双子と他人と異常性

一章：調教スタート

ハジマリ 01

　僕達は二人で一つの生き物だと思っていた。
何処で間違えたのか、さっぱり解らない。
どうして、僕以外の人間との未来を選ぶのかも、僕には理解出来なかった。
一つだった僕達は、別々の生き物になってしまったのだ。


そんなのは嫌だから。
また一つになろうね、お兄ちゃん――。


１.アパートにて
【ハジマリ】


　双子なのに似てないんだね、と昔から良く言われた。
一卵性双生児は似ている。
二卵性双生児は似ていない。
世間の一般的なイメージは簡単にこんな感じだろう。


　確かに、一卵性双生児は、一つの卵子が二人の生き物になっていくため、遺伝子は全く同じだと言う。
逆に二卵性双生児の場合は、二つの卵子にそれぞれ精子が到達するため、遺伝子は異なる。


　似ている双子は似ている。
似ていない双子は似ていない。
当人からすれば、それだけだ。
似ていようが似てなかろうが関係ない。
ただ大切なことは、二人で一つなんだということ。
同じ時間を同じお腹で過ごした同士であり、片割れだ。
遺伝子が一緒も何もない。
それだから、昔から下らないことを吐（ぬ）かす人間が大嫌いだった。
双子は似ていないといけないのか、と問うてやろうと何度思ったことか。


　僕が兄に求めていたのは類似性ではないのだ。
同一性とは見た目や性格など、目に見えるものだけではない。
精神がどれだけ繋がりあっているかでもある。
僕は兄とずっと同じで居たかった。
似ているか似ていないか、そんなちっぽけな問題ではない。
兄と同じ人生を歩む同一性が、僕は欲しいのだ。


＊　＊　＊　＊　＊　＊


　今日も一日部屋の中。
首輪に繋がれている鎖の先はベッドの足に金具で固定されていて、部屋からは出られない。
どうしてこうなったのかを考えても、答えなど出なかった。


　双子の弟は、いつしか別の人間のように何を考えているのか解らなくなった。
ＡＶでオナニーをしているところを見付かれば、どうして一人でするんだと怒られた。
自慰も一緒にしたがる弟に恐怖を感じたのを覚えている。
中学の頃だ。
思えばあの時から少しずつ可笑しくなっていたのかもしれない。


　弟と距離を置きたかった。
半ば騙すようにして違う高校を受けた。
酷く詰られたが、どうすることも出来ないのだろう、僕は自由な時間を少しだけ手に入れて浮かれていた。