23 / 36
一章:学園の闇
失ったもの 07
しおりを挟む皆と別れた後から、悠理はだんまりだ。
いつも騒がしい彼女にしては珍しい。
水紀のことを案じているのだろう。
握られている手には、いつもよりも力が籠められている。
「ねえ、水紀ちゃん」
どうしようか、と水紀が悩んでいる時だった。
悠理の口がおもむろに開いた。
「なあに、ゆうちゃん」
「あのね、ユウリ、前から気になってたんだけど。どうして、家族でバラバラだったの?」
聞いて良いのかな、と不安な色を目に灯しながらも、それでも思い切ったように問う悠理に、水紀は息を呑んだ。
いつかは聞かれるんではないかと、そう覚悟は決めていたことだ。
それでも、あまり話したいことではなかった。
俯くと灰色のコンクリートが目に入る。
力なく、うん、と返事を返し、顔を上げた。
悠理の瞳を見詰め、微笑みを向ける。
心配そうな彼女に、無言で大丈夫だよ、と伝える。
「今は、だいぶ風土も変わったけど。昔はね、双子とか三つ子とかね、一人のお腹から何人も産まれると、獣と同じだって言われて、忌み嫌われていたんだよ。田舎では特にね。僕の家でも、厭われていて。物心つく前から、別々に他の家に預けられて育ったんだ。それが、バラバラの理由、だと思う」
淡々と告げていくも、やるせなくなった。
一番親に甘えたい年頃に、水紀も雷紀も、家族とは一緒にいることが許されなかったのだ。
当然、育ててくれた人達には感謝している。
それでも、血を分けた家族と過ごせないという現実は、幼い双子にとっては酷なものだった。
悠理には難しい話なのだろう。
唸りながら頭から湯気を出しそうな雰囲気である。
「水紀ちゃん。今、皆で一緒にいられるようになったのは、なんで?」
考えるのをやめて、新しい質問をぶつけることにしたらしい。
彼女らしいと言うか、面白い。
悠理と居ると、元気になれるのだから不思議だ。
「一番双子を嫌っていた大婆様が、亡くなられたから。それに、雷紀もアメリカで危ない状況だったらしいし。父さんがね、呼び戻したんだよ。まあ、彼奴にしたら、今まで他国に放り出しておいて、今更家族ゴッコなんか、って思っているんだろうけど。僕は嬉しいんだよ。母さんと一緒に居られる。やっぱり、母親が恋しかったからね。雷紀を恨んだこともあったよ。母さんを取った、って。まだ小さかったから」
「えっと、あれ。他の家に預けられてて。そのあと……?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる