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一章:幸せを知らない男は死にたいらしい
春の日の、拾いもの 05
その瞳が気に入らなかった。
幸在を見ているのに、その実、彼の眼の向こう側には、サチに無体を働いた人物が居着いているのだ。
水を垂らす洗ったばかりの毛先が肩に着く茶髪を、わしゃわしゃ、と乱暴に掻き混ぜる。
わっ、わっ、と慌てている様子を眺め口角を歪めた。
「そう呼びたいなら好きにしろ。サチ、手を退かせ」
気付かぬ内に自身の下肢を手で隠している青年に冷たく言い放ち、ボディータオルを濡らしていく。
ボディーソープを垂らし、くしゅくしゅ、と擦り泡立たせると、もこもこ、と白い雲が出来上がった。
あんなに嫌がっていた癖に、ほわほわ、の泡を肩に乗せると驚愕に目を見張り、股間を押さえたままで何度も幸在と泡を交互に見遣る。
なんとも間抜けな様に、ふっ、と吐息を漏らしていた。
「ふっ、ふわふわ、やね? オレ、四角いのしか見たことないんよ。固くて何にもよくないねん。ほわほわ気持ちええです。これ、全身にやるんですか?」
ビクビクとしながらも自分の肩に片手をやり、泡を突付いているサチの身体に雲を纏わり付かせたタオルを這わせ、上半身を泡だらけにしていく。
未だに言い付けを守らず片手で下半身を隠している青年を後でどうイジメようかと考えつつ、今は包み込むようにして腕から胸部から腹部から背部を泡で擦る。
真っ茶色に汚れた泡を流し、また泡で洗いを三回繰り返す。
その間、興味深く泡を観察し、格闘するサチに苦笑が浮かぶ。
ふーっ、と息を吹き掛けた途端に泡が飛び、幸在の胸部に付着した。
「おい、バカ犬。何を暢気に遊んでんだよ。さっさと手を退かせ。洗えない」
ぐい、と泡と戯れている片手を掴み、長い爪と皮膚との間も洗っていく。
反対側の手も容赦無く下半身から引き剥がし洗おうとすれば身を捩り抵抗を示してくる。
ぎろり、と睨むと大人しくされるがままになるが、矢張り下半身は見られたくないようだった。
「……痛くないか?」
しゃがみ込んで下肢に視線を移していけば、それも納得してしまう程に彼の肉体には痛々しい傷痕が残っている。
上半身と同じように埋め尽くされる火傷痕と傷痕は、男性器にも及んでいた。
陰茎に引き攣れた痕が幾つも走り、傷痕と傷痕の間は赤く爛れている。
見ているだけで自身の股間が痛くなりそうで眉を顰めた。
「だ、大丈夫、です。昔の傷やから。……気持ち悪いやろ? やっぱり、自分で洗います」
往生際悪く幸在の手からタオルを奪おうとする青年の手を避け、腰から下を黙って泡塗れにする。
太股に膝小僧を通り脹脛を撫で、足首、くるぶし、甲と足裏を丁寧に洗い上げては流し、また洗う。
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