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第一章 アストラニア王国編
012 気の強そうな美人と実験準備
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昨日一晩考えたが、まだ奴隷はいいかな。そもそも宿暮らしで奴隷ってどうするんだろう? 一緒に泊まるのか? パーティメンバーとしてなら、男が男の奴隷を買うことだってあるだろうに。宿を出て家でも借りるかな。
宿と言えば。
最近のヘレナさんは完全に“モテ期”を迎えている。噂によれば「前より綺麗になった」と評判らしい。たしかに以前よりもさらにスタイルが良くなり、今では妖艶と言えるほどの色気を漂わせている。よく食堂で口説かれているヘレナさんを見かけるが、それを見て何とも思っていない自分に気づいた時、俺って割り切ってんなと自分に感心した。
そして――俺が泊まっている二階の部屋は、実は宿泊客用ではないことがわかった。宿の常連客と話をした際、「え? 二階に部屋なんてあるの?」と全員が驚いたのだ。この宿を何度も利用したことがあるという隣町の商人さえ知らなかった。なので直接ヘレナさんに尋ねてみると、
「……最初から、あなたを狙っていたのよ。うまくいくとは思わなかったけど、ちょっと期待して泊めちゃった」
と白状された。
最初に俺が来たとき、実は満室だったらしい。結婚して出て行った弟が昔使っていた部屋が空いていたので、そこを充てたのだとか。つまり、俺は最初から彼女の仕掛けに嵌っていたわけだ。……怒りなんてまるでない。むしろ感謝している。
◇
さて、当面はソロでオークを、特にオークナイトを狙って〈剣術〉スキルを稼ごうかなとダンジョンに向かっていると、向こうから全身黒い服の目つきのきつい美人が歩いてくるのが見えた。なかなか気の強そうな美人だなあと思いながらすれ違おうとしたとき、その女性が急にぶつかってきた。
「どこ見て歩いてんのよ!!」
え? 無理やりぶつかってきたのに? と思いながら、盗まれた財布に入ってたのは金貨三枚だったっけ? と考えていた。そう、この女性はスリだったのだ。まあ、代わりに俺は彼女のバッグを亜空間に収納したんだが。
あまり期待はしていなかったが、亜空間に収納したバッグは、予想外にもマジックバッグだった。これだけで最低三百万Gの価値がある。
「何が入っているかな?」
マジックバッグの中身は、金貨が十二枚、回復ポーションが二本、あと……着替えかな、それと書類の束がわりとある。これ大事な書類だったりするのかな? まあ、いいや、どこかに捨てるか。
確認も終えたので、そのまま亜空間へ。ダンジョンに向かっていると、さっきの女性がつけてきているのがわかった。意外と早く気づいたな。
このままダンジョンまでついてこられて面倒を起こされるのも嫌なので、人気のない路地の方へ誘導していくことにする。そして行き止まりに着いたとき、先回りした彼女が建物の影の中から、すっと現れた。
首筋までそろえられた黒い髪は艶やかで、光にほんのり反射して揺れる。黒い瞳は強く光り、気の強さだけでなく怒りも帯びていた。
「ねえお兄さん、私のバッグ知らない?」
体にぴったりと合った黒いシーフの服は軽やかで動きやすそうだ。腰には短剣が差してある。動作一つひとつに、軽やかさと同時にピリッとした緊張感が漂う。
「さあ? なんのことでしょう」
「ふざけんじゃないわよ! アンタと会うまでは、アタシが間違いなく持っていたのよ!」
「そうですか。俺もそれまでは財布を持っていたはずなんですけどね」
彼女は歯ぎしりしそうな顔をしながら、急に柔らかい声色に変わる。
「わかったわ。財布を返すから、バッグを返して」
そう言って懐から俺の財布を出してきた。
「いいですよ、はい」
俺も亜空間からマジックバッグを出す。
「じゃあ交換ね。ちなみにお兄さん、バッグの中は見た?」
