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18話 とにかく語弊を招くことは言わないでほしい
しおりを挟むポスンと音がしたと思うと、誰かに抱きとめられたらしい。私はそっと目を開けると
「あっ、わわわわ蓮さん!?」
「真白、急ぐのも良いことだが階段を飛ばし降りするのはあまり良くない」
「す、すみませんでした!!急いでいたので」
「もしかしてだが階段を顔面から降りる練習でもしてたのか?」
待て、それは一体どんな練習だ。
つか、蓮さんは私を一体何だと思ってるのだろう。
「もちろん、可愛い後輩だと思ってるが
問題でもあるか?」
首を傾げながらそう言う蓮さん。
てか、良くもそんな恥ずかしい科白をスラスラと言えるもんだ。おかげで頬が熱い。てか、今心読んだよね?ね?読みましたよね絶対に
そうこう言い合いをしている間、私は蓮さんに抱きかかえられている事に気づく。
「あの‥蓮さん。そろそろ離してもらえないでしょうか?」
「何故だ?」
首を傾げながらそう尋ねてきた。
「どうしてと言われましても‥」
何故ってこの体勢が恥ずかしいから、だってこれ姫抱きだからですよ。それしか理由はないでしょう。
「駄目だ、階段を三段飛ばしに降りて転げ落ちられても困るのでな。このまま生徒会室に向かう」
「え、ちょっと蓮さん!」
私の言うことに聞く耳を持たず、私を抱きかかえたまま生徒会室へと向かうのである。
「それにしても真白。なんだかいい匂いがするな」
「香りですか‥?」
もしかしてだけど、少女漫画に出てくるような
″シャンプーとか石鹸の香り‥″みたいな感じだろうか。少し胸を弾ませていると
「なんだか‥甘い香りが」
「それ多分、バニラエッセンスですから!
さっきまで調理実習で作ったカップケーキの匂いですよ!」
「なるほど、この香りがバニラエッセンスか」
そう言って、私に纏わり付いてる甘ったるいバニラエッセンスの香りを嗅ぎながら確認している。はたから見たら変な行動ですよ。探求熱心なのは認めますけど。
そんな時コツコツと誰かの足音が微かに聞こえる。ヤバい‥この光景を見られたら変な誤解が生まれそうだ。いや生まれるに違いない
「ひひひ人が来ますよ怪しまれます
というか、蓮さんのファンの子だったらどうするんですか!?」
慌ててそう聞き返すと、何も慌てる様子がない
蓮さん。え、なんでこんな自然な顔してるの。
余計に私が焦りまくる。
「別に問題はないだろう」
‥‥‥‥
「いやいや、問題大有りですから!!!」
問題はあるよ、だってあの生徒会の参謀の
蓮さんに姫抱きされてるんだよ。
嫉妬を絶対に買う、批判の嵐になる
それをわかって言ってるのだろうか、それさえもわからない。
段々と靴音は近づいてきた。
これはもう*\(^o^)/*オワタ
「その声はメイドか?」
廊下の突き当たりから歩いてきたのは響さんでした。そしてこの光景を目に捉えた瞬間こちらを睨んできた。
「おい、蓮。一体何をしてるんだ」
「ああ、真白を抱きかかえてる」
淡々とそう言い返す蓮さん。
確かに抱きかかえてますが、何故そうなったか説明しないと誤解が生じます。いや、もう誤解がされてるかもしれないけど。私の額に冷や汗がつたる。
「あの‥‥響さん!私を助けてくれたんです」
「は?助けただと」
「つまりそういう事だ。誤解はするな」
そう言って私を降ろす蓮さん。
「じゃあ俺は先に行ってるぞ、あっ真白」
スタスタと歩いて行く蓮さんが後ろを振り返る
「真白、今度食べさせて欲しい」
それだけを言ってスタスタと歩いて行ってしまった。私は首を傾げる。
「食べさせて欲しい」もしかしてカップケーキのことだろうか。あんなややこしい言い方しなくても人数分作ってあるよ。鞄に入ってるよ
そう思っていると突然、肩に手を置かれた。
振り返ると不機嫌そうな響さんがいた。
えっ、私また何かしでかした?(←何かをしたこと前提)
「あの‥‥響さん‥」
恐る恐る後方に視線を向ける。
「さっきの科白はどういう意味だ?」
「はい?」
「″今度は″ってことは俺様がここを通らなかったら喰わせていたのかよ」
「え?(カップケーキを)いやいや無理ですよ
そりゃ出来るかもしれませんけど、しませんよ
普通に!」
そりゃ鞄に入ってるけど流石に廊下で食べないでしょう。マナー的にも校則的にも。飲食禁止だった筈だし。
「喰おうと思えばどこでもできるだろ?」
「そりゃそうかもしれませんけど‥ブツは鞄の中なので」
「‥‥‥?何すっとぼけてやがる。蓮よりも俺様の方が上手いぜ」
そう言って何故か廊下の壁側に追いやられる私
あのカップケーキの食べ方が上手とかカナリどうでもいいんですけど。
(いい加減、話が噛み合ってないことに気づきなさい。by 作者)
「ちょっ‥どいて下さい」
だんだん近づいてくる響さんを押し返す。
「俺様が一番最初に目をつけたんだ
一番に喰わせるのは俺様だろ?」
口角をニヤリとあげる響さん。
そんなにカップケーキ食べたいのかな
「あの、それって私を見つけた順序とか関係あるんですか?」
そう言ってハァとため息を吐く。
別に生徒会室に行けば紅茶と一緒に出そうと思ってからそんなに焦らなくても逃げやしないよ
だけど、そんな私の表情が気にくわないのか
眉を顰めて私の片手を掴む。そしてそのまま壁に追いやる。
これは俗に言う壁ドン
「最高に美味しく頂いてやるよ‥?」
そう言って耳元で囁く。
「わ、わかりました‥わかりましたから!
後で紅茶と一緒にお出ししますからだから
今は食べないでください」
「紅茶だと‥‥その″食う″じゃねぇ!
それに俺様は人食家でもない!」
「えぇぇぇぇ!響さん。カップケーキじゃなくて私を食べるつもりだったんですか?」
どうやら、私たちの会話は酷く論点が
ズレていたようだ。
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