社会復帰は家庭教師から

Neu(ノイ)

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一章:精神病×難病×家庭教師

家庭教師と生徒 03

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「んー、そうか? 嬉しいような、照れるような」

目に感情の籠らない椎名さんは、口角を上げるだけのぎこちない笑みを浮かべる。
俺は後ろを振り向いて、椎名さんの顔をまじまじと見詰めた。
黒い髪は少しだけ伸びている。
毛先が襟足に掛かる程、サイドの髪も、耳を少し越す辺りまである。
髪質は、見ただけでは解らないが、普通だろう。
爽やかなのは顔の造りの関係なのか、容姿は、キツくもなく柔らかすぎることもなく、カッコいいような普通なような、見た目は悪くなく良すぎもしない、親しみが持てる優しい顔立ちだ。

「椎名さんって、おじいちゃんおばあちゃんに良く声とか掛けられそうだね。なんか、安心する」

思ったことを口にすれば、頭を大きな手に覆われる。
がしがしとそのまま撫でられ、悪い気はしない。
へらり、と自然に口が弛む。

「何で解った? つぅ君、問題解らんの? 無駄口多い」

照れてるのか、椎名さんは目線を合わせてくれない。
つぅ君とは、俺の呼び名だ。
親しみを込めてそう呼んでくれる。
其れがくすぐったいような嬉しいような、気持ちがほっこりとする感覚に陥る。
俺は椎名さんとの時間を、意外と気に入っていた。

「んー、ちょっと瞼落ちてきたから休憩だよ。心なしか頭も重い。雑談ぐらい良いでしょ」

俺は苦笑を滲ませて額を数回叩いた。
先程から瞼を上げるのに必死になっていた。
瞼が落ちてくると、自然と眠気も襲ってくる。

「ああ、もう夕方近いしな。少し寝るか?」

椎名さんは腕時計を見て首を傾げた。
俺の病気は、夕方に症状が重くなり、休むと症状は改善されるのだ。
それ故に、怠け病と呼ばれることもあるらしい、周りからの理解が問われる病気だ。
椎名さんは、理解しようとしてくれている。
勿論、誰よりも理解してくれていた。
其れは、お互いに痛みを抱えた者同士だから解る心遣いだ。


 俺は上がらない瞼を必死で上げて、椎名さんに頷いた。

「ちょっとだけ、寝る。椎名さんは、どうする?」

椅子から立ち上がるも、足の力が弱くよろける。
よたよたとベッドまで歩き、ぼすんとダイブした。
俯いた状態で体がふわりと布団に包まれる感触に、もう瞼が上がらない。
それでも顔だけを椎名さんに向けて尋ねた。

「うん、俺も寝る。隣、お邪魔するよ」
「どーぞ」

その返答に体を横に転がし、スペースを作る。
とは言っても、シングルベッドである。
男二人は狭い。
体を横向きにさせて、時折二人で寝ていた。
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