「ええ、軽く確認しました」
「そう……」
次の瞬間、彼女はナイフを抜き、俺の首を狙っていた。だが、その刃は俺のショートソードに阻まれる。甲高い金属音が響いた。
「あぶないですねえ、いきなり何するんですか」
「チッ……見ちゃったからには、生かして帰すわけにはいかないね。おとなしく死んでもらうわ!」
間合いを取ったかと思えば、すぐに詰めてきて、首やら手首やら膝裏やら器用に狙ってくる。
「一応確認なんですが。俺を殺そうとしているんだから、殺される覚悟はあるんですよね?」
「舐めた口きいてんじゃないわよ! やれるもんなら、やってみなさい!」
そうですか。言質は取れたので、そろそろ終わりにしよう。
「――第六階梯空間魔法〈部分収納〉」
〈部分収納〉は相手の身体の一部だけ亜空間に収納することで、相手を拘束する魔法。正確には一度全部収納したあとに、収納しようとしていた箇所以外をこちらの世界に顕現させているらしい。応用すれば、足や手の位置を全然違う場所に顕現させたりもできる。使い道を思いつかないが。
さらに、
「第三階梯空間魔法〈空間規制〉」
これで、彼女を透明化し、声が外に聞こえないように防音する。
「ここに置いておくと邪魔だから、屋根の上にでも置いておこう」
拘束した彼女を近くの屋根の上に放置した。
さて……いい相手が見つかった。探していた相手だ。
これまで俺は試したい勇者スキルを試せずに我慢してきた。それは――殺してもいいと思える女性がいなかったからだ。
「さっそく家を借りにいこう」
宿で試すわけにはいかないので、家を借りるしかない。そろそろ〈料理〉スキルもレベルが上がらなくなってきたし、ちょうどいいだろう。ほんと俺、割り切ってるなあ。
まあ、今日のダンジョンは中止だな。彼女にかけた魔法がどれくらいの時間もつのかわからないし、急いで用事を済ませよう。最悪、逃げられても問題ないだろう。俺はまだ彼女に何もしていないし。
◇
商業ギルドですぐに借りることのできる一軒家を紹介してもらった。最初に紹介してもらった二階建ての3LDK(風呂なし・庭に井戸あり)を即決。ギルド職員が帰ったら、借りた家を魔力空間で囲み、〈修復(空間)〉で俺の持っている元素と素材でいけるところまで修理、家全体に〈洗浄〉をかけて家の中へ。
「この部屋でいいか」
一階の一番広い部屋にあった、備え付けの家具をすべて亜空間へ収納し、今ある高炭素鋼インゴット八十個で牢屋を作ってみる。
「できるかな? 〈合成(空間)〉って結構単純な形にしかできないんだよな」
仕方がないので、〈合成(空間)〉で牢屋の棒一本の太さのものをたくさん作り、さらに〈合成(空間)〉を使って牢屋の形にくっつけていく。
「なるほど。段階踏めば〈合成(空間)〉でも、そこそこのものは作れそうだ」
食事のトレーが通る穴だけで入口がなく、天井も床も囲った牢屋が完成。亜空間に入れておく。
「家具は……王城で貰ってきたものがあるか。料理道具と食材ぐらいあれば、今日はどうにかなるかな」
料理道具と食材をざっと買う。足りなければ明日買えばいい。収納に入れたら、彼女のもとへ。
彼女を拘束した屋根の上にきたが、俺が見てもそこに何かあるようには見えない。ただ、俺の魔力空間がそこにあるのはわかるので、彼女がまだ捕まったままなのはわかった。間に合ったようだ。周りに誰もいないことを確認し、一度透明化を解除する。うん、捕まえたときと同じ状態だ。
〈部分収納〉で拘束されている彼女は、彼女自身は自分で動けないが、俺は彼女を動かすことができる。しかし、手の先と足の先がない女性を運んでいるのは異様なので、俺と彼女をセットで透明化し直して運ぶことにした。
透明化していると、当たり前だが人には見えないので、まわりが普通にぶつかってくる。危ないので、できる限り屋根の上を移動して、借りた家までたどり着いた。
「さて、準備しますか」
