楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合

文字の大きさ
57 / 78

第五十七話

しおりを挟む
 楽しかったゴールデンウィークが終わり、月日は六月に移る。
 六月になると教室の雰囲気も変わる。

「今日から夏服だね中村さん」
「そうだね。最近暑くなってきたからね」

 今日から六月。
 つまり今日から衣替えが始まる。
 藤ヶ崎高校の衣替えは男女ともブレザーを羽織らなくなりワイシャツ、ブラウス姿になる。
 夏服になったことにより、全体的に爽やかな感じになる。

「みんなが昨日と違う服装を来て教室にいるとなんだか変な感じがするよね」
「分かる。昨日まではみんなブレザー羽織ってたのに今日からワイシャツ姿だもんね」

 実乃里と優は衣替え初日ということもあり、衣替えの話で盛り上がる。

「おっは~中村、実乃里。今日から夏服だね~。最近暑かったから超良いわ~」

 軽いあいさつをしながら愛音が優たちの元へとやってくる。
 ブラウスの第二ボタンまで開けているせいで、かなり色っぽい。
 ちなみに優と実乃里は第一ボタンまで開けている。

「梅雨が終わると夏だもんね」
「高校生初めての夏休みだから満喫したいよね~」
「それな~。実乃里は彼女いるから夏休みは一緒に泊まりで旅行とか行く感じ?」
「まぁ……泊まりで旅行に行きたいとは考えてるかな」
「きゃ~マジ可愛いんだけど~」

 彼女がいる実乃里は夏休み、二人で泊りがけの旅行に行く予定らしい。
 まさにリア充である。
 泊まりということは実乃里もそういうことを意識しているらしい。
 頬が赤くなっている。
 そんな実乃里が可愛いのか愛音がニヤニヤしながらからかっている。

「木村さんは彼氏とかいないの?」
「あ、あたし? 残念ながらいないよ」

 偏見かもしれないが、ギャルの愛音だから彼氏ぐらいもういると思ったがいないらしい。
 優にとって予想外だった。
 彼氏の有無を聞かれた愛音は物凄く動揺し、歯切れが悪かった。

「中村さんも愛音ちゃんはどう? 中間テストの状況は」
「私はボチボチかな。でも文系の教科は少しヤバいかも」
「げっ……あははは……全然ダメです。全教科ダメです」
「私も初めての高校のテストで不安だからみんなで勉強会しない」
「それ良いねっ、やろうみんなで勉強会」
「私も良いと思うよ。私もテスト不安だったし」

 二学期制の高校だと六月に中間テストが行われる。
 その現実を知った愛音は絶望に打ちひしがれる。
 見た目通りと言えば見た目通りだが、愛音は勉強が苦手らしい。
 そんな愛音に実乃里は救いの手を差し伸べる。
 勉強会。
 優自身もあまり勉強は好きではないが、みんなで集まってする勉強会は好きである。

「決まりね~。勉強は嫌いだけど勉強会は好き」
「愛音ちゃん。勉強会なんだからちゃんと勉強するんだよ」
「モチのロン。赤点取らないように頑張ります」

 勉強は嫌いだが勉強会は好きな愛音はかなり盛り上がり、浮かれている愛音に実乃里は釘を刺す。

「勉強会楽しみだな~」

 優も顔をほころばせる。
 一人で勉強するよりもみんなで勉強する方が楽しいのはなんでだろう。
 不思議である。
 梅雨や中間テストはあるのに祝日がない六月。
 そんな憂鬱な六月にも楽しみができた優だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...