アリスと兎

Neu(ノイ)

文字の大きさ
12 / 68
一章:不良アリスとみなしご兎

みなしご兎は孤独か否か 03

しおりを挟む


90度ぴったりに腰を曲げたお辞儀は、いつ見ても綺麗である。

「あー、オサダさん。いい加減、坊っちゃん呼ばわりはやめてくれ。俺、もう18だぜ?」

苦笑を溢しながら、片手で頭を掻く。
長田は曲げていた腰を、今度は垂直に伸ばし、表情を動かさないで淡々と言葉を返してきた。

「坊っちゃんが顔を見せてくれませんので、私の中ではまだまだお子様なんですよ。只今、食事を作っておりますが、召し上がられるのでしたら、お作り致します。どうされますか?」
「とにかく、坊っちゃんって呼ぶなよ。良いな、コレは命令だ。メシは、食う予定」
「坊っちゃんの命令は無効です。何故ならば、私が雇用契約を結んでいるのは、飽くまでも、ご主人様だからで御座います。百歩譲って、奥様の言うことは聞けたとして、坊っちゃんの命令まできくことは、業務内容に御座いません。因って、変わらずに坊っちゃんと呼ばせて頂きます。悪しからず」

ピクリとも動かない顔を見詰めて、鉄仮面かよ、とこっそり胸中でツッコミを入れつつも玄関に上がり、靴を脱いだ。
すかさず長田がその靴を靴箱に収めた。
無駄のない動きである。
長田も靴を脱ぎ、スッと無言で俺のスクール鞄を奪い取った。

「坊っちゃん、お部屋に運んでおきますので、始めに手洗いうがいを、お願い致します」

そう一言、一息で言い切った彼女は、宣言通りに俺の部屋の方向へ歩き出した。


 部屋の掃除諸々、全て長田がやっている。
今更、部屋を覗かれて恥ずかしいとは思わないが、流石にそのぐらいは自分でやりたい。
しかし、あれが彼女の仕事である。
文句を言っても、鉄仮面でかわされるのは目に見えている。
諦めて洗面所に向かった。




 洗面所は、玄関を左に進んだところにある。
無駄に広い白で統一された空間だ。
奥にはトイレも設置されている。


 蛇口を捻り、水を勢い良く出した。
両手を差し出せば、冷たさが伝わってくる。
石鹸は昔から固形石鹸だ。
何故なのかは知らない。
父親のこだわりだ。


 掌に白い物体を閉じ込め、泡立てる。
固形自身に着いた泡を流し、ケースに収める。
ゴシゴシと両の掌を擦り合わせ、指を組ませて指の間も擦ると、片手首に反対の手を移動させて掴む。
反対側も同じように洗い、泡を落とした。
とにかく、綺麗に洗わないと煩いのだ。
幼い頃の躾とは恐ろしい。
幾つになっても抜けない癖になってしまう。
潔癖症の両親を持った己を悔やんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

処理中です...