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渋谷かな

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オリンピック、前夜9

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「真帆ちゃん、こんにちわ。」
「エリ子さん。」
 彼女は真帆ちゃんと仲良くなっていた。お互いの病室を行き来するくらい。
「お姉ちゃん、こんにちわ。」
「結ちゃんも、こんにちわ。」
 もちろん真帆ちゃんの妹の結ちゃんとも仲良しになった。もし結ちゃんがいなければ、彼女は自分の世界に閉じこもったまま、難病と戦うことになったかもしれない。
「結ちゃんは、いつも可愛いね。」
「おやつ、あげないからね! ベー!」
「キャハハハハ。」
 今、彼女が明るく笑っていられるのも、小さな女の子の無邪気な行動のおかげである。彼女は結ちゃんに感謝している。
「エリ子さん、もし私の病気が治ったら、泳ぎ方を教えてくださいね。私、エリ子さんみたいに早く泳ぎたいんです。」
「もしじゃないよ! 絶対に教えるよ! 私は教え方もうまいから、真帆ちゃんも高校生になったら、日本代表の選手になれるよ!」
「わ~い! 楽しみ! 私も日の丸を背を得るんだ!」
「真帆ちゃんなら、大丈夫! なれるよ! なってやろうよ!」
「はい!」
 たまたまなのか必然なのか、彼女と同じ白血病の入院病棟に、彼女のファンの中学生の水泳選手がいた。もし彼女が、ただの高校生であれば物語は生れていない。彼女が女子高生だけど、日本代表の水泳選手で、日本記録を次々と塗り替える人気有名選手だったから、真帆ちゃんも彼女のことを知っていて、同じ水泳をしている者として、真帆ちゃんにとって、彼女は憧れの存在だった。だから、彼女は真帆ちゃんに勇気や夢や希望を与えることができた。
「エリ子さん、大好き。」
「私も好きだよ。真帆ちゃん。いや~、今まで真面目に水泳をやってきて、こんなに良かったと思ったことはないよ。」
 彼女が今まで水泳にひたむきに取り組み、得られた結果が報われている。彼女は多くの人を支えていた。また彼女も真帆ちゃんや結ちゃんをはじめ、多くの人々に支えられている。
「な、なんだか・・・眠くなって・き・た。」
「真帆ちゃん!?」
「私、生きたい・・・エ・リ子さん・・・今・まで・・・ありが・・・と・う・・・。」
「真帆ちゃん!? 真帆ちゃん!?」
 真帆ちゃんは静かに眠りに着いた。力無く手もぐったりと横になって眠っている。なぜだか眠っている真帆ちゃんの表情は笑っているようだった。大好きな彼女に見守られて眠ったのだから。
「手術室に運びます。」
「先生! 真帆ちゃんを助けて下さい!」
 真帆ちゃんは骨髄の移植手術を受けることになった。彼女が病名発表の記者会見をしたことにより、骨髄バンクへの登録者が激増し、真帆ちゃんの骨髄に適合する、骨髄の提供者が奇跡的に現れたのだった。
「真帆お姉ちゃんが、これからもよろしくと言っています。」
 一礼して結ちゃんも真帆ちゃんの手術室の方へ去って行った。真帆ちゃんの病室に貼られている彼女のポスターには、彼女の直筆のサインが書かれていた。
「一緒に泳ごう! 小池エリ子。」

つづく。
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