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一章:親友の異変
異変×噂=告白 10
しおりを挟む悶々としている内に、校舎を潜り抜け、靴箱までやって来ていた。
上履きを取り出して、靴と履き替える。
脱いだ靴をしまい、教室のある階まで行くために階段を昇る。
「聞いた? 光輝様が……だって!」
「えーっ!? そうなの? ショックっ!」
廊下に出ると、他のクラスの生徒がヒソヒソと話しているのが耳に入った。
光輝様、と言うのは、やはり光輝のことだろうか。
肝心な部分を聞き取れなかった。
なんだろう、ともやもやした気持ちを抱え、教室までの道を歩いた。
まだ朝早い教室。
いつもならば、絶対に起きていない時間帯である。
誡羽は、扉の前で深呼吸をする。
そろそろと腕を伸ばし、スライド式の扉を横に引いた。
朝日の光に照らされる教室は、しーんと静まり返っていたが、その中に一人だけ、悠然と存在していた。
その人間は、光輝の席に座っている。
綺麗と格好良いを足して2で割った、良いとこ取りの容姿。
調った顔をしている癖に、髪は寝癖が着いたままで、それさえも綺麗に見えてくる美形マジック。
光輝がいた。
ほっ、と安心して一歩教室内に足を運ぶ誡羽だったが、光輝の顔が冴えないことに気が付いた。
「おはよう、光輝」
「ああ、おはよ。俺、ねみぃから寝るわ」
自分の机に足を運びつつ、光輝に声を掛けるも、素っ気なく彼は机上に伏せてしまう。
あれ、と違和感を感じる。
何時もならば、五月蝿いぐらいにくっついてくる光輝である。
もしかして、と思考がネガティブになっていく。
避けられているような気もする。
だが、本当に眠いのかも、と気分を持ち直し、誡羽は自分の席に座り、本を取り出した。
朝のHRまでの間、読んでいようと本を開く。
静寂が支配する教室の中で、誡羽が本を捲る音だけが、微かに響いていた。
がらっ、と扉が開く音で静寂に終わりが訪れる。
「あれ、珍しいね。この時間にいるなんて。おはよ、誡羽君。……今日は佐倉がおねむかあ。なんか噂とか大変だもんね。疲れてるのかな?」
入って来た人物は、誡羽を目にすると驚いたと目を開いてみせ、その後、机に伏せる光輝に気が付き、小首を傾げた。
彼は扉付近の自分の席に鞄をそっと置き、椅子を引けば腰を下ろす。
クラスメイトの天星 響だ。
あまり話したことはないが、良く光輝と話しているのを見る。
彼もまた幼等部からの知り合いらしい。
黒髪に団栗眼が可愛らしい、優しさの滲み出る微笑みは癒し系のようだった。
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