私鬼戦記 禁断の魔方陣とカエルに変えらし者

二十四話 動き出す

翌朝日が登り始めとほぼ当時に、柚華達は、動き出す。
　
　「ケロ、さてと、出発するか」
　「ちょと待ってくれ桃花、その前に乾よ、シゲ様達の墓石迄、案内してくれ無いか」
　「ウム、それが先だったなぁ」

　洸夜こうやの秘境を終ついの住処した者たちの墓石の前で、ここを離れる事の報告と彼等が残した武器を借りる事の許しと報告をする。

　柚華は、二刀流の使い手、鳥鬼ちょうきのダイズが愛用していた日本刀を手に持つ

　「ぬ、重い」

　文献神の中で、唯一ゆいつ無我の境地にたどり着いた男のもつ日本刀は、ズシリと重い、しかし柚華は、試しに一振り振り抜くと、この日本刀の本来の力を見抜く

　「優れている」「振り抜くその瞬間重みがいっさい消え失せる」
　
　「使える」「コイツ…まだ生きている」

　多くの石を積まれただけの墓石の下にダイズは眠る。

　柚華は手を合わせ、その墓石に向かい語り始めた。
　「まだ未熟な者故、ダイズ様の愛用のこの日本刀、使用する事など出来ないと、つい先ほどまでは思っていました」

　「この子私に語りかけて来たの」「まだ生きていると」「必ず又この地戻って来ますそれまでの間、お借りしますね」

　柚華は、墓石に一礼し、赤塗りの鞘に、キラリと光る刄を納め、右の腰にいわい付ける。
　
　そして柚華は、もう一本の日本刀に向かい話しかける。

　まるで、友達に話しかけるかの様に

　「君は、ダイズ様のそばを離れたく無いのね」

　「ならば、貴方はこの地を守りなさい」
　柚華は、そう言うと、鞘より日本刀を引き抜き鋭き刄に青き魔力を写し込み、突然大声をあげた「我が魔力にて、今宵この日より、ここを彼等の聖地とする」「この地で浮遊する魔力達よ、今日からあなたたちの主人あるじは、この私だ」
「よく聞け、何人たりともこの日本刀に、触れることを許すな」

　その声は、浸透するが如く野山に響き渡る。
　柚華は、そう言い放ち日本刀を地面にグサリと突き刺す。

　ダイズの愛用していた一本の日本刀は、淡い光を放ち、そして、静かにしてたたずむ

　柚華のこの行動は、魔力を持つ者達が亡き者達にこおなう、敬意を表す儀式である。

　「さて、行きましょう」「鳥鬼の寝ぐらに…」

　彼等は、今動き出す。