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道摩法師VS天使の軍団
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昼下がりにポツポツと降る小雨がビル街に降り注ぐ。多くの人々が肩がぶつかりそうになりながら歩く。疎らに咲く雨傘が行き交う人々の川を流れている。此処は大都市東京のある大通り。人々がまるで血液の様に都市を巡るその中に一人の老人が混じっていた。
老人の周りは不自然に間が空いており、しかし人々は誰一人として老人を見る者はいない。まるで其処に誰もいない様に、目に入っていないが如く、しかし不自然に老人を避けて通り過ぎて行くのだった。
老人は着物に上から黒の外套を羽織り、古ぼけた杖をついて空いた左手でビニール傘を指している。腰は曲がり顔は皺だらけであるが、短髪の白髪を上げている為か、その歩みに衰えを感じさせないからなのか矮躯で細い身体にも関わらず、その姿はある種の万能性すら宿している様であった。
「見つけたぞ!アシヤドウマン!!」
突如、街に響き渡る甲高い声に、しかし蘆屋道満のみが反応する。
「ぬ?」
ドン!!
巨大な光弾は老人が振り返るよりも速く放たれ、ビル群に届く高さまでの光のドームを作り出した。吹き荒れる突風に悲鳴が上がるが、それは突風に限ったことだけであり、誰一人として光の爆発を知覚できた人間はいない。それもそのはず、この攻撃では「人間」は傷付かないし、「彼ら」の様な高次の存在を知覚できる者などそうはいないのだから。
「やったか!」
そびえ立つビル群の屋上と同じ高さで滞空する小さな影がいくつもあった。肩甲骨辺りから生えた一対の羽は彼らが人外であることの証であり、その姿に万人は「天使」という感想を持つだろう。実際に彼らは天使であるし、とある任務のためにこの度現界しているのである。
「直撃だったな!」
「奇襲成功した」
「全然歯ごたえないじゃないか」
「作戦成功だ!!」
口々に溢れる歓喜の声、彼らは任務を達成した喜びに打ちひしがれていた。まるで長年の債務を完済した様な開放感、達成感の様に喜びあうのだった。
「遅いのう」
聞こえるはずのないしわがれた悪魔の声。天使全員が息を荒げ、目を泳がせ動揺している。間違えない、いま自分たちの背後にはさっき仕留めたはずの悪霊がしたり顔で浮いているだろう。彼らがゆっくりと振り返ると、そこには空に足と杖で立ち、口角を釣り上げながらこちらを品定めする目で見る老人がいた。
「いやはや、この道満、まさか齢千年を超えて天使程度に背後を取られるとは…そろそろ老いが見えてきたかの?」
ケラケラと笑う姿は陽気なおじいちゃんだが纏う霊気はそこらの土着神より遥かに上。…少なくとも眼前の天使を足したところで気休めにもならない程に。
「おのれアシヤドウマン!さっきの一撃で消滅すればよかったものを!!」
天使の1人が怒声を上げる。道満はそれを冷ややかな視線で返す。
「笑止。あの程度でワシを消すつもりであったとは片腹痛し!」
道満は空中に刀印を切る。指の軌跡を辿る様に黒のオーラが浮き上がる。天使達は戦慄する。蘆屋道満の描いた陣に籠められた霊気は既に自分たちの内包するモノを超えているのだから。
悲鳴。天使達は背を向けて逃げ出す。懸命に翼を動かし少しでもあの化け物から離れるために。
「ワシの呪術は離れた程度でどうにもならんわ!【喝】!!」
編み上げた術式が輝きながら崩壊する。生まれた紫色の光線は天使達を捉え、まるで一陣の風の様に吹き抜けていった。果てまで届く様な轟音と太陽のように激しい閃光は天使達の一切を消し飛ばす事になった。雲を消しまるで空に大穴が開いた様になったところで、光線は静かに消えた。
「西洋の呪いの真似事をしてみたが、やはり大味で好かん。繊細さが足りぬの」
まるで実験結果の感想を述べる様に、いま自分の行なった虐殺を批評すると、興味を失ったかの様にスルスルと地面へと降下していった。
「…やはり彼らではどうにもなりませんか」
