自傷

Neu(ノイ)

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切り刻む度に浮かぶのは、貴方のことでした

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 一緒に死にませんか。


 届いたのは一件のメール。
何度目か解らないメール。
添えられている画像は、腕から血を垂れ流しているもの。
鋭利な刃物でズタズタに切り裂かれていた。


 リストカットだとか。
アームカットだとか。
そんな風に呼ばれる自傷行為をあの子が始めたのは、いつからだったか。
溜め息が口から溢れ出す。
携帯を操る指がダルい。
あの子を救う術など知らない、解らない。


* * * * * *


 送ったメールが返ってきた。
一緒に着けた画像は見てくれただろうか。
ずくずくと痛む腕が、甘く疼いた。
何度も何度も切り着けた。
刃先が皮膚の上を走る度に、柔らかい皮は意図も容易く破れて、真っ赤な液体が溢れてきた。
それは、痛みと同時に達成感を僕に与えてくれる。


 僕の傷が、見えますか?
僕の苦しみが、解りますか?


 こうやって、目に見える形で現さないと、他人は気付いてもくれない。
平気で人は人を傷付ける。
僕の痛みなど、誰だって解らないのだ。


 それだから僕は、心が傷付いた分だけ、見えるように肉体を傷付けることにした。
これで解るでしょう?
僕がどれだけの傷を抱えてきたのかが。
貴方にも見えるでしょう?


 カッターの刃が、体を蹂躙する度に、僕は貴方を思い浮かべた。
貴方の顔を浮かべながら、腕をズタボロにした。
住む場所が変わっても、苗字が変わっても、貴方のしたことは許されないのだと。
思い知らせるために、画像を添えて何度も何度もメールを送った。
一緒に死にませんか。
一文を付け足して送った。


 ねえ、お父さん。
貴方が僕にしたことが、どれだけ罪深いのか、解ってくれましたか。
僕の体を弄んで、僕の人生を台無しにして、貴方一人でのうのうと生きていくつもりなのですか。


 ねえ、お父さん。
貴方は許されない罪を犯したのです。
償い切れない罪を犯したのです。
僕と一緒に、死んでもくれないのですか――?


* * * * * *


 妻と別れた後に、彼女が自殺したと風の噂で聞いた。
あの子は児童施設に預けられていると知った。
私の責任であることは重々承知の上で、何も出来なかった。


 暫くしてから、あの子からメールが届くようになる。
自傷の画像も一緒に。
一緒に死にませんか、と。


 私は、幼かった我が子を抱いた。
元々、女性にはあまり興味がなかった。
気持ちを押し込めて、妻と結婚し、子供が出来て。
可愛いと思えば思う程に、劣情は育っていたのだろう。
あの子が小学生に上がった頃に、私の劣情は爆発し、我が子を無理矢理抱いていた。
何年も妻にバレないように、息子の体を貪った。


 しかし、報いはやってくる。
バレてしまった。
すぐに彼女とは離婚した。
息子の親権も妻に持っていかれた。
当然ではある。


 その後、何があったのかは解らない。
突然に息子から届いたメール。
私は気付いたのだ。
あの子を救えるのは、私だけなのだ。


 その日、私は息子に会いに行った。
施設に赴き、息子を引き取りに行った。


 その日、私と息子は、最期に体を重ねて、熱く絡まり合い、ぐちゃぐちゃに繋がった。


 その日、私と息子は、最期の最期で、気持ちを通じ合わせて。
そして、私と息子は、最期の接吻を交わして、お互いに意識を手放した――。
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