逆ハーレムを作ったけど、護衛騎士が婿候補をことごとく蹴散らしていく件【R18】

冬見 六花

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 私なんかが





「あ、あの……すみません。僕なんかまで殿下の後宮に入ってしまって……」

 手慰めしながら俯い絞り出すように言ったその言葉が気に食わず、思わず双眸を細めた。
 だがそれをすぐに消して、王女然とした笑みを浮かべた。

「私、こう見えて毎日庭園の周りを走っているの」

 脈絡ない話に驚いたのか、テオドア様が呆けた顔で固まった。

「最近は騎士に倣って器具を使って体作りもしているのよ」
「ユリアーネ殿下が、ですか……?」
「えぇ。何事もまず体が資本でしょう? がそんなことを言うのは、おかしいかしら?」

 私の見た目はいかにも「深窓の令嬢」という雰囲気なことを自覚している。
 だが実際、私の性格は苛烈なほうだ。
 
 体を鍛え始めたのは、母が倒れたことがきっかけだ。
 元々母の体が弱いことを知ってはいたけれど、それでもいざ母が倒れたとき、この国の柱が揺らいだように思えた。
 母は回復には向かっているが、今も公務はできない状態にいる。でも”女王がいる”ということ、それだけで原動力や抑止力になっていることが多い。

 だが、女王という一本柱ではダメなのだ。
 王配である父が奔走してくれているが、どうしても敵が多い。ならば私がもう一つの柱に早急にならねばならない。その新しい柱さえも弱い体でいるのは断じて許されない。だから私は体を鍛え始めた。
 護衛である過保護なヴォルフはあまり気乗りしないようだが、健康のためと押し切り、今は見守ってくれている。
 
「私は自分の容姿と性格が合っていないことを悪いと思っていないわ。ユタバイト公爵とドミニク様が言う『青』を瞳しか持っていないことだって、何も不満に思っていない」
「……っ」
「生まれる前から自分の容姿を決められる人なんていないわ。だって粘土のように捏ねて色付けしているわけではないもの。そうでしょう?」

 青を持たない彼は、青を厭い、そして羨んでいる。だがそれはいずれもいらないものだ。
 それなのに彼がその不要なものに圧し潰されそうになっているのは、ユタバイト家の呪いであり洗脳だ。
 可哀想だとは思う。だがそれを脱却したいのならそれ相応の行動をすればいい。彼はそれをしていない、若しくはできていない。
 できていないというのなら、手を差し伸べることはできる。
 だがその手を取るかどうかは彼自身。
 馬を水辺に連れていけても、水を飲ますことはできないのだ。
 
「テオドア様はご自身がお持ちなものに目を向けるべきだと私は思うわ。私はそれを尊いものと思っているの。あなたのないものねだりは心が摩耗するだけで、まったくの無意味なことよ」
「僕が持っているもの……?」
「人のことには気付けても、自身のことには鈍感なのね。それならまずはそれに気付くよりも、自分に自信を持つべきと私は思うの。何に自信を持てばいいのかわからないのなら、私に肯定されたことに自信を持てばいいわ」

 そこまで話した後、顔には出さずに「しまった……!」と後悔した。
 これは後宮入りの顔合わせであって説教の場ではない。それなのに「僕なんか」という言葉に苛立って長々と話してしまった。

 自信なんて根拠がなくとも持てばいい。
 テオドア様は自分に厳しすぎる。もっと自信というもののハードルを下げるべきだ。

 不幸比べはしたくないが、私はもっと辛い境遇だった人を知っている。
 だからその人の前で、――――ヴォルフの前で「僕なんか」と言ってほしくなかった。それだけだ。

 振り返って定位置である私の後ろにいるヴォルフに、恐る恐る目をやった。
 だが、気分を害した様子は一切ない。

 むしろ無表情だが私と目が合ったことを喜んでいるように見えた。

 

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