澄んだ声が降りる道満の頭上から聞こえた。ゆっくりと首をもたげ、そのまま上を眺めるとそこにはまた天使がいた。
先程の天使達よりも豪華な衣装、老成した顔つきにロマンスグレーのオールバック。見かけの年齢は先程の天使達より道満に近いが上品さで言えば道満より遥かに上である。
「…久しいの、権天使」
「ええ、本当にお久しぶりですね、蘆屋道満。100年といったところですか?」
権天使と呼ばれた男はまるで旧友に再会したかの様な微笑みを浮かべていた。
権天使の眼下で邪悪な笑みを浮かべる老人の名前は蘆屋道満、又は道摩法師と呼ばれた陰陽師その人である。かの天才陰陽師「安倍晴明」のライバルとされ現代日本においても偉人として知られている。
「薄気味悪いの~、前回は確かヌシの両腕をもいだ筈じゃが?」
100年前に戦った際の傷は見られない。彼の腕はしっかりとそこにあった。
「100年間あの事だけを考えている程暇ではありませんので」
「カカカカカッ、確かに現世を任せられたヌシがその様な体たらくならば、現代は更に混沌としておったであろうな」
豪快に笑う道満に権天使は苦笑いで返す。
「…で?先程の天使達は…いや、先週も襲撃を受けたか….首魁はヌシで良いのか?」
この辺り天使達による攻撃受けていた道満だが、気にする様子もなく、確認を取る。
「あれらは天使ではなく大天使だったのですがね…」
「あんなもの目糞鼻糞よ。ヌシとてワシの爪先にも及ばん。ワシをどうにかしたければ最低でも中位三隊を纏めて連れてくるんじゃな」
権天使は苦笑いと共に溜息をこぼす。精鋭を送り込んだが相手ならないどころでは無かったらしい。
「そんな事をすれば、世界が歪んでしまいますよ」
「そんな軟弱な作りをするからワシの様な厄災を生み出す事になるのじゃよ、クククク」
世界の作りの批判は権天使の主人の侮辱。そんな事を言われた権天使であったが、なぜか今は微笑みでながしている。
「…何を企んでおる。その気色の悪い顔を今すぐにやめい」
「気づかれてしまいましたか。隠し事もなんですし、お見せしましょう」
真顔に戻った権天使はどこからともなく緋色に輝く一本の剣を取り出した。刀身は火がメラメラと燃え上がっていた。
「お分かりになりますか?」
「その聖剣はヌシには不相応じゃと思うが?」
「ええ、でしょうね。これのために払った代償は決して安いものではありませんでしたので…」
そう言って衣装の胸元を緩める権天使。
「…それは…成る程、ようやりおる、やはり復讐に囚われていたのではないか、クククク」
権天使の胸元には大きな穴がぽっかりと空いていた。出血の様子はない。だがその穴が彼にとってかなり大きな傷であることは間違いない。
「熾天使様の炎です。分霊ではありますが、これならば貴方に火傷ぐらいは負わせられるでしょうね?」
「馬鹿を言うでないわ、その火は断罪の炎じゃろ?魂、物質の分別なく焼却する聖火ではないか」
道満はわざとらしいリアクションを取る。しかしそこには微かな焦りが感じられた。
「…さすがの貴方もこれには感じるものがありますか。…ならばこれで人界を守ることが出来る」
「ワシは現世を流れる霞じゃと言うのに…潔癖もそこまでくれば滑稽じゃわ」
「信仰を得ながら召し上げられる事を拒み、享楽に生き現世に災厄をもたらす貴方を私は許すことができない!」
怒気をはらんだ声、初めて見せた激しい感情。明確な敵意が彼の顔に現れる。
「輪廻から外れた我が身、人の世の理を外れてなにがおかしい?ヌシは現世の監督役、相容れぬのは自明の理よ。そこに感情など…傲慢と言うしかないの」
「なにが傲慢か!人類の管理者として心を砕く事になんの罪があると言うのか!」
そこに先程の優男は居ない。力強い目は戦士のものとなった。
「100年前は私の実力不足だった…だが今は!貴方の首に手が届く…」
次の瞬間、道満の視界から天使が消えた。
「ほ!」
突如飛んできた炎を纏った斬撃に道満は空を駆けて回避する。しかし避けた先に新たな斬撃が迫る。
「使い手が貧弱ではあれ、成る程これは脅威よ」
次々と迫る燃える斬撃を燕のように避けて飛ぶ。
