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四章:別離の冬
に
しおりを挟む吐息は体外に出てすぐに色を灯す。
白く朧気に現れて消えていくその気体は、まるで今の神流の気持ちのようだった。
確かに其処にあるのに、掴むことすら出来ず、存在を確認することでさえ、条件が整わなければ無理なのだ。
今度は大きく溜息が溢れ落ちた。
会いたい、会いたくない。
顔を見て、存在に触れたい。
己という存在を彼に刻み付けたい。
笑って欲しい、泣かせてみたい、自分だけを見詰めて貰いたい。
気が付けば、本来あまり欲のない神流の心の中は、羽李への欲望で一杯になっている。
それがまた苦しくて、誤魔化すように唇を噛んだ。
会えない分、欲望だけが膨らんで辛かった。
一つ一つ、欲望を鎮めるように願望を紙に書き綴ったりもしたが、効果は無いに等しい。
悶々とした気持ちを持て余し、空を見上げれば青く澄み切った晴天が拡がっている。
鬱々しさとは正反対の景色に、気持ちは晴れるどころか曇っていく。
寒々と枯枝を晒す木々の中を進み、神流は学校にと辿り着くのだった。
神流がここまで思い詰めているのにも理由がある。
卒業式は一週間後に迫っていた。
自由登校でご無沙汰だった3年生も、明後日には練習に顔を出す。
ずっと会えなかった羽李に会えるかもしれないと言う期待が、予想以上に神流を苦しめていた。
会いたい、会うのが怖い、それでも、存在を確かめたい。
ただただ、羽李と言う存在を求めている。
それだけのことなのに、それだけのことが、なによりも難題で叶えられない願いの如く神流を動けなくしてしまうのだ。
会えるかもしれないのに、今の神流では駄目なのだと、他でもない神流自身が痛感していた。
通常授業が終わり、神流は委員会の教室である木工室に赴いていた。
前の委員長の宅福 史壱(ヤカネ フミイチ)から引き継いで、神流は新しい委員長となった。
春休みに向けての準備や引き継いだ諸々の仕事を一人で淡々とこなしていく。
静寂の中で黙々と作業をするのは好きだった。
羽李が良く座っていた席で、種の仕分をする。
女々しいと解ってはいても、彼に出逢った春を思い出してしまう。
もうすぐ冬も終わる。
羽李との別れがやってきて、そのまま二人の人生は交差することなく進んでいくのかもしれない。
寧ろ、そちらの可能性の方が高い。
解っているのだ。
このままでは終わってしまう。
しかしながら、彼の人生にどう関わればいいのか、解らない。
解っているのに、解らない。
掴んでいるのに、掌には何もない。
何も残せないのだ。
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