社会復帰は家庭教師から

Neu(ノイ)

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一章:精神病×難病×家庭教師

家庭教師と生徒 01

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【家庭教師と生徒】


 人生に希望を抱くだなんて、馬鹿のすることだ。
俺は、少なくとも自分の人生に希望など抱けやしない。


 死ぬ訳ではない。
だが、自由に体を動かせない。
何とも中途半端な病気に冒された。
その病気は、一度なると完治は滅多にないという難病だった。




 窓の外で、同級生達がサッカーをやっている姿を、やるせない想いで眺める。
やりたい気持ちはあっても、すぐに走れなくなる。
筋肉が動かなくなるのだ。
邪魔になるだけだ。
もう外で元気に走り回るなど、出来ぬことなのだ。
俺は拳を握り締めて俯いた。
掌に爪が食い込む。
悔しいのか、悲しいのか、一体何を憎めば良いのか、解らない。
どうして俺なのか。
何で今なのか。
怒りのやり場がなかった。


 原因不明の病気になってしまうだなんて、誰もが考えないことだろう。
ある日突然、ということではない。


 あ、なんか疲れが取れないかも。
頭が重いな。
瞼が下がる。
あれ、物持ってらんねえ。
何でこんなに物落とすんだろ。


 そんなことが徐々に増えて、可笑しいとは思いつつ、人に聞いても、疲労だろう、としか言われない。


 その内、立っているのが辛くなり、歩くのも大変になり、物が二重に見え始めた。
そして、息苦しくなり、上手く発音が出来なくなった。
流石に、ヤバいと思い、病院に行ったは良いが、其処で告げられたのは、『重症筋無力症』の疑いがあると言うこと。
その病気は、国で難病に指定されている、完治が難しい、そういったものだった。


 結局、血液検査と、テンシロン検査という、薬物投与による病状の改善の有無を見る検査を行い、結果は、血液検査は陰性だったが、テンシロン検査が陽性だったことから、その病気で間違いないだろうということになった。


 あんなにも辛い症状に感じたが、俺はまだ軽い方らしく、治療は投薬で十分らしい。
出された薬は、ウブレチドという錠剤だった。
取り敢えず、最初は1日1錠からの投与と決められているらしく、様子を見て薬の量も増減していくとのことらしい。


 とにかく、この病気は、筋肉の働きが阻害されてしまうらしく、そのために、反復運動が上手く出来なかったり、すぐに疲れてしまったりするのだという。
ネットで調べてみれば、色々な情報が載っていた。
怖いのは、呼吸筋を冒されてしまうこと。
呼吸困難に陥り、最悪は死に至るというが、現在の医療では、薬を飲んでいれば殆んどないという。
が、いきなり症状が重くなるクリーゼというものを起こすと、突然悪化し呼吸困難まで起こすようだ。
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