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一章:幸せを知らない男は死にたいらしい
閑話:ユキさんとすぅぱぁ 02
今日は特売で安いから多目に買うのだと言う。
冷凍して使う、と教えてくれたが、サチにはよくわからなかった。
野菜を選び、調味料をカゴに投入し、その度に簡単な説明を受ける。
お菓子売場に行くと、甘い匂いで幸せな気分になった。
煎餅と和菓子の袋菓子をカゴに入れた幸在は駄菓子コーナーの前で立ち止まり、青年を窺い、また駄菓子を見遣る。
「サチ、五個までなら買ってやる。いいか、一個、二個、三個、四個、五個、だ。好きなのを選んでこのカゴに入れろ」
徐に手渡されたのは小さな子供用のカラフルなカゴだった。
幸在の手を離し水色のカゴを受け取る。
ぼんやり、と棚を眺めるが、何がなんだかわからない。
「ど、どれが、美味しい、ですやろか?」
戸惑いに視線を彷徨わせ、隣の少年を見上げた。
彼は仏頂面で「さあな」と言うだけで、何も教えてはくれない。
「俺も駄菓子はあまり食べたことがないんだ。直感でいいから選べ」
えと、えと、と目についた飴玉を「一個」と口にしてカゴにと入れる。
次は二個、と頭の中で覚えたばかりの数を唱え、可愛らしい動物のイラストが描かれたラムネをカゴに入れる。
「これで、二個。次、三個?」
んと、んと、と首を左右に揺らし、サチの手はパンダの形をしたチョコ菓子に伸びていく。
「四個」
パンダの絵がついた縦長にパックされている肉塊を一つカゴに入れ、最後だ、と訳もなく気合いを入れた。
果物の絵の小さな箱を手に取り左右に振ると、がしゃがしゃ、と音がする。
「これで、五個。え、選びました! オレ、オレ! 五個、選んだ!」
それもカゴにと入れ、幸在を仰ぎ見る。
双眸を細めて愛しそうに口端を弛めている幸在と目が合った。
少年と身体が触れ合っていないことが寂しくなり、幸在の腕に片腕を絡ませしがみつく。
「サチ。ちゃんと数えられて偉かったな」
髪を撫でられるのが心地良くて、すりり、と頬を擦り付ける。
「オレ、もっと色んなこと、知りたい」
知らなかったことを知れることに胸が躍る。
わからないことに名前がつき、明確になっていく。
それはとても楽しかった。
「サチ」
耳元に吐息を感じる。
擽ったさに身を揺らし少年の腕から離れた。
途端に手を取られ、ぎゅう、と握られる。
「帰ったら一緒に麻婆豆腐作るぞ」
歩き始める幸在に、ぎゅう、を返して隣を進む。
少年がくれる温もりが、嬉しくて切なかった。
この温かさは受け取っていいものなのか、青年にはわかりそうにない。
わからないままで、ただ傍にいたい、と願っていた。
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