私鬼戦記 禁断の魔方陣とカエルに変えらし者

京間 みずき

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一四話 蛇骨の洞窟

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 柚華は、七色に光る小石を受け取ろうとしない、いや、簡単には受け取れないと、わずかに困惑の顔をし、思い切って半次郎に話しかける。

「半次郎君、一緒に行かない」「蛇骨の洞窟に」「一緒に来て欲しいの」
 この時、柚華の顔は、どこか恥ずかしいそうに見えた。


 すると半次郎は、柚華の目を見て、ゆっくりと話し始める。
「おらっちも」「蛇骨の洞窟に行きたい」「自分の手で、お父様を元の姿にしてやりたい」「でも・・・」


あちらこちらで、まだ焦げぐさい臭いが残る中、日が沈み江戸の町を、闇が支配する時間へと変わり始める。


「病で伏せているお母さまを、置いては行けない」

 柚華は、少しがっかりとした様な顔を見せる。

 「頼む、この石を預かってくれないか?」「おらっち、柚華ちゃんにしか頼め無いんだ」
 
 半次郎は、再び小石を柚華に向かって差し出すと、暗闇の中ほのかに七色に光る。 あの時、半次郎が流した一粒の涙が、今柚華の心に染み渡る。

 柚華は、この石を手にする事の重みを知りつつも、覚悟を決める。
 
 
 「しかと受け取った」「貴方はんじろうくん、必ずやその気持ちに、お応えします」「この私が、」
 彼女は、凛とした態度で、そう答える。


 半次郎は、柚華に深く頭を下げ、感謝の気持ちを言葉にする。
 「ありがとう」
 
 彼等が生き抜くこの時代において、男が女に対して頭を下げるなどと言う事は、ほぼ無かった。

 これは、深い敬意を表す事だった。


 「今日は遅いから」「おらっちの家でゆっくり休んで、明日の朝戻ったら良いよ、里中島に」
 
 この言葉を聞いた柚華は、ニッコリと微笑み

 「うん、そうね、ありがとう」と、こたえる。
 
 まだ本人は気づいて無いが、この時二人には、淡い恋心が芽生えていた。


 ・・・

 その数日後、柚華達は蛇骨の洞窟の前で、呆然と立ち尽くす。

 そこは、かつて桃花と飛猿が、アカツキとイツキと言う、老た双子の術師の元で、魔力の修行をした場所なのだが

 「ケロ、なんて事なの」

 ツタやカズラが、蛇骨の入り口をらい付く程の勢いで、覆い被さっていて、明らかにここに住む者などいない

 そう思わざる得ない状況だった。
 
 


 「双子の彼等がいなければ、二人同時にピタリと呪文を唱える」「これが、叶えられ無いかも知らない」

 カエルとうかの顔は、みるみるくもり始める。
 
 「お母様とりあえず、中に入って見ましょう」

 「ケロ」

 柚華は裏刃刀を抜き、カズラを切り、暗い洞窟の中に足を踏み入れる。

 いつもは、「ヌーーン」と訳の分からない事を言ってはしゃいでいるユリネだが、薄気味悪く真っ暗な洞窟の中に入ると、「お姉たま怖いよ」と言い顔を歪め、柚華のマントを強く握りしめ、時折ポタリ、ポタリと水が滴り落ちる音に、ビク付きながら「ヒィーー」「・・・な、なんか今ほっぺに」「こ、こわいよ、お姉たまーー」

 ・・・



 全ての魔力を跳ね返すと言う、洞窟の中を、巨大な勾玉まがたまを見つける為に、ゆっくりと歩き始める。
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