「貴方の方が傲慢では?…ならばこれでどうです!!」
突然明るくなった上空を見上げると天を衝く火柱があった。権天使の剣から噴き出した炎は全てを燃やさんと吹き荒れている。
「その炎は汝が身も無事では済まんぞォ」
声を張る道満。この炎は人界にも影響を及ぼす事は間違いない。
「【五行相剋】!!」
道満は数百もの符呪を飛ばす。1枚1枚から滝のような水が渦を巻いて打ち出される。【水剋火】と呼ばれる水行を使い火を打ち消す五行思想である。
「効かんわ!塵すら残さず消えてなくなれ!!」
火柱にぶつかった水は尽く蒸発し、時には水蒸気爆発を起こし霧となる。しかしそれらも炎に飲み込まれ消滅する。権天使はそのまま剣を道満に向けて振り抜いた。
「…だから貴様は傲慢と言ったのじゃ」
「え?」
先程まで燃え上がっていた聖火が突如として消失した。鎮火ではなく消滅。その事態に権天使は動きを止めた。
次に背後から異物が腹を貫通する痛みに気づく。
ゆっくりと見下ろすと先程まで握っていた剣の刃が生えていた。
「たかが100年程度でワシの呪術を超えたと思うておったのか」
「…いつ…から…?」
背後に視界を向けると剣を握る蘆屋道満がいた。
「…さぁの、少なくとも火柱を振り下ろす前よりヌシは術中であった」
そこにいつもの笑う道満はいない。しかしつまらなそうに権天使の目を見ることもしない。
「…まさか…このよう…な…かたちで…はいぼく…するとは…」
「先程の戦い、見事であった。貴様の動きはとうに権天使の域を超えておった。その代償も生半可なものではないな?その気概には賞賛を贈ろう」
「…たしか…に…そうで…すが……なぜ…あなた…は…勝ったつもり…なのですか?」
「なに?」
道満が辺りを見回した瞬間、視界に一本の光の筋が横切る。それは道満達を中心に円を描くように伸びてゆく。
「貴様らは!?」
その光帯に沿うように配置されていたのは天使達であった。最低でも大天使、能天使、力天使の姿まである。
「法螺であったか…いやしかし、ここまでの数、どのような術あっての大業じゃ」
どこからともなく現れた天使達。その数は目測でも一万は超えているだろう。
それだけ貴方が天界では驚異と認識されているのですよ。
現れたのは巨大で荘厳な門、天界では『天界の門』人の間で『裁きの門』とよばれたそこから現れたのは6翼を持つ天使であった。脚が隠れるほど裾の長い純白のシンプルな服に男女の区別がつかない。腰まで伸びた癖のないしっとりとした髪から現れた顔は中性的で、大変美しかった。左手に盾、右手には僅かな日の灯る剣を握っている。それは権天使の握っていた、道満の握る剣よりもシンプルであるが纏う焔と霊気には確然とした格の違いがあった。
「その焔の剣…熾天使ウリエルに相違ないな?」
先程までの陽気な老人はいない。霊気を全身から黒いオーラの様に溢れさせながら敵を見据えている。その姿は彼が比類なき陰陽師であり、天使の軍勢を前に一歩も引かぬ化物であることを示していた。
「ええ、その通り。貴方を滅却する為に天界の警備を緩めることになってしまいましたよ」
「それはそれは歓迎感謝するぞ。これ程豪勢な迎えは人の歴史の中でもそう多くはおらんじゃろな」
「まさか権天使を呪術に嵌めるとは、千年の研鑽、伊達ではありませんね」
「カカッ、ならば貴様も掛かってみるか?」
纏う黒のオーラが倍加する。これでも道満の全力では無い。
「人界の中のみでその霊力、もはや神霊の域にまで昇華していますね。やはり貴方は捨て置けない。ここで禍根は残さず消えてくださいね」
「…それはどう…ガッ!?」
回避しようとした道満の身体は鉛の様に重くなった。纏った霊力は霧散した。指先一つ動かせない。それはすなわち呪いである。
(これは光帯の力か?いやアレは多様性を欠く代わりに何よりも強固なただの結界のはず。ならばこれは…)
道満が目を移した先にあったのは突き刺した権天使の首に掛かる光るシュミットであった。
「あなたを…あざむ…く…ために…けんに…ちゅうもくさせた…のは…せいこう…のよう…ですね」
(下賜されたものは複数あったということか!!)
