CHILDREN CRIME

Neu(ノイ)

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一章:出逢イハ突然ニ

再会 07

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何やら考え込んでいると思えば、記憶を辿るように内部事情をスラスラと口にする仏頂面に渋面を見せた。
彼の情報網の広さと正確さにはいつも驚かされる。
驚愕を通り越して呆れる程だ。

「チユが昨日、クラスメイトに届け物をしたそうだ。不登校児のクラスメイト。リストカットをしていた。記憶が過ぎって頭痛がする。そう訴えてきた。チユが口にしたクラスメイトの苗字が、粟冠、だったんだ。珍しい苗字だから、まさかと思って下の名前を聞いたら、粟冠事件の息子と同じ名前だった。もう会うな、と言ったら、友達になりたいんだ、と訴えてくる。……惹かれてしまうもの、なんでしょう、先輩。先輩と逢った時にもチユは、はじめから先輩を気にして慰めようとしていた。先輩もチユに何かを感じていた様子でしたよね」

宏哉の茶化すような問い掛けに答えを返していく途中、震えている綾吾に目線を投げる。
彼は戸惑いを隠すことなく逡巡した後で、小さく頷いた

「そう、だな。彼奴、俺の目が自分と似てる、とか言ってたかな。意味は俺にも解らないけど、まあでも、感覚的には理解してんだよ。俺もチユのこと、近いって感じるからさ。遺された人間同士の何か、なんだろうかね。……でも、俺の時には思い出しそうな素振りは見せなかったぞ? 状況的には、その息子より俺の方が近いだろ。それに、この七年間、一度も記憶が蘇りそうな気配もなかったんだよな? 一体、息子の何に反応したんだ?」

幼少期に家族を目の前で殺された綾吾は、家族に遺された知有を出逢った時から弟のように可愛がっている。
知有もまた、綾吾を兄のように慕っていた。
少し顔色の良くなってきた彼は目蓋を閉ざし考え込んでいる。

「そういえば、七君と間違えられた、七君と一度会ったことがあるらしい、と話していましたね。関係あるのか定かではないですが。児相(児童相談所)に残されている資料には、七君からも身体的暴力を受けていたのではないか、とありました。……記憶に繋がるとしたら、七君絡みなのかもしれません。チユの記憶が戻らない限り、あの日何があって一家心中なんてことになり、チユだけが取り残されたのか、解らないですから。チユが前を向くためには記憶を取り戻すことが必要だと思う反面、チユには酷なことだとも思うんですよ」

ホワイトボードの前に座る部長が欠伸を片手で隠しているのを横目に甥の姿を思い描いた。

「あのお。坂中先輩の甥御さんって、記憶がないんすか? 児相ってことは、虐待受けてたってことっすよね?」

恐る恐るといった感じに挙げられた葉月の片手に視界を移す。
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