45 / 133
6.第三界
8
しおりを挟む
高層ビル外壁は相変わらずキャラクターだらけ。
こっちのは競艇? テレビのCMしか見たことないけどこんなのの漫画もあるんだ。
あっちの排球漫画はあれだ。主人公2人のうちチビの方が矢島とときどき似てるやつ。四月一日が持ってるのを借りて読んでる。
次は野球。バッターは…ホンダ。わかるわかる。
その後はスケート? たしかこの人今ファンタンジー系バトル漫画連載中だったはず。こんなんも書いてたんだ。
ゴルフに、将棋、囲碁、カードゲーム、麻雀、もうこれスポーツ関係ねぇな。
料理漫画もある。腕に『特』って字が刺繍されたチャイナ服の少年キャラがすごい勢いで野菜を千切りしてるかと思えば、違う画面では悪役顔の男キャラがケケケと笑いながらこれまた気の強そうな女キャラと背中を向け合って鉄鍋を振るってる。
定食屋ではどう見ても中学生の男の子キャラが紋付袴で白髪のおっちゃんキャラにカツ丼を出してるけど、法律的にいいんだろうか。漫画だから気にしちゃダメか。
次のはひたすらカレー。主人公らしきキャラも他のキャラもひたすら全部ずっとカレー。もうここまで尽くされると華麗ですらある。
寿司に、和食、パン、洋食、ワイン。
ああ、なんか。
もう。
疲れる。
てか疲れた。
多すぎる。
よくよく考えれば今回、最初からぶっ通しでほぼずっと。
分析必須ってわけじゃないところでも、見えるから、映ってるからって理由で何となーく『あれなんだろう』って目線で見てしまっていた。
情報過多ってこれか。
凄い数読んでるんだな佐藤。授業中ずっとってだけのことはある。
でも授業中の片手間って完全に暇つぶしだよな。
好きだからって授業中はだめなんだけど、そもそもそんなんで本当に中身読めてんのか?
『読んだことある』。それだけなんじゃないだろうか。
内容と粗筋と一部の名場面ぽいとこ覚えてて、周りと喋る時に『あのへん良かったよね』とかって話題に出せればそれでいい。そういう感じなんじゃないだろうか。
それはそれで大事なのはわかるけど。
片手間で授業受けて片手間で漫画読んで片手間で女子とデートして片手間で先生の相手して片手間で友達付き合いして片手間で部活やって片手間で親としゃべって。
片手間だ全部。
すごいよ。確かに傍目には全部しっかりやれてんだから。
佐藤が勝ち組なのは分かってる。
どっからどう見ても、多分これからもずっとそうなんだろう。
ああ、もしかして俺の1人分と佐藤の片手間の能力が同じくらいなのか?
…そうかも。残念。俺。
なのか?
あいつ、それでいいのか?
頭ん中全部そればっかで埋まっちゃってどうにもならない。
今の自分全部で、面白れぇってなるような。
そういうのは、佐藤にはないんだろうか。
漫画ってどれも、ストーリーがある。作者やそれに関わる人たちみんなで面白く読めるように仕上げてるはず。
いつも片手間読みだけなんて、それもったいな過ぎるだろ。
ここに出てきたやつ、どれもやばいくらい面白かったし、やばいくらい面白そうなのに。
スポーツ系だろ? 料理にゲームにバトルに…あれ?
変だな、出てきてないのがあるような。
「コウダ、気のせいかもしれないんだけど、最初のボクシングの後、格闘技系のキャラって見た?
あと、ヤンキー漫画的な、ひたすらケンカばっかしてるヤツが少なくない?」
と、コウダが突然手を引いた。
「あの木のプランターの影に隠れるぞ」
もしかしてまたか?
もう右手の高架下はコンクリートから赤煉瓦に変わってきていた。
でっかい植木のプランターが並んでいるその裏、外壁との隙間に丸まってしゃがみ込むと、植木の間から佐藤が見えた。
季節外れの学ランで、小学生が無理して着たようなーーいわゆる七五三ーー状態の佐藤は、見るからに悪そうな連中に絡まれていた。
相手は3人。
1人は坊主頭で剃り込みがある。太いズボンと細い眉毛が怖い。
次は金髪パーマ。カチューシャで後ろに流しているらしい。学ランは前ボタン全開で、覗くTシャツは赤い。そこに、金と黒で2つの竜がでっかく描かれていた。
そして最後。
あ、この人の顔知ってる。確か原口って名前の、俺が入学した年の3年。
警察のご厄介常習犯って聞いた。
そういや他2人もあの当時の悪い先輩って噂の人相と一致してる。
入学前、今の3年荒れてるからってtuittorでみんなしてビビリあってたんだっけ。
でも、なんでか入学してからしばらくでその話聞かなくなったんだよな。
だとするともしかしてこの佐藤、過去の? これ、実話の再現VTRってこと?
