誰も殺さぬ残虐令嬢

ZUZU

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私の人生

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 17歳になるまでの私は、いわゆる陰キャだった。

 教室の席で身を縮め、数少ない同類とだけ交流する、ネットでだけ饒舌な深海の生き物。
 しかしそんな存在でいられたのも、17歳の誕生日までだった。

 その日、父が首を吊った。
 理由は、事業の失敗だ。

 後で知ったのだが、会社の資金繰りが苦しくなりだした時点で、母とは離婚していたらしい。
 母方の親族の指示によるもので、それを条件に父は、母の実家から多額の援助を受けていたのだそうだ。
 そういうわけで私は、17歳の誕生日の朝以降、母と会っていない。

 そして、売られた。

 こちらは父方の親族の差し金で、私を人身御供とすることで自分たちにもいくらか責のある負債を逃れたらしい。
 事業の負債とは、私ごとき小娘一人の身柄でチャラにできるような、そんなものなのだろうか?
 疑問に思わないでもないのだが、しかし、それで良かったらしい。

 にとっては、それで十分だったのだ。
 父と、父方の親族が負った――正確には負っていた・・負債は、金銭的なものばかりではなかった。

 怨恨――人の恨みも、含んだものだったのだ。

 私を買った、が話してくれた。
 彼は、とうに八十歳を過ぎた老人だった。

「日本が戦争に負けてさ。みんなが毎日なんとかするので大変だった頃にな。ほら、見えるだろ? あそこからあそこら辺のあたりでさ。俺らはみんな、あそこらに住んでたのが、空襲で焼けちゃってさ。それを役所が整備し直すからって言われて疎開先で待ってたら、知らない間に土地の権利から何からられちゃっててさ。外人のものになっちゃってたんだよ」

 その際に、外人の手先となって皆を騙していたのが、私の曽祖父だったのだという。

「それがなあ……あの地震でさあ」

 土地の騙取をサポートした報酬と、その後も外人の手先として働くことで、父方の一族は莫大な財産を築いた。
 名家の令嬢である母を父が娶ることが出来たのも、そうして得た富があったからだった。

 しかし、原発事故まで起こしたあの震災を機に外人は日本を去り、日本での事業を引き払った。
 そして後ろ盾を失った父方の一族はみるみる力を衰えさせ――くっくっくっ。
 喉を鳴らし、老人が笑った。

「ざまあみろってんだよ」

 私は、正に人身御供だった。
 彼や、彼と同じく土地を奪われた人々の怒りを鎮めるための供物。

 東京の下町を見下ろすタワーマンションの最上階でそんな話を聞かされたのは、父の死から一年も経とうかという頃だった。

 その一年で、どれだけ私が泣き叫んだかは、言うまでもない。
 もっとも、流した涙の中で、我が身の不幸を嘆いてというのは比率として少ない。
 というか、ほとんど無かった。

 もちろん、人間として妥当なレベルで嘆き悲しんだりはした。
 しかしそれがほぼゼロに等しくなってしまうくらい何度も、それ以外の理由で泣き叫び、涙と吐瀉物を撒き散らしながら、私はのたうちまわったのだった。

 他の理由――暴力による、単純な痛みによって。
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