親友ラバー

Neu(ノイ)

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一章:親友の異変

罪悪感 03

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「物を投げるな。お前は幼稚園児か?」

キッ、と睨むも、光輝のヘラリとした笑みに流されてしまう。

「ごめんね、誡羽。それよりも、お掃除しなくっちゃ。お稚児ちゃんのOKも出たことだし、さ」

ぽんぽん、と頭を優しく叩かれる。
見れば、嵐が右手で合図を送っているようだった。
親指を立てている。
教室の半分は掃き終わったようである。
雑巾を床に落とし、他のクラスメイト4、5人と一緒に床を拭いていく。

「あ、そういや誡羽。今日、用事があって一緒に帰れないんだ。ガキ達と帰ってて」

隣で大人しく床を拭いていた光輝がいきなり声をあげた。
ガキというのは、クラスメイトの堀内 健(ホリウチ ケン)のことだ。
彼もまた光輝とは小等部からの付き合いで、ガキとは所謂あだ名である。
やはり、由来は知らない。
今は教室にはいないようだ。
他の場所の掃除当番なのだろう。

「ああ、解った。遅くなりそうなのか?」
「あー、んー、どうかな。わかんねえ。正直、メンドーだし、早く終わるように頑張る、かな」

清勝学園は、小等部四年から寮に入ることが出来、全寮制ではないが、寮生は多い。
誡羽と光輝も寮生であり、ルームメイトである。
光輝は片手で器用に雑巾を操りながら、もう片手で頭を掻いている。
珍しく眉が下がり困り顔だ。
黒い長めの髪がツンツンと跳び跳ねているが、ボサボサという印象はあまり受けない。
線の細い輪郭に切れ長の双眸。
すっ、と通った鼻筋に、ちょうど良く収まる唇。
綺麗ともかっこ良くも映る容姿だ。
其れだけで、どんな髪型でも似合ってしまうのだろうと想像出来た。

「鍵、一応開けとく」

光輝を見ないまま床を磨くことに集中しつつも、そう呟けば、慌てたように光輝の反対にあう。
何故か父親になりきっている。
今日は父親キャラらしい。

「其れはダメだぞ!? お父さんは許しません! 危ないんだぞ。男子校は、狼の溜まり場なんだ。誡羽みたいなウサギさん、一発アウトなんだよ?」

解ったね、と雑巾そっちのけで誡羽の両肩を掴み、ゆさゆさと揺さぶる。

「や、僕、ウサギじゃないし。女の子じゃないんだから、心配しすぎだろ。大体、光輝。雑巾触った手で触るなよ」

ぱし、と軽く弾くようにして光輝の手を叩く。
光輝はしまった、という表情をわざとらしく晒し、誡羽の肩から手を退けた。

「誡羽は、男子校来てから、まだ数ヶ月だろ? 俺、3歳からだから、もう10年男子校にいんの。レイプされて辞めた奴とか、いる訳だ。そいつも、まさか自分がレイプされるだなんて思ってなかったと思うよ。警戒は、何事に於いても重要ナンデス」
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