とりあえず家全体を魔力空間で囲み防音に。彼女を一番大きな部屋で透明化を解いて、空中に固定する。そして彼女を囲うように、先ほど作った牢屋を出現させる。これで、入口のない牢屋に入った女性のできあがり。
俺はというと
「第八階梯空間魔法〈空間転移〉」
いまのところ、自分が見えている範囲でしかできないが、テレポートできる。もっと遠くまでテレポートする方法は探しているところ。これを使って牢屋の外から牢屋の中に入る。そして、王城から持ってきた新品のダブルベッドを牢屋の中に置く。
「とりあえずはこれくらいでいいか」
第八階梯空間魔法〈空間転移〉で牢屋の外に出て、彼女の拘束を解く。
「あれ? 意外と大人しいですね」
あ、彼女の防音だけ切ってなかった。防音も解く。
「なにすんのよコラァ! ふざけんじゃないわ! さっさとここから出しなさいよ!」
口悪いなあ……もう一回彼女に防音をかけておこう。
「……! ……!! ……!!」
何か騒いでいるようだが無視。あ、つば飛ばしてきた。障壁で囲ってやれ。
さて、勇者スキルでやる実験は決まっている。だが、できるだけ多くやりたい。つまりは、できるだけ生かしておきたい。そうなると、今持っている回復魔法の“プリセット”だとちょっと不安なところがある。
「独自魔法作るか」
まずは気絶対策だ。気絶状態が長引くとあまりよくないと聞く。なので気絶から復活させる魔法
――第一階梯回復魔法〈気付〉
次に、普通にご飯を食べてもらうつもりだが拒否されたりして栄養失調になられると困るので
――第二階梯回復魔法〈栄養補給〉
そして、おそらくどこかの段階から脳にダメージを与えるのではないかと思っている。そこでダメージ前の脳の状態を記憶し、ダメージがあった場合はダメージ前の脳に戻すための魔法を二つ
――第五階梯回復魔法〈脳状態保存〉
――第六階梯回復魔法〈脳状態復元〉
最後に心肺停止状態から復帰させる魔法
――第七階梯回復魔法〈心肺蘇生〉
〈心肺蘇生〉は死者を蘇らせる魔法じゃない。心臓マッサージとマウストゥマウスを同時にするような魔法だ。心肺停止してから五分以内くらいまでしか効果がないはず。雷魔法があったらAEDとかもいけるんじゃないかと思っている。
さて、準備は完了した。食事したら実験開始だ。
宿と言えば。
最近のヘレナさんは完全に“モテ期”を迎えている。噂によれば「前より綺麗になった」と評判らしい。たしかに以前よりもさらにスタイルが良くなり、今では妖艶と言えるほどの色気を漂わせている。よく食堂で口説かれているヘレナさんを見かけるが、それを見て何とも思っていない自分に気づいた時、俺って割り切ってんなと自分に感心した。
そして――俺が泊まっている二階の部屋は、実は宿泊客用ではないことがわかった。宿の常連客と話をした際、「え? 二階に部屋なんてあるの?」と全員が驚いたのだ。この宿を何度も利用したことがあるという隣町の商人さえ知らなかった。なので直接ヘレナさんに尋ねてみると、
「……最初から、あなたを狙っていたのよ。うまくいくとは思わなかったけど、ちょっと期待して泊めちゃった」
と白状された。
最初に俺が来たとき、実は満室だったらしい。結婚して出て行った弟が昔使っていた部屋が空いていたので、そこを充てたのだとか。つまり、俺は最初から彼女の仕掛けに嵌っていたわけだ。……怒りなんてまるでない。むしろ感謝している。
◇
さて、当面はソロでオークを、特にオークナイトを狙って〈剣術〉スキルを稼ごうかなとダンジョンに向かっていると、向こうから全身黒い服の目つきのきつい美人が歩いてくるのが見えた。なかなか気の強そうな美人だなあと思いながらすれ違おうとしたとき、その女性が急にぶつかってきた。
「どこ見て歩いてんのよ!!」
え? 無理やりぶつかってきたのに? と思いながら、盗まれた財布に入ってたのは金貨三枚だったっけ? と考えていた。そう、この女性はスリだったのだ。まあ、代わりに俺は彼女のバッグを亜空間に収納したんだが。
