親友ラバー

Neu(ノイ)

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一章:親友の異変

異変×噂=告白 13

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「おはよう御座います。すいません、今日もお邪魔します」
「ああ、高飛か。おはよ。佐倉の件、どうだった?」

準備室はあまり陽が当たらない。
薄暗い部屋の真ん中に、大きなテーブルが一つあり、司書は窓側の椅子に座っていた。
この準備室は、図書室のカウンター側に出る扉と、図書室入口前に出る扉とがあり、窓側はカウンター側の扉から入った方にある。


 誡羽は司書に頭を下げて、目の前の四角い形をした木の椅子に腰を下ろした。
司書から光輝の名が出て、肩がピクリと跳ねる。

「昨日は、友人の所に泊まったみたいで。朝、教室で会いました」
「そうなんだ? 無事で良かったね。高飛、読書してる? 新書にラベル付けてるから、何かあったら呼んで」
「あ、今日は持って来たので、此処で読んでいても良いですか?」
「うん、勿論。一人だと寂しいから、高飛が来てくれて良かった」

誡羽は脇に抱えていた文庫本をテーブルの上に置いて司書を窺う。
彼は微笑んで頷いてみせた。
確かに、この準備室は薄暗くて、一人だと物悲しくなってくる。
誡羽も普段は陽の当たる図書室にいるのだが、この日は一人で居たくなかった。


 司書からの了承を得て、文庫本を開き、栞の挟まっている場所から読み始める。
図書室で借りている本だ。
此処に通うようになってから、読書量は増えた。
やることと言えば、勉強か読書ぐらいしかないからである。
元々は、其処まで本を読む訳ではなかったが、司書や光輝も色々と本を薦めてくれるので、最近では暇さえあれば本を開いていた。
今読んでいるのは、太宰治の人間失格である。
光輝から薦められたのだが、僕にはさっぱり理解出来なかった。
否、理解したくないのかもしれない。
人間の闇の部分を見てしまうのは、何にしても恐ろしい。
とても頭が痛くなる小説だ。
司書には、「走れメロス辺りから読んだ方が良いんじゃない?」と言われたこともあるが、光輝が薦めてくれたので頑張って読んでいる。


 一時間程読み進めたところで一息吐いた。
顔を上げれば、司書の前には新刊だろう真新しい書籍が積まれている。
作業は終わったのだろう、今度は紙に何やら書く作業をしていた。
恐らく、校内に配る図書新聞の作成だろう。
月に一度発行される新聞で、新刊やお薦めの本を紹介しているものだ。

「今月は新刊多いんですね」
「うん、夏休みに入るからね。課題図書もあるし。どう、人間失格進んでる?」

話し掛けると司書の目線が誡羽に向いた。
すぐに視線は用紙に戻っていったが、問いを掛けられる。
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