しい生活が始まった。
 つづく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...