楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合

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第五十九話

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『楠先輩と西条先輩も参加してくれるのっ。サイコーじゃん。もちろんオッケーに決まってるじゃん』
『ありがとう。そう伝えておくね』

 社交的な愛音のことだから大丈夫だと思ったが、まさかこんなにノリノリだとは思わなかった。
 優はソッとスマホの電源を切る。

「もう一人のクラスメイトも大丈夫だと言ってました。むしろ、二人が勉強会に参加することを知ってテンション上がってましたよ」

 優は愛音とのやり取りの結果を三人に伝える。

「もうお昼休みも終わりなのね。勉強会の日程や場所は、五人で話し合って決めましょう」

 予鈴が鳴り、優たちは自分たちの教室へと戻る準備をする。
 葵の言うとおり、それぞれの予定もあるので五人で話し合ってから決める方が良いだろう。
 三人から五人に増えた勉強会。

「勉強会で分からないことがあったらなんでも聞いてね。私、先輩だから」

 優に近づき、葵は耳元で優しく囁く。
 葵の息が耳に当たる。

「あっ……はい、ありがとうございます」

 優しくも甘美な葵の声に優は心拍数を上げる。
 こんなに綺麗な先輩の顔が近くにあったら誰でもドキッとしてしまうだろう。
 そんな優の気持ちも知らずに葵はニコニコ笑っていた。



 勉強会当日。
 五人で話し合った結果、日付はテスト前の最後の土曜日、場所は優の部屋に決まった。
 理由は優の部屋が学生寮で一番集まりやすい距離だったからだ。
 学生寮は学校に近い。
 つまり、学校に通学する感覚で行けるということだ。
 ちなみに、実乃里の部屋ではなく優の部屋になった理由は瞳が反対したからだ。

「別に私の部屋でも良かったんだけど」
「ダメだ。実乃里の部屋に他の女が入るのは抵抗がある」

 実乃里自身、なにも気にしていなかったのだが、彼女の瞳が他の女を彼氏の家に入れるのを強く拒んだのだ。
 いくら友達でも彼氏の部屋に他の女を入れるのは抵抗があるらしい。
 さすがにそれは束縛が激しいのではないかと優は思った。

「それじゃー午後二時に瞳と木村さんを乗せて向かうわね」

 ということで葵が他の二人を乗せて学生寮まで来るらしい。

「もう~瞳ちゃんったら~。ごめんね中村さん」
「別に私の部屋で勉強会するのは大丈夫だけど、五人も入れるかな~。それにテーブルとか間に合うかな~」
「多分、大丈夫じゃない。二人でいても窮屈に感じないし、私の部屋からテーブルも持って来たし」

 先に優の部屋に集まっていた優と実乃里は他愛もない雑談をする。
 瞳が実乃里の部屋で勉強会することを反対したことを実乃里が謝るが別に実乃里が悪いわけではない。
 それよりも優は一人暮らしを想定して作られている学生寮で五人で勉強会ができるかどうかの方が不安である。
 スペース的に。
 そんな時、玄関のチャイムが鳴る。
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