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一章:腐敗した恋心
無愛想なクラスメイト 05
しおりを挟む無言で立ち去ろうとする榛伊を溜息で見送った愛生の肩が、がくし、と落ちていく。
「あっ、お騒がせしましたー! 気にしないで? んじゃ、また明日ねー」
教室内の視線を一身に集めていることを漸く自覚した愛生の手が、ひらり、と宙を舞い、彼も教室から消えて行った。
* * * * * *
寮の部屋に辿り着いた忠樹は盛大な息を吐き出しては目の前の状況を眺める。
部屋のど真ん中で天流青と吾沙が睨み合っているのだ。
喧嘩でもしたのか、と傍観者を決め込み自分の机に向かおうとした。
「タッくん! 無視しないで!」
唐突に背中から抱き着かれ、前のめりに数歩進んだ。
吾沙の机に手を着き何とか転倒を免れる。
「ルウト、いきなりタックルすんなよ。いってぇだろ」
「ごめん、タッくん。でも、この状況を見て傍観しようとしただろ! おかえり!」
慌てて忠樹から離れつつも頬を膨らませ、怒った声を出している。
体勢を立て直した忠樹は苦笑を浮かべ、吾沙の机の奥にある自身の机上にスクール鞄を放った。
「ただいま、ルウト、アーサー。また喧嘩か?」
仕方なく問い掛け、首元に手を伸ばす。
ネクタイを緩めながら二人に視線を投げる。
「いや、喧嘩ではない。この馬鹿者を躾けていただけだ」
ふん、と鼻息を荒げ眼鏡を押し上げる吾沙に天流青が「なんだよお」と唇を尖らせた。
「何だ、とは何だ。節操なく女子に絡んで困らせている猿以下の馬鹿から女子を保護しただけだろう」
顔色一つ変えずに事のあらましを話す吾沙へと何故か抱き着きにいく天流青は足蹴にされ、わざとらしく泣き真似をしている。
「別に節操ない訳じゃないし! 困ってないし! ちょ、ちょっと、戸惑ってたかもだけどさ! なんだよ、アーサーの妬きもちさんめっ!」
顔を両手で隠した状態でチラチラと指の隙間から視線を寄越す天流青の脛を容赦なく蹴り吾沙は腰に手を当てた。
仁王立ちが恐ろしく似合っている。
「誰が誰に妬きもちを妬いた? 言語能力の劣る下等生物が適当なことを言うな」
言い争っている二人を放置し、忠樹はブレザーを脱いでいく。
仲が悪いように見えて、これでコミュニケーションを取っているのだから、忠樹に入り込む余地などない。
寧ろ、傍観者でいたい。
ふと思い出したのは無表情な男のことだった。
何もかもを拒絶しようとしていた榛伊の顔が脳裏にちらついた。
クラスメイトだからと言って近付く必要もない。
彼自身が他と交わることを厭うているのなら、接点を持つこともないだろう。
古傷が痛む気がして忠樹の口元に嘲笑が浮かぶ。
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