元から全て作り話であったという事に驚愕する道満。文句の一つでも言ってやりたいがその自由は光るシュミットの前にはない。
「陰陽術の長であると貴方ならば指先一つでも術の行使は可能でしょう。故にこの様な策を弄する事になりました。権天使アルケルよ、大儀であった」
「もったい…なき…お言葉…、なれど今は…この者を討つことが…先決…かと…」
主人に対して敬意を持った話し方であったが、アルケルの口元は不敵に歪んでいる。
「…相わかった、では蘆屋道満、我が剣に沈む事を誇りに思いなさい。痛みは無い、一刀を持って全てを終わらせましょう」
掲げられた剣に光が集まる。それは焔と呼ぶには余りにも清澄で神秘的、それは焔の形を成した清光であった。
(させぬゾォ!!)
道満は霊力を体内で爆発させる。術を解くため、危機を脱するために。しだいに黒の靄が道満を包
み始める。
「あなたは…どこまで…!?」
驚愕するアルケルだったが道満の身体にしがみ付き、必死で動きを止める。
(があああああああああああああああ!!)
再び黒のオーラを纏う道満、生まれた余波を天使達を襲う。視界が歪む程の濃厚な霊気に貼っていた結界も悲鳴をあげる。
「無駄なあがきを…ではさようなら」
ウリエルが剣を振るった。光の奔流が道満達を結界ごと飲み込む。
(させぬ!させぬぞおおおおおおおおお!!」
光に飲み込まれる寸前、術から解放された道満は精一杯の障壁を貼る。刹那にその数72枚。和洋折衷混ぜ合わせた様々な守りが展開される。もとよりあった護符が瞬時に燃え上がる。行使した先から術が溶ける。天才陰陽師蘆屋道満による神業を閃光が順次否定してゆく。
「させぬ!させぬ!させぬ!させぬ!させぬぞおおお!」
個人で行使不可能と言われた大魔術を、神々さえ恐れたと言われた禁呪を、道満オリジナルの傑作の呪術を瞬時に展開し光にぶつける。
高出力、高濃度の神秘の衝突は空間に歪みを、亀裂を生み出してゆく。
「!?!?まさか、これは!!」
ウリエルは驚愕する。蘆屋道満が焔の剣に拮抗しようとしているのもそうだか、それよりも重大な事が起きている。
『空間を割る』
それはかつて神が天と地を分けた様に世界そのものに干渉するという事。熾天使であってもそれは不可能であった。いま眼前に広がる亀裂は新世界の開闢、創世の瞬間、…既存の世界の否定である。
「いけない!全天使に伝令!全霊を持って余波を抑えよ!!」
瞬時に展開した天使達は各々で広がる亀裂を抑えに掛かる。亀裂の浸食は一進一退の様相を呈する様になった。
「我が盾よ!人界を守る力を!!」
ウリエルのもう一つの武具である盾が亀裂を急速に押さえ込んでゆく。
さらには門より次々と上位天使が現れ、修復に当たる。
「ウリエル、加勢するぞ!」
他の熾天使達の加勢で、その勢いを完全に無くした歪みは焔の剣の閃光の消滅を最後に平定された。
気がつけば雲一つない静寂の夕焼けがあった。
「道満達は?」
ウリエルは観測していた配下に確認を取る。一人の天使がウリエルの前で跪く。
「権天使アルケルは焔の剣により消滅!蘆屋道満は亀裂に飲み込まれた様です!」
「亀裂に飲み込まれた…」
前代未聞の事態である。創世以前の混沌の中など神々でさえ知るものは少ない。もちろん天使達は誰もその内情を知るものはいない。
そんな中に飲み込まれては蘆屋道満であってもひとたまりもないだろう。そう考える天使達が大半だったが、上位天使達の、特にウリエルは不安を隠せなかった。
(私の焔の剣を前に諦める事せず抗い続けたあの男が呆気なく消えるとは思えない。…コレは私が彼を認めてしまっているからなのでしょうか…)
ただ貪欲に人界に居座り続けた荒御魂。神霊と謳われても良い程の莫大な霊力を持ち、術の扱いに於いては上位天使であっても舌を巻くほどだった。彼がこちら側に来てくれれば、人類の完全な救済へ確実な進歩があった筈だったのだ。
…ゆえに見過ごせなかった。彼がその気がなくても彼の世界に与えるであろう影響は無視出来ないものになると分かっていた。彼の消滅は手痛い出費であるが必要経費だと思っていた。
「彼は生きているだろうな…」
ウリエルのその言葉に近くの天使達に動揺が広がる。
「だがどうしょうもない。既に問題は私達の管轄外だ。とゆうわけで現時刻を持って作戦は終了!皆さん撤収してください」
皆不安の顔つきのまま撤収を始める。これだけの天使が集まった場所など聖地になったとて不思議ではない。溜まった霊気を散らしてゆく。天使達は自分達の持ち場へと戻ってゆくのだった。
「何もなければ良いのですが…」
そう呟いた熾天使の去り際の言葉は残念ながら異世界にて現実のものとなってゆくのだった。
老人の周りは不自然に間が空いており、しかし人々は誰一人として老人を見る者はいない。まるで其処に誰もいない様に、目に入っていないが如く、しかし不自然に老人を避けて通り過ぎて行くのだった。
老人は着物に上から黒の外套を羽織り、古ぼけた杖をついて空いた左手でビニール傘を指している。腰は曲がり顔は皺だらけであるが、短髪の白髪を上げている為か、その歩みに衰えを感じさせないからなのか矮躯で細い身体にも関わらず、その姿はある種の万能性すら宿している様であった。
「見つけたぞ!アシヤドウマン!!」
突如、街に響き渡る甲高い声に、しかし蘆屋道満のみが反応する。
「ぬ?」
ドン!!
