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一章:親友の異変
自室集合 03
しおりを挟む5分程度、そうしていただろうか。
ピンポーン、とチャイムの音が響く。
のっそりと立ち上がり、玄関に向かえば、鍵を解除して扉を開けた。
其処には、私服に着替えた、和志と健が並んで立っていた。
「お待たせ、カイっち! 京やんのとこ、一応誘いに行ってみたんだけど、まだ帰ってなかったんだあ。ゲーム持って来たからさ、三人でやろ!」
京やん、とは嵐のことである。
色々なあだ名があるようで、中等部からの編入組である誡羽にとっては、覚えるのも一苦労だ。
紙袋を気持ち持ち上げてみせる健。
中身はゲーム機だろう。
誡羽も光輝も、ゲームを持っていないのだ。
最近、レベルアップして、灰色から黒にカラーも変わったらしい其れは、重量もそれなりにあるようだった。
「ありがと、健ちゃん。重いだろ? 中、入って」
二人を招き入れてリビングのソファーに、左から健、和志、誡羽の並びで座った。
健はゲーム機をテレビに取り付けている。
聞けば、和志もあまりゲームはやらないらしい。
誡羽はキッチンまで移動し、冷蔵庫を開けた。
中を物色し首を傾げる。
「麦茶とぶどうジュースと、んー、コーラ。何れが良い?」
二人に声を掛けると、揃って「麦茶」と答えが返ってきた。
その息のぴったり度に、つい吹き出してしまう。
くすくすと笑いながらガラスのコップを3つ用意し、麦茶を注いでいく。
「やっぱり、夏は麦茶だよなあ。オレと佐倉の兄ちゃんは、ITEの麦茶が好きで、同盟組んでるんだ!」
機械とケーブルとの配線と格闘しつつ、健はきらきらとした顔で、何故か嬉しそうに宣う。
同盟ってなんだ、と疑問を抱くも、二人の関係は不思議なので、放っておく誡羽だった。
「ああ、光輝は昔からITEのお茶、好きだね。確か、佐倉家は皆してITE贔屓だよ。お姉さんも光君も。まあ、日本人で嫌いな人も珍しいか」
流石は、幼等部から光輝のお守りをしている和志である。
佐倉家に詳しいようだ。
因みに、光輝の姉は姉妹校の女子校、清和学園中等部に通っている。
名を稔(ミノリ)と言う、カッコいいお姉さんだ。
弟の光(ヒカル)は、誡羽の弟の由羽(ユウハ)と同い年で、清勝学園小等部にて同じクラスだと聞いた。
トレーにコップを乗せて、ソファーの前まで運ぶ。
ローテーブルに置くと、早速、健の手が伸びてきた。
「いただきまーす」
「ありがと、誡羽君。頂くね」
和志もコップを手に取るのを見てから、誡羽も自分の分を取った。
そして、ごくごくと一気に飲み干す。
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