黒髪の少女は時を巡る

鳳華愛姫

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第一章

大公家

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結局私は、殺されない生かされることとなった。
「殺されても…よかったのにな」
今まで会ったこともない父親なんかよりもずっと、魔女家族たちのところへ行きたかった。
「フォールン…死にたいだなんて言わないでくれ。お前は大事な俺の娘なんだから」
そんなお優しい言葉なんて誰が信じられるというのだろう。私はもう人間なんて信じられないし、信じるつもりなど毛頭ない。
「私が貴方に着いていくのは、亡き母の記憶を教えてほしいからであってあなたの為ではありません。」
そう言うと傷ついた顔をする父。
そんな顔をしたところで優しくするつもりなどない。
「それに…」と言葉を続けたが、言っていいのか分からず口をつぐんだ。
「なんだい?」
「いえ…別に」
不自然だが窓の外を眺めるように横を向く。
「あなたからは魔力が強く感じられますが、魔女ほどではありませんから、同族ではないのでしょうし…」だなんて口が裂けても言えるわけがないではないか。
魔力が感じられるということは、(イラクファーレ帝国)がいま脅威としている魔物の襲来を感じ取れるということ。私の大切なをそんなことのために使われるだなんて心底嫌だ。
(嗚呼…早く母さんのこと聞きたいのにな)
どうにも聞けるような雰囲気ではないため、仕方なくずっと黙って魔獣車まじゅうしゃ(おとなしい種の魔獣に車をひかせたもの)に乗っているものの…正直、息が詰まって仕方がない。
目の前の父親を見据えるも、目が合うと直ぐに悲痛な目でこちらを見てくる。
(一々気に障る…)
わざわざこちらの嫌な表情を作らないでほしいものだ…

そんな静かな空気のまま、魔獣車まじゅうしゃでの旅は終わった。




大公家に着いたらしく、私は父に手を引かれて一緒に降り、目の前に広がる光景に開いた口が塞がらなかった。
何十人ともいえるメイドさんや執事さんがズラっと並んでいた。その人間たちが一斉に頭を下げた。
「旦那様、お嬢様お帰りなさいませ」
殆どの人間はが金髪や銀髪という、黒とは真反対の色であった。
基本髪色とは、魔力の強さで決まるものであり、黒ければ魔力が強く白ければ魔力が弱い、又は魔力が一切ないとなる。
つまりここにいる人間たちは、魔力がほとんど無いということ。
(武器や毒以外なら私を害すことはできなさそうだな…)
「あぁ、みんなただいま。やっと…娘を見つけてきたよ」
父は泣きそうになりながら、目元を隠している。
大袈裟であるし、私は父だとしても今の今まで放置されていたせいで全く親近感など湧かない。
今までも最初は優しくして、髪を見た瞬間殺そうとし始める人間がほとんどだった。
(あの子以外は…)


ふと懐かしい女の子の顔がよぎり、かぶりをふった。
だって、あの子はもう居ないから…
私をかばったせいで死んだあの子を思うと、罪悪感で潰されそうになる。今まで生きてこれたのはあの子のおかげだから、私を庇って死ぬ直前まで
「貴方は悪くない。生まれてきたことが悪いだなんてことはないのよ。私の孤独を埋めてくれたあなたの為に死ねるなら、それは私の本望よ」
と、私に声をかけてくれた。
(あの子の為に…生きるべきなのかな?)


「…ン、フ……ル…、フォールン!」
はっと顔を上げると父の顔があった。
「な、なんですか…?」
「いや…君がずっとぼうっとしてたから心配で…それより、君の専属侍女だよ。」
「専属侍女…?」
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みんなの感想(1件)

マグロ
2023.11.04 マグロ
ネタバレ含む
鳳華愛姫
2023.11.04 鳳華愛姫

いやぁ…
そこも考えておりますともぉ☺
まずどうして閣下がフォールンを見つけたのか…考えてくれたまえ
マグロさん感想ありがとぉ
ちな、魔女たちは結局優しすぎるがため滅んだんだよ
それに、魔法にも秘密があるよ
まだ魔法の効果は出てないからね

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