巨大な光弾は老人が振り返るよりも速く放たれ、ビル群に届く高さまでの光のドームを作り出した。吹き荒れる突風に悲鳴が上がるが、それは突風に限ったことだけであり、誰一人として光の爆発を知覚できた人間はいない。それもそのはず、この攻撃では「人間」は傷付かないし、「彼ら」の様な高次の存在を知覚できる者などそうはいないのだから。
「やったか!」
そびえ立つビル群の屋上と同じ高さで滞空する小さな影がいくつもあった。肩甲骨辺りから生えた一対の羽は彼らが人外であることの証であり、その姿に万人は「天使」という感想を持つだろう。実際に彼らは天使であるし、とある任務のためにこの度現界しているのである。
「直撃だったな!」
「奇襲成功した」
「全然歯ごたえないじゃないか」
「作戦成功だ!!」
口々に溢れる歓喜の声、彼らは任務を達成した喜びに打ちひしがれていた。まるで長年の債務を完済した様な開放感、達成感の様に喜びあうのだった。
「遅いのう」
聞こえるはずのないしわがれた悪魔の声。天使全員が息を荒げ、目を泳がせ動揺している。間違えない、いま自分たちの背後にはさっき仕留めたはずの悪霊がしたり顔で浮いているだろう。彼らがゆっくりと振り返ると、そこには空に足と杖で立ち、口角を釣り上げながらこちらを品定めする目で見る老人がいた。
「いやはや、この道満、まさか齢千年を超えて天使程度に背後を取られるとは…そろそろ老いが見えてきたかの?」
ケラケラと笑う姿は陽気なおじいちゃんだが纏う霊気はそこらの土着神より遥かに上。…少なくとも眼前の天使を足したところで気休めにもならない程に。
「おのれアシヤドウマン!さっきの一撃で消滅すればよかったものを!!」
天使の1人が怒声を上げる。道満はそれを冷ややかな視線で返す。
「笑止。あの程度でワシを消すつもりであったとは片腹痛し!」
道満は空中に刀印を切る。指の軌跡を辿る様に黒のオーラが浮き上がる。天使達は戦慄する。蘆屋道満の描いた陣に籠められた霊気は既に自分たちの内包するモノを超えているのだから。
悲鳴。天使達は背を向けて逃げ出す。懸命に翼を動かし少しでもあの化け物から離れるために。
「ワシの呪術は離れた程度でどうにもならんわ!【喝】!!」
編み上げた術式が輝きながら崩壊する。生まれた紫色の光線は天使達を捉え、まるで一陣の風の様に吹き抜けていった。果てまで届く様な轟音と太陽のように激しい閃光は天使達の一切を消し飛ばす事になった。雲を消しまるで空に大穴が開いた様になったところで、光線は静かに消えた。
「西洋の呪いの真似事をしてみたが、やはり大味で好かん。繊細さが足りぬの」
まるで実験結果の感想を述べる様に、いま自分の行なった虐殺を批評すると、興味を失ったかの様にスルスルと地面へと降下していった。
「…やはり彼らではどうにもなりませんか」
澄んだ声が降りる道満の頭上から聞こえた。ゆっくりと首をもたげ、そのまま上を眺めるとそこにはまた天使がいた。
先程の天使達よりも豪華な衣装、老成した顔つきにロマンスグレーのオールバック。見かけの年齢は先程の天使達より道満に近いが上品さで言えば道満より遥かに上である。
「…久しいの、権天使」
「ええ、本当にお久しぶりですね、蘆屋道満。100年といったところですか?」
権天使と呼ばれた男はまるで旧友に再会したかの様な微笑みを浮かべていた。
権天使の眼下で邪悪な笑みを浮かべる老人の名前は蘆屋道満、又は道摩法師と呼ばれた陰陽師その人である。かの天才陰陽師「安倍晴明」のライバルとされ現代日本においても偉人として知られている。
「薄気味悪いの~、前回は確かヌシの両腕をもいだ筈じゃが?」
100年前に戦った際の傷は見られない。彼の腕はしっかりとそこにあった。
「100年間あの事だけを考えている程暇ではありませんので」
「カカカカカッ、確かに現世を任せられたヌシがその様な体たらくならば、現代は更に混沌としておったであろうな」
豪快に笑う道満に権天使は苦笑いで返す。
「…で?先程の天使達は…いや、先週も襲撃を受けたか….首魁はヌシで良いのか?」
この辺り天使達による攻撃受けていた道満だが、気にする様子もなく、確認を取る。
「あれらは天使ではなく大天使だったのですがね…」
「あんなもの目糞鼻糞よ。ヌシとてワシの爪先にも及ばん。ワシをどうにかしたければ最低でも中位三隊を纏めて連れてくるんじゃな」
権天使は苦笑いと共に溜息をこぼす。精鋭を送り込んだが相手ならないどころでは無かったらしい。
「そんな事をすれば、世界が歪んでしまいますよ」
「そんな軟弱な作りをするからワシの様な厄災を生み出す事になるのじゃよ、クククク」
世界の作りの批判は権天使の主人の侮辱。そんな事を言われた権天使であったが、なぜか今は微笑みでながしている。
「…何を企んでおる。その気色の悪い顔を今すぐにやめい」
「気づかれてしまいましたか。隠し事もなんですし、お見せしましょう」
真顔に戻った権天使はどこからともなく緋色に輝く一本の剣を取り出した。刀身は火がメラメラと燃え上がっていた。
「お分かりになりますか?」
「その聖剣はヌシには不相応じゃと思うが?」
「ええ、でしょうね。これのために払った代償は決して安いものではありませんでしたので…」
そう言って衣装の胸元を緩める権天使。
「…それは…成る程、ようやりおる、やはり復讐に囚われていたのではないか、クククク」
権天使の胸元には大きな穴がぽっかりと空いていた。出血の様子はない。だがその穴が彼にとってかなり大きな傷であることは間違いない。
「熾天使様の炎です。分霊ではありますが、これならば貴方に火傷ぐらいは負わせられるでしょうね?」
「馬鹿を言うでないわ、その火は断罪の炎じゃろ?魂、物質の分別なく焼却する聖火ではないか」
道満はわざとらしいリアクションを取る。しかしそこには微かな焦りが感じられた。
「…さすがの貴方もこれには感じるものがありますか。…ならばこれで人界を守ることが出来る」
「ワシは現世を流れる霞じゃと言うのに…潔癖もそこまでくれば滑稽じゃわ」
「信仰を得ながら召し上げられる事を拒み、享楽に生き現世に災厄をもたらす貴方を私は許すことができない!」
怒気をはらんだ声、初めて見せた激しい感情。明確な敵意が彼の顔に現れる。
「輪廻から外れた我が身、人の世の理を外れてなにがおかしい?ヌシは現世の監督役、相容れぬのは自明の理よ。そこに感情など…傲慢と言うしかないの」
「なにが傲慢か!人類の管理者として心を砕く事になんの罪があると言うのか!」
そこに先程の優男は居ない。力強い目は戦士のものとなった。
「100年前は私の実力不足だった…だが今は!貴方の首に手が届く…」
次の瞬間、道満の視界から天使が消えた。
「ほ!」
突如飛んできた炎を纏った斬撃に道満は空を駆けて回避する。しかし避けた先に新たな斬撃が迫る。
「使い手が貧弱ではあれ、成る程これは脅威よ」
次々と迫る燃える斬撃を燕のように避けて飛ぶ。
「貴方の方が傲慢では?…ならばこれでどうです!!」
突然明るくなった上空を見上げると天を衝く火柱があった。権天使の剣から噴き出した炎は全てを燃やさんと吹き荒れている。
「その炎は汝が身も無事では済まんぞォ」
声を張る道満。この炎は人界にも影響を及ぼす事は間違いない。
「【五行相剋】!!」
道満は数百もの符呪を飛ばす。1枚1枚から滝のような水が渦を巻いて打ち出される。【水剋火】と呼ばれる水行を使い火を打ち消す五行思想である。
「効かんわ!塵すら残さず消えてなくなれ!!」
火柱にぶつかった水は尽く蒸発し、時には水蒸気爆発を起こし霧となる。しかしそれらも炎に飲み込まれ消滅する。権天使はそのまま剣を道満に向けて振り抜いた。
「…だから貴様は傲慢と言ったのじゃ」
「え?」
先程まで燃え上がっていた聖火が突如として消失した。鎮火ではなく消滅。その事態に権天使は動きを止めた。