「おい、俺らの通るトコ埋めてんじゃねぇよ」
佐藤は不良3人を見ながら、ショルダーバックの上にペラッと被さった蓋の下を必死であさっている。
「原口先輩、でしたよね。あと、藪高知先輩、越智先輩?」
スマホを取り出した。息づかいがはぁはぁと響く。
佐藤の声。そういや今回、最初からずっと普段の佐藤と声一緒だよな。
安藤さんの時は別人みたいだったのに。気になってこっそりコウダに耳打ちしたら、こっそり耳打ちで返事が返ってきた。
自撮り動画を頻繁にとったりすると、対外的な自分の声がよくわかってるから『中』の声もそれになる事がある、佐藤のキャラから推測すると不自然ではないとのこと。
そのやりとりで目を多少離した間に、3人は佐藤を囲み、さらに詰め寄っていた。
原口が正面、そりこみが左手、後ろに金髪。右手は高層ビルの壁。逃げ場なし。
「あ? だったらなんだよったくよ」
「だからぁ!? 俺らの名前当てクイズやってんじゃねぇし」
それでも隙間から逃げようとする佐藤の手を剃り込みがつかんだ。
佐藤は外したが、持っていたスマホは取られた。
うわぁ。はじまった。
「こんないいもん持ってんじゃねえって」
剃り込みはそのスマホを投げ捨てる。
バシッと音がした。こりゃ割れたな。
なのに佐藤は明後日の方向に飛ばされたスマホに全く注意を向けない。
原口と剃り込みを見据えている。
その原口はちっと舌打ちすると、佐藤の腹の真ん中に蹴りを入れた。
佐藤は1m程斜め後ろに吹っ飛ばされた。後ろの金髪を巻き添えにして。
当たっ…た?
こっちのは競艇? テレビのCMしか見たことないけどこんなのの漫画もあるんだ。
あっちの排球漫画はあれだ。主人公2人のうちチビの方が矢島とときどき似てるやつ。四月一日が持ってるのを借りて読んでる。
次は野球。バッターは…ホンダ。わかるわかる。
その後はスケート? たしかこの人今ファンタンジー系バトル漫画連載中だったはず。こんなんも書いてたんだ。
ゴルフに、将棋、囲碁、カードゲーム、麻雀、もうこれスポーツ関係ねぇな。
料理漫画もある。腕に『特』って字が刺繍されたチャイナ服の少年キャラがすごい勢いで野菜を千切りしてるかと思えば、違う画面では悪役顔の男キャラがケケケと笑いながらこれまた気の強そうな女キャラと背中を向け合って鉄鍋を振るってる。
定食屋ではどう見ても中学生の男の子キャラが紋付袴で白髪のおっちゃんキャラにカツ丼を出してるけど、法律的にいいんだろうか。漫画だから気にしちゃダメか。
次のはひたすらカレー。主人公らしきキャラも他のキャラもひたすら全部ずっとカレー。もうここまで尽くされると華麗ですらある。
寿司に、和食、パン、洋食、ワイン。
ああ、なんか。
もう。
疲れる。
てか疲れた。
多すぎる。
よくよく考えれば今回、最初からぶっ通しでほぼずっと。
分析必須ってわけじゃないところでも、見えるから、映ってるからって理由で何となーく『あれなんだろう』って目線で見てしまっていた。
情報過多ってこれか。
凄い数読んでるんだな佐藤。授業中ずっとってだけのことはある。
でも授業中の片手間って完全に暇つぶしだよな。
好きだからって授業中はだめなんだけど、そもそもそんなんで本当に中身読めてんのか?
『読んだことある』。それだけなんじゃないだろうか。
内容と粗筋と一部の名場面ぽいとこ覚えてて、周りと喋る時に『あのへん良かったよね』とかって話題に出せればそれでいい。そういう感じなんじゃないだろうか。
それはそれで大事なのはわかるけど。
片手間で授業受けて片手間で漫画読んで片手間で女子とデートして片手間で先生の相手して片手間で友達付き合いして片手間で部活やって片手間で親としゃべって。
片手間だ全部。
すごいよ。確かに傍目には全部しっかりやれてんだから。
佐藤が勝ち組なのは分かってる。
どっからどう見ても、多分これからもずっとそうなんだろう。
ああ、もしかして俺の1人分と佐藤の片手間の能力が同じくらいなのか?
…そうかも。残念。俺。
なのか?
あいつ、それでいいのか?
頭ん中全部そればっかで埋まっちゃってどうにもならない。
今の自分全部で、面白れぇってなるような。
そういうのは、佐藤にはないんだろうか。
漫画ってどれも、ストーリーがある。作者やそれに関わる人たちみんなで面白く読めるように仕上げてるはず。
いつも片手間読みだけなんて、それもったいな過ぎるだろ。
ここに出てきたやつ、どれもやばいくらい面白かったし、やばいくらい面白そうなのに。
スポーツ系だろ? 料理にゲームにバトルに…あれ?
変だな、出てきてないのがあるような。
「コウダ、気のせいかもしれないんだけど、最初のボクシングの後、格闘技系のキャラって見た?
あと、ヤンキー漫画的な、ひたすらケンカばっかしてるヤツが少なくない?」
と、コウダが突然手を引いた。
「あの木のプランターの影に隠れるぞ」
もしかしてまたか?
もう右手の高架下はコンクリートから赤煉瓦に変わってきていた。
でっかい植木のプランターが並んでいるその裏、外壁との隙間に丸まってしゃがみ込むと、植木の間から佐藤が見えた。
季節外れの学ランで、小学生が無理して着たようなーーいわゆる七五三ーー状態の佐藤は、見るからに悪そうな連中に絡まれていた。
相手は3人。
1人は坊主頭で剃り込みがある。太いズボンと細い眉毛が怖い。
次は金髪パーマ。カチューシャで後ろに流しているらしい。学ランは前ボタン全開で、覗くTシャツは赤い。そこに、金と黒で2つの竜がでっかく描かれていた。
そして最後。
あ、この人の顔知ってる。確か原口って名前の、俺が入学した年の3年。
警察のご厄介常習犯って聞いた。
そういや他2人もあの当時の悪い先輩って噂の人相と一致してる。
入学前、今の3年荒れてるからってtuittorでみんなしてビビリあってたんだっけ。
でも、なんでか入学してからしばらくでその話聞かなくなったんだよな。
だとするともしかしてこの佐藤、過去の? これ、実話の再現VTRってこと?
「おい、俺らの通るトコ埋めてんじゃねぇよ」
佐藤は不良3人を見ながら、ショルダーバックの上にペラッと被さった蓋の下を必死であさっている。
「原口先輩、でしたよね。あと、藪高知先輩、越智先輩?」
スマホを取り出した。息づかいがはぁはぁと響く。
佐藤の声。そういや今回、最初からずっと普段の佐藤と声一緒だよな。
安藤さんの時は別人みたいだったのに。気になってこっそりコウダに耳打ちしたら、こっそり耳打ちで返事が返ってきた。
自撮り動画を頻繁にとったりすると、対外的な自分の声がよくわかってるから『中』の声もそれになる事がある、佐藤のキャラから推測すると不自然ではないとのこと。
そのやりとりで目を多少離した間に、3人は佐藤を囲み、さらに詰め寄っていた。
原口が正面、そりこみが左手、後ろに金髪。右手は高層ビルの壁。逃げ場なし。
「あ? だったらなんだよったくよ」
「だからぁ!? 俺らの名前当てクイズやってんじゃねぇし」
それでも隙間から逃げようとする佐藤の手を剃り込みがつかんだ。
佐藤は外したが、持っていたスマホは取られた。
うわぁ。はじまった。
「こんないいもん持ってんじゃねえって」
剃り込みはそのスマホを投げ捨てる。
バシッと音がした。こりゃ割れたな。
なのに佐藤は明後日の方向に飛ばされたスマホに全く注意を向けない。
原口と剃り込みを見据えている。
その原口はちっと舌打ちすると、佐藤の腹の真ん中に蹴りを入れた。
佐藤は1m程斜め後ろに吹っ飛ばされた。後ろの金髪を巻き添えにして。
当たっ…た?
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
『【朗報】ボッチの僕、実は世界一の財閥の御曹司だった。〜18年の庶民修行を終えた瞬間、美少女11人が「専属秘書」として溺愛してくる件〜』
まさき
青春
「あんたみたいなボッチ、一生底辺のまま卒業ね」
学園の女王、高飛車な生徒会長、そして冷徹な美少女たち……。
天涯孤独でボッチな僕、佐藤(※苗字のみ使用)は、彼女たちからゴミを見るような目で見られ、虐げられる日々を送っていた。
だが、彼らには決して言えない秘密があった。
それは、僕が世界一の資産を誇る**『世界最強財閥』の唯一の跡継ぎであること。
そして、18歳になるまで一切の援助を受けずに生き抜く【庶民修行】**の最中であること。
そして運命の誕生日、午前0時。
修行終了を告げる通知がスマホに届いた瞬間、僕の世界は一変する。
「おめでとうございます、お坊ちゃま。これより『11人の専属秘書候補』による、真の主従関係を開始いたします」
昨日まで僕を蔑んでいた学園の美少女たちが、手のひらを返して膝をつく。
彼女たちの正体は、財閥が僕のために選りすぐった、愛が重すぎるエリート秘書たちだった――。
「ずっとおそばでお仕えしたかったんです……」
「昨日までの暴言は、修行を完遂させるための演技。今日からは全身全霊で甘やかさせていただきますね?」
24時間体制の過保護な奉仕、競い合うような求愛、そして財力による圧倒的なざまぁ。
ボッチだった僕の日常は、11人の美女たちに全肯定され、溺愛し尽くされる甘すぎる生活へと塗り替えられていく。
廃城の泣き虫アデリー
今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって…
表紙はフリー素材です
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
真実の愛には敵いませんもの
あんど もあ
ファンタジー
縁談の相手に「自分には真実の愛の相手がいる」と言われて破談になってしまった私。友人達に聞いてもらって笑い飛ばしてもらいましょう!、と思ったのですが、話は予想外に広まってしまい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる