39 / 89
第三章
閑話 とある新米幹部候補生の追従
しおりを挟む注意! ピーター視点です。
今回は少し短めです。
◇◆◇◆◇◆
「ぜぇ……ぜぇ……」
やあ皆様。疲労困憊のボクピーターです。
いやあ体力テスト(怪人化有り)を正直甘く見てた。怪人化有りとはいえ大半は普通の体力テストと同じだし、部分変身で邪因子を温存しながらだから余裕だろうと思っていたけど冗談じゃない。
記録を出すには邪因子を如何に活性化させるかが重要だけど、種目が幾つもある訳でその度に活性化させていたらどんどん疲労もたまる。
実際テストの前に景気づけに怪人化していた面々は、前半で飛ばし過ぎて大半が途中で怪人化が解けたり、或いは怪人化を保つのが精いっぱいで記録が中々伸びなかったり。
そんな中、
「はぁ……はぁ……やりますわね。流石は我がライバルネル・プロティ。この私が一度しか勝てないとは」
「ふん。まあまあ歯ごたえがあって楽しかったよガーベラ。……あとさっきのアレはノーカンだからっ!? たまたまそこだけ勝ったからって良い気にならないでよねっ!」
疲れはあるけどまだ余力を残しているガーベラさんと、ガーベラさんに負けた分以外全部の種目で1位をもぎ取りながらもどこか悔しそうなネルさん。
互いにラスト一種目を残した状態でもそんな事を言い合える二人に対し、凡人のボクから言える言葉は一つ。
「お二人共張り合い過ぎでしょうっ!? 何で全種目一緒に受けてんですかっ!? 仲良しですかこの野郎っ!」
「それを言ったらピーターだってそうじゃん!」
「そうですわよ!」
「アンタらに付き合わされてんでしょうがっ!?」
ちなみにそれぞれの種目でのぶつかり合いをざっくり説明するとこんな感じだ。
反復横跳び。
「ハッハァっ! このガゼル怪人と化した俺様に勝てる奴なんて……ナニィッ!?」
「うららららぁっ!」
「凄いっ! 残像が見えるレベルだっ!?」
「ちぃっ!? こういうシンプルに敏捷力を測る試験は苦手ですわっ!?」
「足に邪因子を集中して……何とかいけるっ!」
全体順位(体力テスト参加者237名中)
ネル 1位
ガーベラ 20位
ピーター 98位
反射神経テスト。
「制限時間内に飛び出てくるモグラを叩いてください。道具はこちらをお使いください」
「……これマンガで見たっ!? モグラ叩きって奴ね。うりゃりゃりゃっ!」
「オ~ッホッホッホ! こういう分野でしたら私の得意分野ですわ!」
「ああっ!? 髪でいくつもハンマーを持つなんてそんなのアリ!? ならあたしだってぇっ!」
「なっ!? 目で追えない程のハンマーの動きですって!? ……負けませんわよっ!」
「二人共っ!? 台が壊れるっ!? 壊れますって!?」
ネル 1位(終わった後で台の修理が必要に)
ガーベラ 2位
ピーター 105位
握力測定。
「ドッセ~イですわっ!」
「なっ!? 俺はゴリラ怪人だぞ!? だってのにこんなお嬢様っぽい奴に抜かれるなんて!?」
「オ~ッホッホッホ! 貴族たるものそれなりに身体を鍛えておりませんとね!」
「……あのぉ。測定機に髪の毛が絡みついているんですけど」
「髪の毛で握っただけですので何の問題もありませんわ従僕さん。……それに」
メキョッ!
「……旧式とは言え、あっちで測定器を握り潰した我がライバルに比べれば可愛らしい物ではなくて?」
「……そうですね」
ネル 1位(測定器破壊。ただし上限を超えての破壊の為暫定1位)
ガーベラ 9位
ピーター 110位
立ち幅跳び。
「ヒュ~! ワシ型怪人の俺。飛ぶのはルールで規制されてるが、翼を広げて滑空するのはセーフ。このまま風に乗ってなるべく遠くへ」
「少々横を失礼しますわっ!」
「髪のロールをバネの様に使って大ジャンプだとぉっ!?」
「邪魔。退いて」
「なっ!? 反対側からもっ!?」
「くっ!? 流石ですわね。足に邪因子を溜めて跳んだだけで追い抜かれましたか」
ネル 1位
ガーベラ 6位
ピーター 81位
邪因子制御力テスト(疑似爆弾解体形式)
「ムキ~っ!?」
「あ~ららみっともない。それでも我がライバルですの? ……仕方ありませんわね。ではこの私が多少教授致しましょう。ほらっ! まずそちらの赤い線を邪因子を流したまま引っ張って、それとまったく均一になるよう邪因子を調整しながら隣の青い線を切断。その左隣の黄色い線は罠ですから少しでも邪因子を流すと失敗になりますのでお気をつけて。それから」
「ああもうっ! めんどくさいっ! こんなの全部まとめて邪因子を流し込んでぶっ壊せば良いのよっ! ……わぷっ!?」
「ああまた失敗ですの? こんなに煤塗れになって……仕方ない。ハンカチを貸してあげますわ。使い終わったらきちんと洗って返してくださいまし」
「……やった! 出来たよガーベラさん! あれぇ? ネルさんまだ出来てないの? ボクだって出来たのに? へへ~ん! ……ふぎゃ!?」
「ピーターの癖にそんな簡単にできるなんて生意気よっ!」
「ヒドイ!?」
ネル タイムアップ及び機材粉砕の為測定不能(ただし制御力が無いというより性格面での問題)
ガーベラ 1位(歴代参加者記録中10位)
ピーター 15位
その他幾つか種目はあったけど、まあこんな感じで結局最後まで張り合う二人に付き合ったボクは凄いと思う。……そう思わなきゃやってらんない。
しかしネルさんが有り余る邪因子を常に活性化させて力技で記録を叩き出しているのに対し、ガーベラさんは非常に細かな邪因子コントロールと自身の髪を創意工夫して使って負けじと食い下がる。
そういうまったくタイプの違う二人だけど、
「次がいよいよ最後の種目ですわ」
「最後は妙な小細工無しの真っ向勝負。邪因子量測定テスト。そんな疲れ切った身体でちゃんと測定できんのガーベラ? ……あっ!? 疲れてたから負けたって言い訳にでもするなら止めはしないよ?」
「はっ! 御冗談を。少々疲れている程度を言い訳にするようでは貴族の名折れ。そちらこそ邪因子を伸ばす事だけ考えてまた機械を壊すんじゃなくて? ネルさん」
「さっき見たけど今度の測定器は最新型だから平気だも~ん! ……そんじゃ行こうか! 最後に圧倒的な邪因子を見せてあたしの格を分からせてあげるっ!」
「望む所ですわっ! 行きますわよっ!」
そうやってどこか楽しそうに張り合う二人の姿は、ボクにはどこか輝いて見えたんだ。
最後の邪因子量測定テストは特に大番狂わせもなかったので結果だけ。
ネル 1位(今テストの2位に対してダブルスコア。歴代参加者記録中第2位)
ガーベラ 5位
ピーター 66位
二人につられてボクも自己新記録を叩き出したのは地味に嬉しい。
こうして、初日の体力テストは終わりを迎えた。
◇◆◇◆◇◆
この件でネルのガーベラの印象が、よく分かんないけど花の名前の人→なんか突っかかってくる花の名前の人→ライバルじゃないけど少しは歯ごたえのあるガーベラとかいう人に変化しました。
あとピーターも二人に付き合わされて地味に全体的に記録が伸びています。やったねピーター。次回のハードルが上がったよ!
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる