上 下
5 / 19

5話 穏やかじゃないお昼休み

しおりを挟む
◇◆

そして、何はともあれ穏やかなお昼休みなりました。

もう朝からいろんな事あって疲労が溜まりに溜まって気がする。あの後は学校の人にバレないようにと車を降りるのが大変だった。
会長‥いや響さんと登校して来たなんてバレたら嫉妬と反感に遭うのは目に見えてる
そんなこと考えながら、苺牛乳を飲んでいると

「そういえばさ、深雪ちゃん」

「ん?どうしたの桃乃」

「今朝、秋月会長と登校して来たって本当?」

ぶほっ!!!
私は飲んでいた苺牛乳を噴き出した。

「ちょっと、深雪汚いわよ」 
 
「ご、ごめんなさい」

あずにゃんがそう言って私の噴き出した牛乳を
ハンカチで拭いていく。本当にすいません!

「ゴホゴホ、なんでそれ知ってるわけ!?」

そうなんで桃乃がそのこと知ってるわけ
私、バレないようにこっそりと逃げ出してきたのに

「もう学校中の噂になってるんだけど」

「は、はいぃぃぃ!?」

シレッと言う桃乃に私は声を上げた。
余計に頭を抱えたくなる。そういや降ろしてもらった場所が学園前だったし、誰かに見られてる可能性もあったんだ。まさか、噂になってるとは思いもしなかった。

「あー、その噂私も聞いたわ。朝練の時女の子達がその噂してた。てか、今じゃその噂で持ちきりよ」


その言葉で頭が痛くなる。


「嘘でしょ‥私だってねしたくてしたわけじゃない、アレは半ば強制だったし」


「つまり、今朝の事には事情があったと言いたいのね」

「それで、その事情ってのは何なの?深雪ちゃん」

ここまで言ってしまったらその内2人にもバレるので、全てを包み隠さず話すことにした。
もちろん、今朝の事もね

「そうなんだ、確かに停学はキツイよね‥」

「だから、あの噂が持ち上がったのね
アンタも大変ね」

桃乃もあずにゃんも分かってくれたようだ。
それに、私がミーハーじゃないって事も知ってるし、いい友達を持っててよかった。
少しホッとしていると、何やら廊下で騒いでるような声が耳に届いた。
何か、あったのかなと思っていると

「「キャ~~~~~!!!」」

突然、聞き覚えのあるような女子の黄色い叫び声。

「噂をすればってところね」

「じゃあ、行ってみますか」



あずにゃんが廊下に目線をやると席を立ち上がった。そして桃乃よ何故私まで立たせるのだ。


無理やり引っ張られ強制的に廊下へと向かわされた。廊下へ出ると、女子特有の甘い香りに包まれていた。

「秋月会長ですわ、本日も相変わらず美しい」

「ですが、何故会長が1年の階に?」

「それに副会長の優斗様もご一緒だわ」

「キャ~!会長~副会長~!!!」

そんな女子の叫び声が聞こえてくる。
待って今、会長、副会長とかいってたよね

まさかと思い、女子の叫び声がする声の方に視線を向けると、響さんと副会長の樫野さんがいた。にしても何ですかこの状況
まるで芸能人かアイドルの出待ちをしてるみたいな気分だ。芸能人も驚くくらいの人気っぷりだよね。確かに芸能人並みに顔も整っていますけど。特に樫野さんなんて本当に高校生なのとツッコミたくなるくらい色気ただ漏れだ。

そんな風に見ていると、響さんと目が合ってしまったような気がする。
何だろう動けないまさか、メデューサか彼奴はと思ったら何やらブレザーのポケットからある物を取り出して見せびらかすかのように軽くそれを振っていた。
それは‥

「私のヘアピン!?」

髪に手をやると、今朝付けていたはずのヘアピンがない。まさかあの時ですか響さんワザととりましたね。

そのヘアピンを見て、女子たちは騒ぎ出す。

「あら、何かしら会長が手に持ってるの」

「ヘアピンみたいだわ」

そうですよ、ヘアピンです。私のお気に入りの
桜をモチーフにしたヘアピン。桃乃からBDP
(バースデープレゼント)に貰ったやつ

思考を巡らせていると、こちらへ近づいてきた。キャーキャーと騒ぎながらも道を開ける女子の皆さん、あなた達は出待ちのファンですか?彼らをアイドルと勘違いしていない

そうして、何故か私の目の前で立ち止まる。
やめろ、これは公開処刑か何かだろ

「よぉ‥メイド」

「昨日ぶりやな、深雪ちゃん」

密かに私だけに聞こえる声でそう言う響さんと
色気のある声で私の名前を呼ぶ樫野さん

「あの‥一体何のご用でしょうか?」

そう聞くと、何も言わずに私にそばに寄ってきた。隣では女子の黄色い叫び声が響き渡ってる。距離が近いので目を瞑ると 

スッ
髪に何かを付ける音、髪に手をやるとヘアピンが元どおりの位置についていた。


「別に俺様はお前に会いに来たわけじゃねぇ
ただ、忘れ物を届けに来てやっただけだ感謝しろよ」

それだけを早口に言って踵を返してサッサと帰ってしまった。

「何がしたかったんだろう」

首を少し傾げる。

「すまんなぁ、深雪ちゃん。響がそれ返しに行くって言っとったから」

「いや、樫野さんが謝ることもないかと」

「でもなぁ、響そのヘアピン朝から大事そうに持ってたんやで」

そうコソッと私のヘアピンを指して言った樫野さんは響さんを追いかけるように帰ってしまった。私のヘアピンを大事そうに持ってたとか
ちょっと可愛いかも‥と思ってしまった。

だけど、止まっていた時間の針は動き出した。

「だ、誰なのよ!あの子は」

「会長と副会長が直々にお会いになられた上に
あんなに距離が近いなんて!!!」

「それにあの子よね今朝会長と登校してきたってのは」

イキナリ口々に話し出す女子の皆さん
突然話し出すと舌を噛みますよ、気をつけてもらいたい。今の数分間で私は嫉妬と反感を
買ってしまったようだ。私は目立ちたくなんてないんだよ

「ねぇ、アナタ」

後ろから私を呼ぶような声がして振り返る。

「はい、何でしょうか」

その先にいた人物とは、3年生にしてファンクラブ会長の花屋敷ヒバリさん今時、金髪縦ロールでいかにも悪役令嬢の鉄板プレートみたいな容姿。それにしても化粧濃!スカート短い逆に私が照れる。

「先ほどの一部始終見させてもらいましたわ
貴方は優斗様と響様とはどういったご関係ですの?」

「どうっていわれてましても」

キーンコーンカーンコーン
タイミングよくお昼休み終了のチャイムがなった。確か次の授業は移動教室だ。これを言い訳にこの場から逃げようそうしよう

「すいません、次は移動教室なもので‥‥」

「ま、待ちなさい!」

待てと言われて待つ人間なんてこの世にはいないんですよと心の中で舌を出しながら私はなんとか誤魔化して教室に逃げ込んだ。

「お疲れ様、深雪ちゃん」

「ファンクラブ会長に目をつけられるなんて
深雪も災難ね」

私は、笑うとこじゃないとあずにゃんに抱きついた。
おかげにクラスの子からは質問攻めにあうし
あずにゃんの言う通り災難でしかない!!!

しおりを挟む

処理中です...