34 / 47
一章:幸せを知らない男は死にたいらしい
存在しない男 16
「おやすみです、ユキさん」
腕の中で身を寄せてくるサチの首に吸い付くと「んへ?」と間抜けな声が上がる。
満たせない欲をぶつける代わりに自分の痕を青年の体に残した。
「ん、っ、ユキ、さ、ん、擽ったい」
顔を上げ、ふへへ、と笑い声を漏らすサチの頬に唇で触れる。
横向きで抱き締めた男の腹を撫ぜて笑った。
「抱き心地わりぃな。もっと肉、つけろ」
骨の浮く肋を寝間着の上から指先で辿り、額に口付ける。
お返しのように幸在の頬に唇を触れさせ、照れた顔で笑う青年の体中を舐め尽くしたくなった。
若い性を持て余しても、それでも幸在は何も知らないサチに手を出すつもりはない。
行為だけならば、無理矢理に犯されてきたのだろう。
身体を重ねる意味も知らず、愛も与えられず、ただ乱暴に性処理玩具として玩(もてあそ)ばれてきたと推察された。
だからこそ、自分の想いだけで抱いてしまうのは時期尚早だと自身に我慢を強いる。
サチから幸在を求めてこない限り、性的に触れることはしないと、少年は堅く心に誓っていた。
腕に収まる愛しい存在を感じながら眠りにと落ちた幸在の寝顔を眺め、男も視界を閉ざす。
優しく触れてくる温もりを知らないサチにとって、少年が齎す温かさは未知のものだった。
甘えることを知らなかったサチは、その温もりを必死で掴んでいた。
『死』とは遠い場所にある楽園に思えて、青年の胸の内は、様々な感情に埋め尽くされる。
「オレ、死ななくてもええんかな? ユキさんとおるの、楽しいけど。オレ、おっちゃんとこ行かんでも許されるんやろか?」
楽しい、嬉しい、それなのに、サチの心には寂寥感と罪悪感がぎっしりと詰まっている。
静かに眠る少年の首に腕を回し抱き着き、彼の鎖骨に額を押し当てた。
微かに届く、とくとく、と鳴る心音が、少しづつ青年の気持ちを落ち着かせる。
「オレ、ユキさんと生きてもええの?」
そっ、と響いた問い掛けに答えるものは何もなかった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話