後輩の屈折した恋心と鈍感な先輩

Neu(ノイ)

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二章:変化の夏

なな

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ぶつくさと文句を垂れる彼を横目に、撒水を終えると水を止め、ホースを元に戻した。
花壇に足を向ければ、羽李は仏頂面で此方を睨んでいる。

「帰りましょうか。すぐに乾きますよ、この暑さてすから」

それを無視し、軍手を外すと、抜いた雑草を入れたビニール袋を手に、木工室に向かい歩き始めた。

「そういう問題じゃねえよ! 宮原、お前覚えとけよ」

後ろを着いて来る羽李に充足感を感じながら、神流は校舎の中に入っていくのだった。




 頭から水に濡れたため、持参したタオルもびしょ濡れになっている羽李が目の前で途方に暮れている。
体を拭こうにも拭く物がないのだ。
神流は満足気にクスリとほくそ笑んで、自分の鞄の中からスポーツタオルよりは少し小さいタオルを取り出した。
それを投げれば、羽李の頭の上に、ぼすん、と覆い被さる。

「貸して差し上げますよ。感謝して下さいね」
「お前のせいでこうなったんだ! 感謝なんかするもんか」

視界がタオルに覆われて、反射的に屈んでしまった体勢から体を戻しながら、両手でタオルを頭に当てて勢い良くガシガシと髪の毛を拭いていく羽李は、ご機嫌斜めな様子だ。
それさえも神流は愉しいとばかりに笑っている。

「先輩、この後お時間あります?」
「なんで」

不意に尋ねる神流を警戒するように羽李の首が傾く。
腕は濡れた制服と共に上半身を拭っていた。

「お詫びにアイスでも奢りますよ。ほら、裏門の方にお店あるじゃないですか。どうです?」
「行く! あそこのソフトクリーム、美味いって評判なんだ。一度食べてみたくてさ。宮原はもう食べた?」

理由を聞いた途端に笑顔を振り撒く羽李に、双眸を眇めて首を横に振る。
神流は寄り道すらしたことのない真面目な生徒だ。
自分で誘ったことに驚きながらも、夏休みだからと自身に言い訳をする。

「僕、親が厳しいので寄り道とかはしたことないんですよ。部活帰りに行かないんですか?」
「あー、解るかも。たまには息抜きも大事だぞー? 部活終わりはクタクタでそれどころじゃねぇんだわ」

うんうん、と頷いて神流に屈託ない笑みを向ける羽李は、既にご機嫌になっている。
全身を拭き終えたのだろう羽李に手を差し出せば、首をぶんぶんと左右に振られてしまった。

「洗って返すよ。それより、早く行こうぜ!」

羽李は濡れそぼったタオルを何の躊躇いもなく鞄にしまい、そわそわとした様子でそれを持ち上げた。
神流は苦笑を零すも、鞄を手に、どことなく嬉しそうに扉に向かう。
朝まで嫌っていた先輩と肩を並べて木工室を退出するのだった。
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