次に背後から異物が腹を貫通する痛みに気づく。
ゆっくりと見下ろすと先程まで握っていた剣の刃が生えていた。
「たかが100年程度でワシの呪術を超えたと思うておったのか」
「…いつ…から…?」
背後に視界を向けると剣を握る蘆屋道満がいた。
「…さぁの、少なくとも火柱を振り下ろす前よりヌシは術中であった」
そこにいつもの笑う道満はいない。しかしつまらなそうに権天使の目を見ることもしない。
「…まさか…このよう…な…かたちで…はいぼく…するとは…」
「先程の戦い、見事であった。貴様の動きはとうに権天使の域を超えておった。その代償も生半可なものではないな?その気概には賞賛を贈ろう」
「…たしか…に…そうで…すが……なぜ…あなた…は…勝ったつもり…なのですか?」
「なに?」
道満が辺りを見回した瞬間、視界に一本の光の筋が横切る。それは道満達を中心に円を描くように伸びてゆく。
「貴様らは!?」
その光帯に沿うように配置されていたのは天使達であった。最低でも大天使、能天使、力天使の姿まである。
「法螺であったか…いやしかし、ここまでの数、どのような術あっての大業じゃ」
どこからともなく現れた天使達。その数は目測でも一万は超えているだろう。
それだけ貴方が天界では驚異と認識されているのですよ。
現れたのは巨大で荘厳な門、天界では『天界の門』人の間で『裁きの門』とよばれたそこから現れたのは6翼を持つ天使であった。脚が隠れるほど裾の長い純白のシンプルな服に男女の区別がつかない。腰まで伸びた癖のないしっとりとした髪から現れた顔は中性的で、大変美しかった。左手に盾、右手には僅かな日の灯る剣を握っている。それは権天使の握っていた、道満の握る剣よりもシンプルであるが纏う焔と霊気には確然とした格の違いがあった。
「その焔の剣…熾天使ウリエルに相違ないな?」
先程までの陽気な老人はいない。霊気を全身から黒いオーラの様に溢れさせながら敵を見据えている。その姿は彼が比類なき陰陽師であり、天使の軍勢を前に一歩も引かぬ化物であることを示していた。
「ええ、その通り。貴方を滅却する為に天界の警備を緩めることになってしまいましたよ」
「それはそれは歓迎感謝するぞ。これ程豪勢な迎えは人の歴史の中でもそう多くはおらんじゃろな」
「まさか権天使を呪術に嵌めるとは、千年の研鑽、伊達ではありませんね」
「カカッ、ならば貴様も掛かってみるか?」
纏う黒のオーラが倍加する。これでも道満の全力では無い。
「人界の中のみでその霊力、もはや神霊の域にまで昇華していますね。やはり貴方は捨て置けない。ここで禍根は残さず消えてくださいね」
「…それはどう…ガッ!?」
回避しようとした道満の身体は鉛の様に重くなった。纏った霊力は霧散した。指先一つ動かせない。それはすなわち呪いである。
(これは光帯の力か?いやアレは多様性を欠く代わりに何よりも強固なただの結界のはず。ならばこれは…)
道満が目を移した先にあったのは突き刺した権天使の首に掛かる光るシュミットであった。
「あなたを…あざむ…く…ために…けんに…ちゅうもくさせた…のは…せいこう…のよう…ですね」
(下賜されたものは複数あったということか!!)
元から全て作り話であったという事に驚愕する道満。文句の一つでも言ってやりたいがその自由は光るシュミットの前にはない。
「陰陽術の長であると貴方ならば指先一つでも術の行使は可能でしょう。故にこの様な策を弄する事になりました。権天使アルケルよ、大儀であった」
「もったい…なき…お言葉…、なれど今は…この者を討つことが…先決…かと…」
主人に対して敬意を持った話し方であったが、アルケルの口元は不敵に歪んでいる。
「…相わかった、では蘆屋道満、我が剣に沈む事を誇りに思いなさい。痛みは無い、一刀を持って全てを終わらせましょう」
掲げられた剣に光が集まる。それは焔と呼ぶには余りにも清澄で神秘的、それは焔の形を成した清光であった。
(させぬゾォ!!)
