World Craft Works

雨季島 ヨルタ

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現世

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「World Craft Works」

「現世」

 薄暗い六畳間、シンナーの独特な異臭が漂っている。 棚や机には美少女アニメのキャラクターフィギュアやロボットに怪獣の玩具が所狭しと陳列されている。 それ専用のショーケースまであり、宛ら中野ブロードウェイの個人専門店かの様相を呈していた。
 
 その隅に50cm×50cm程度の作業台に向かう、丸まった猫背姿があった。 部屋の主であろう事は間違いない。 その手には銀色のエアブラシが鈍く輝く、これこそがシンナー臭の発生源である。 手馴れた感じで、プラモデルの四角や三角の様々なパーツが次々に塗られ。 工程が終わった順に並べられていく。

 シンナー臭や塗料の粉を防ぐためにマスクとメガネを着用しており表情は読み取れない。 何の感情も無いかのように機械的に作業に没頭している。 受けとり手によっては何が楽しいのかと不可解に思うだろうが、そこは趣味の世界だ。 解らないなら黙って見て見ぬフリをして貰おう。

 その部屋の中はエアブラシを動かす手、それ以外はまるで時間が止まっているかのように見える。 2時間程の時間が経過した後だった、部屋の主はようやく手を止めた。 それから徐に立ち上がり、窓を全開にする。 換気のためだ。 シンナーの臭いが外気と入れ替わり部屋の中の毒気が抜けていく。

 マスクを外して狭い部屋の床に横になり、手近な漫画本を手に取り読み始める。 とても褒められた生活には見えないが、本人がそれを望んでいるのだから、それで良いのだ。 4冊程読み進めると、起き上がり、また作業台向かい塗り終えたプラモデルの組み立て作業に入る。 本来は塗装を終えたら1日は寝かせた方が良いのだが、それを我慢できる人は限られているのだ。 そう限られているのだ。

「…う、」

 部屋の主が少しだけ口を開き、呻き声を上げる。

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 呻き声は雄叫びへと変わる。 ご近所迷惑だろうが気にしない。

「やっぱカッケーぜっ!1/100スケールDXGマンダムZZZvr'Rひゃくぶんのいちすけーすでらっくすぐれーどまんだむとりぷるぜーたばーじょんあーるーーーっ!!この重装甲!デカイ武器!でかい翼!ファンの間では邪道と言われる事も多いが、この完成度!デザイナーさんの斬新な解釈!大満足だぜ!!」

 興奮に任せて脳内情報が口から駄々漏れていた。

「さてと、あとは頭をつけて完せ…」

 モデラーにとってはまさに最高の瞬間であった。 そう最高の瞬間…だった。

「……え?」
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