性教育はコッソリと

Neu(ノイ)

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一章:教育されてます!

再会は最悪の始まり 09

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一瞬躊躇するも、覚悟を決めて一気に下ろし、制服のズボンに履き替える。
恥ずかしさで顔が熱くなった。


 努めて無心でジッパーを上げた。
転がっている、先程、羽李の手首を縛っていた赤いネクタイを拾い上げて、手早く結んだ。
こんなことはさっさと終わらせてしまおうと、思考を切り替えたようだ。
ブレザーも羽織り終え、どうだとばかりにドヤ顔で神流を見る羽李は、やはり何処か馬鹿なようだった。

「おら、これで満足か? 神流センセエ」
「ええ、そうですね。似合ってますよ、先輩」

双眸を眇めて、羽李の全身を眺めた後、神流はおもむろに羽李との距離を縮めていった。

「羽李さん。床とベッドとソファー、何処が良いですか?」
「は? 何がだよ。寝るなら断然ベッドだけど。って、おい! 何すんだよ、降ろせバカ野郎!」

質問を投げ掛けながら近寄ってきた神流に体を持ち上げられ、羽李は神流の肩の上に担ぎ上げられてしまう。
暴れるも、細い体の何処にそんなに力があるのか、神流の体はびくともしなかった。
神流は居間を出て廊下を進み、階段を登っていく。

「おい、宮原! 何処行くんだよ?」
「僕の部屋ですよ。ベッドが希望のようなので」

そう言って、神流は二階を上がって右手にある扉を片手で開けた。
中に入ると、躊躇なく羽李をベッドの上に放り投げる神流。
部屋の中は、純和風な家屋にあって、此処だけ洋風な造りだ。
扉に入って目に入るのは出窓。
そして、その前にシングルベッドがある。
左側に学生が使う勉強机、右側には壁一面に本棚が置かれている。
中には、純文学から専門書、そして、彼自身の作品だろう、BLの本でびっしりと埋められていた。


 ぼすん、とベッドに体が落ち、羽李はその衝撃に反射的に目を瞑る。
痛くはないが、一体何が起こるのか、予想もつかない恐怖で、体は横になったまま動かなかった。
ぎし、と軋む音が響く。
目を開ければ、目の前に神流の顔がある。
羽李にのし掛かるようにして、顔の横に手を着いている神流を、まじまじと見詰める羽李は、状況を把握出来ていない。

「な、何すんだよ?」
「羽李さん。童貞ではないですよね? 人間が布団の中ですることなんて、一つしかないですよ」

いやいやいや、と羽李は頭の中で否定の言葉を並べ立てる。
口に出ていかないのは、あまりの展開に驚いているからか、羽李は一杯一杯だった。
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