楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合

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第五十一話

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「それを除けば今日は楽しかったね」
「はい。先輩との遊園地、とても楽しかったです」
「私も後輩との遊園地、とても楽しかったわ。いつもは同級生とばかり行ってたけど後輩と行く遊園地もとても楽しかったわ」
「私も同級生とは行きますが、異性の先輩と遊園地に行くのは初めてで緊張しましたが楽しかったです」
「それを言うなら私も異性の後輩と遊園地に行くなんて初めてよ。でも楽しめていたなら良かったわ」

 今さら気づいたが優の人生の中で先輩の、しかも異性の先輩と遊園地に行ったのはこれが初めてである。
 最初は異性の先輩ということもあり緊張していた優だが、最後の方は緊張は全くなく、まるで同級生と遊んでいるかのように気兼ねなく遊んでいた。

「あっ、あそこに倉木さんと西条先輩がいます」
「えっ、どこどこ……あっ、ホントだわ。二人ともラブラブね」

 観覧車に乗りながらふと下を見ると瞳と実乃里を見つける。
 二人ともラブラブカップルで、実乃里が瞳の腕に抱き着いて笑っており、その実乃里の頭を瞳が優しい表情で撫でていた。
 葵もラブラブな瞳たちを見たいのか、優の方に移動し優の顔に顔を近づけて下を覗き込み葵も瞳たちを見つめる。
 葵のきめ細かい肌に、長いまつげ。
 葵の髪から漂ってくるローズの香りが優の鼻腔をくすぐる。
 本当に良い香りである。
 こんなに可愛い女の子の顔が近くにあったら、男の娘なら全員意識して脈拍が上がる。

「あの~楠先輩」
「どうしたの中村さん」
「ちょっと顔が近いです」
「あっ……ごめんね」

 これ以上、葵の顔が近くにあるのは精神衛生上良くないと判断した優はそれを指摘しようと葵に話しかけると、葵が優の方に振り向く。
 振り向いたせいでさらに葵の顔がドアップになる。
 優の顔に葵の吐息がかかる。
 夕日が観覧車の中に差し込み、幻想的な雰囲気を作り出している。
 一瞬、二人は見つめ合う。
 その距離の近さに気づいた葵は気まずそうに離れる。

「いえ、別に嫌ではないです」

 これは優の本心である。
 ただドキドキして優の精神衛生上良くないだけである。

「高校最後のゴールデンウィークも終わっちゃうわね」

 再び優の向かいに座った葵が名残惜しそうに呟く。

「楠先輩は高校三年生ですもんね。今年で高校生最後ですもんね」
「そうなのよ~。中村さんは高校一年生だから高校最初のゴールデンウィークだけど三年生の私にとってはこれが最後のゴールデンウィーク。早かったわ、高校三年間」
「ってまだ五月じゃないですか。まだ高校生活は終わってませんよ」
「中村さん、よく聞いて。高校三年生はあっという間よ。だってもう四月が終わって五月なのよ。体感的に一瞬で終わったのよ。高校三年生は本当に早いわよ」

 高校一年生の優と高校三年生の葵では、今年のゴールデンウィークの重さが全然違う。
 優はまだ二回残っているが葵は今年が高校最後のゴールデンウィークだったのだ。
 名残惜しむ気持ちも分かる。
 優も去年、中学最後のゴールデンウィークは名残惜しかった。
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