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アップルとマーチ

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「全員、乗船を完了しました。」
「よし! ノアの箱舟! 出航!」
 アップル2こと、神の使徒ジャニュアリーの出した、ノアの箱舟にパンジャ人とアリコ人が乗り込み、第3の神の使徒クイーンの猛攻から、命かながら海上へと逃れる。
「キウイ、クリ、準備はできているな?」
「待ってました! 準備万端です!」
「アップル様、発射ボタンをどうぞ。」
 アップルは、ボタンを受け取る。
「くらえ! クイーン! 人類をなめるな!」
 アップルは、ボタンを押す。
「アトミックボム! 発射!」
「波動砲! 発射!」
 超強力な原子爆弾と超濃縮されたエネルギー破がクイーンを襲う。
「やったか!?」
「あれだけの攻撃を受けて無事でいられるはずがない!?」
「地上で考えられる最強の攻撃方法だぞ!? これで勝てなければ!?」
「我々の勝利だ! 人類は化け物に勝ったのだ!」
 敢えてかわさなかったのか、どうせ自分には効かないと油断したのか、クイーンはかわすことなく、アトミックボムと波動砲をドカーン! っと直撃を受けた。
「ああー!?」
「そんなバカな!?」
「奴は化け物か!?」
「全員! 退避! ここから逃げろ!」
 爆発の煙幕が消えてくると、クイーンの姿は健在だった。
「い、痛かったぞ。」
 クイーンから声が聞こえてくる。
「喋った!?」
「まさか!? クイーンには意志があるというのか!?」
「こいつ!? 人間を食べたんだ!? 出会ってるんだ!? 運命の人に!?」
「羨まし。」
 アップルたちは、クイーンについて、最悪の事態を考える。
「今のは痛かったぞ! 虫けらども!」
 今まで平然としていたクイーンが感情をむき出しにして激高している。
「逃げろ! アップル2! ここから、一刻も早く! もっと急ぐんだ!」
「私たちだって一生懸命こいでますよ!」
 ノアの箱舟は手ごきボート方式だった。人々が必死に多数のオールを漕いでいる。
「逃げれると思っているのか!? 絶対に逃がさんぞ! 絶対にな!」
 クイーンは、海の上を必死に逃げていこうとするノアの箱舟を見つけた。
「ムム!? あれはノアの箱舟!? ノアの箱舟は神様の持ち物のはず? どういうことだ? まあ、いい。本物の神様が地上に現れるはずがない。偽物のノアの箱舟など沈没船にしてやる!」
 神の使徒クイーンがノアの箱舟に向けて高速で移動を始める。
「くるぞ!? 奴がくるぞ!?」
 クイーンの接近を船上からアップルたちも気づいた。
「あいつは私が引き受ける! アップル2、あなたは皆をパンジャまで無事に送り届けて!」
「了解です!」
 アップル2は、クイーンを迎え撃とうとするアップルに敬礼する。
「ジュライ、いくわよ!」
「おお!」
「いでよ! 天空の鎧!」
 上空にチェスの駒のナイトの鎧が現れる。
「あれはナイトの駒!? あそこにも私と同様に神様から命を与えられた神の使徒がいるというのですか。」
 クイーンにも、空にチェスのナイトの駒が現れたのが見えた。
「いってきます!」
「アップルお姉ちゃん、がんばって!」
「生きて帰ってきてくださいね!」
「いってらっしゃい!」
 天空の鎧を身に着けたアップルは、ノアの箱舟に乗っている人々に見守られながら、クイーンに向けて飛び立っていった。

「私が相手だと知っていて逃げなかったことを褒めてあげましょう。」
「それはどうも。」
 上空でアップルと第3の神の使徒は出会った。
「私の名前は、アップル。」
「僕の名前は、ジュライ。君と同じ神の使徒だ。」
「ほほう、これは面白い。本来は神の使徒がベースで、食べた人間の顔や声を取り込むのが神の使徒のはずですが、あなたは神の使徒の意識を、逆に呑み込んだ、いや、違うな。神の使徒と人間の魂が1つの体で共存しているというべきでしょうか?」
 クイーンは、アップルとジュライの共存関係を一発で言い当てる。
「さすがクイーン。分かってるじゃない。なら、話は早いわ。戦いはやめて話合わない? 私とジュライみたいに仲良くしましょうよ。」
「そうだよ。同じ神の使徒同士、争う理由がないじゃないか。」
 アップルは、ジュライと共にクイーンの懐柔策にでた。
「私が人間と仲良く? 私とあなたが同じ神の使徒? 中々、面白いことを言いますね。」
「でしょ。面白可笑しく楽しく行きましょうよ。」
「良かった。これで戦闘は回避できそうだね。」
 戦争が回避できそうなので安堵するアップルとジュライ。
「ふざけるな!」
 クイーンの怒りの声に、一瞬時間が止まるアップルとジュライ。
「どうして!? どうして、神の使徒である、この私が。神の使徒のくせに、人間如きと共同生活を送っている、出来損ないの神の使徒と仲良くせねばならんのだ!」
 クイーンは、その強さゆえに傲慢であった。
「神様は、人間の数を減らせと仰ったのだ! 人間と仲良くしろとは、一言もいっていない!」
 さらにクイーンは、神様に忠実だった。
「で、でも、私とジュライは仲良くなれたわ!? 人間と神の使徒だけど!?」
「そうだよ!? そんなに深く考えなくていいんじゃないかな? 僕とアップルのことは神様公認だしね。」
 その言葉にクイーンは疑いの眼差しを向ける。
「神様公認?」
「そうよ。私とジュライは神様の元を訪れて、清く美しい交際のお許しをもらったんだから。」
「そうだよ。神様も、アダムとイブみたいだって、地上にエデンを作ればいいって言ってくれたんだ。」
 確かにアップルとジュライは、神様のお許しを得ている。
「嘘つき。」
「え?」
「この嘘つきどもめ! 神の名をかたり嘘をつくとは許しがたい! 今に神の天罰が下るぞ!」
 クイーンは、神様に忠誠を誓っているので、アップルとジュライの言葉などは信用しなかった。
「本当よ! 本当に神様の許可をもらったんだから!」
「そうだよ! 僕も神の使徒なんだから、信じてよ!」
 アップルとジュライは食い下がる。
「いいでしょう。」
「分かってくれるの?」
「神に変わって、このクイーンの神の使徒である、マーチ様が、おまえたちに天罰を与えてあげましょう。」
 神の使徒マーチの神の裁きが始まる。
 つづく。
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