道満は霊力を体内で爆発させる。術を解くため、危機を脱するために。しだいに黒の靄が道満を包
み始める。
「あなたは…どこまで…!?」
驚愕するアルケルだったが道満の身体にしがみ付き、必死で動きを止める。
(があああああああああああああああ!!)
再び黒のオーラを纏う道満、生まれた余波を天使達を襲う。視界が歪む程の濃厚な霊気に貼っていた結界も悲鳴をあげる。
「無駄なあがきを…ではさようなら」
ウリエルが剣を振るった。光の奔流が道満達を結界ごと飲み込む。
(させぬ!させぬぞおおおおおおおおお!!」
光に飲み込まれる寸前、術から解放された道満は精一杯の障壁を貼る。刹那にその数72枚。和洋折衷混ぜ合わせた様々な守りが展開される。もとよりあった護符が瞬時に燃え上がる。行使した先から術が溶ける。天才陰陽師蘆屋道満による神業を閃光が順次否定してゆく。
「させぬ!させぬ!させぬ!させぬ!させぬぞおおお!」
個人で行使不可能と言われた大魔術を、神々さえ恐れたと言われた禁呪を、道満オリジナルの傑作の呪術を瞬時に展開し光にぶつける。
高出力、高濃度の神秘の衝突は空間に歪みを、亀裂を生み出してゆく。
「!?!?まさか、これは!!」
ウリエルは驚愕する。蘆屋道満が焔の剣に拮抗しようとしているのもそうだか、それよりも重大な事が起きている。
『空間を割る』
それはかつて神が天と地を分けた様に世界そのものに干渉するという事。熾天使であってもそれは不可能であった。いま眼前に広がる亀裂は新世界の開闢、創世の瞬間、…既存の世界の否定である。
「いけない!全天使に伝令!全霊を持って余波を抑えよ!!」
瞬時に展開した天使達は各々で広がる亀裂を抑えに掛かる。亀裂の浸食は一進一退の様相を呈する様になった。
「我が盾よ!人界を守る力を!!」
ウリエルのもう一つの武具である盾が亀裂を急速に押さえ込んでゆく。
さらには門より次々と上位天使が現れ、修復に当たる。
「ウリエル、加勢するぞ!」
他の熾天使達の加勢で、その勢いを完全に無くした歪みは焔の剣の閃光の消滅を最後に平定された。
気がつけば雲一つない静寂の夕焼けがあった。
「道満達は?」
ウリエルは観測していた配下に確認を取る。一人の天使がウリエルの前で跪く。
「権天使アルケルは焔の剣により消滅!蘆屋道満は亀裂に飲み込まれた様です!」
「亀裂に飲み込まれた…」
前代未聞の事態である。創世以前の混沌の中など神々でさえ知るものは少ない。もちろん天使達は誰もその内情を知るものはいない。
そんな中に飲み込まれては蘆屋道満であってもひとたまりもないだろう。そう考える天使達が大半だったが、上位天使達の、特にウリエルは不安を隠せなかった。
(私の焔の剣を前に諦める事せず抗い続けたあの男が呆気なく消えるとは思えない。…コレは私が彼を認めてしまっているからなのでしょうか…)
ただ貪欲に人界に居座り続けた荒御魂。神霊と謳われても良い程の莫大な霊力を持ち、術の扱いに於いては上位天使であっても舌を巻くほどだった。彼がこちら側に来てくれれば、人類の完全な救済へ確実な進歩があった筈だったのだ。
…ゆえに見過ごせなかった。彼がその気がなくても彼の世界に与えるであろう影響は無視出来ないものになると分かっていた。彼の消滅は手痛い出費であるが必要経費だと思っていた。
「彼は生きているだろうな…」
ウリエルのその言葉に近くの天使達に動揺が広がる。
「だがどうしょうもない。既に問題は私達の管轄外だ。とゆうわけで現時刻を持って作戦は終了!皆さん撤収してください」
皆不安の顔つきのまま撤収を始める。これだけの天使が集まった場所など聖地になったとて不思議ではない。溜まった霊気を散らしてゆく。天使達は自分達の持ち場へと戻ってゆくのだった。
「何もなければ良いのですが…」
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