あまり期待はしていなかったが、亜空間に収納したバッグは、予想外にもマジックバッグだった。これだけで最低三百万Gの価値がある。
「何が入っているかな?」
マジックバッグの中身は、金貨が十二枚、回復ポーションが二本、あと……着替えかな、それと書類の束がわりとある。これ大事な書類だったりするのかな? まあ、いいや、どこかに捨てるか。
確認も終えたので、そのまま亜空間へ。ダンジョンに向かっていると、さっきの女性がつけてきているのがわかった。意外と早く気づいたな。
このままダンジョンまでついてこられて面倒を起こされるのも嫌なので、人気のない路地の方へ誘導していくことにする。そして行き止まりに着いたとき、先回りした彼女が建物の影の中から、すっと現れた。
首筋までそろえられた黒い髪は艶やかで、光にほんのり反射して揺れる。黒い瞳は強く光り、気の強さだけでなく怒りも帯びていた。
「ねえお兄さん、私のバッグ知らない?」
体にぴったりと合った黒いシーフの服は軽やかで動きやすそうだ。腰には短剣が差してある。動作一つひとつに、軽やかさと同時にピリッとした緊張感が漂う。
「さあ? なんのことでしょう」
「ふざけんじゃないわよ! アンタと会うまでは、アタシが間違いなく持っていたのよ!」
「そうですか。俺もそれまでは財布を持っていたはずなんですけどね」
彼女は歯ぎしりしそうな顔をしながら、急に柔らかい声色に変わる。
「わかったわ。財布を返すから、バッグを返して」
そう言って懐から俺の財布を出してきた。
「いいですよ、はい」
俺も亜空間からマジックバッグを出す。
「じゃあ交換ね。ちなみにお兄さん、バッグの中は見た?」
「ええ、軽く確認しました」
「そう……」
次の瞬間、彼女はナイフを抜き、俺の首を狙っていた。だが、その刃は俺のショートソードに阻まれる。甲高い金属音が響いた。
「あぶないですねえ、いきなり何するんですか」
「チッ……見ちゃったからには、生かして帰すわけにはいかないね。おとなしく死んでもらうわ!」
間合いを取ったかと思えば、すぐに詰めてきて、首やら手首やら膝裏やら器用に狙ってくる。
「一応確認なんですが。俺を殺そうとしているんだから、殺される覚悟はあるんですよね?」
「舐めた口きいてんじゃないわよ! やれるもんなら、やってみなさい!」
そうですか。言質は取れたので、そろそろ終わりにしよう。
「――第六階梯空間魔法〈部分収納〉」
〈部分収納〉は相手の身体の一部だけ亜空間に収納することで、相手を拘束する魔法。正確には一度全部収納したあとに、収納しようとしていた箇所以外をこちらの世界に顕現させているらしい。応用すれば、足や手の位置を全然違う場所に顕現させたりもできる。使い道を思いつかないが。
さらに、
「第三階梯空間魔法〈空間規制〉」
これで、彼女を透明化し、声が外に聞こえないように防音する。
「ここに置いておくと邪魔だから、屋根の上にでも置いておこう」
拘束した彼女を近くの屋根の上に放置した。
さて……いい相手が見つかった。探していた相手だ。
これまで俺は試したい勇者スキルを試せずに我慢してきた。それは――殺してもいいと思える女性がいなかったからだ。
「さっそく家を借りにいこう」
宿で試すわけにはいかないので、家を借りるしかない。そろそろ〈料理〉スキルもレベルが上がらなくなってきたし、ちょうどいいだろう。ほんと俺、割り切ってるなあ。
まあ、今日のダンジョンは中止だな。彼女にかけた魔法がどれくらいの時間もつのかわからないし、急いで用事を済ませよう。最悪、逃げられても問題ないだろう。俺はまだ彼女に何もしていないし。
◇
商業ギルドですぐに借りることのできる一軒家を紹介してもらった。最初に紹介してもらった二階建ての3LDK(風呂なし・庭に井戸あり)を即決。ギルド職員が帰ったら、借りた家を魔力空間で囲み、〈修復(空間)〉で俺の持っている元素と素材でいけるところまで修理、家全体に〈洗浄〉をかけて家の中へ。
「この部屋でいいか」
一階の一番広い部屋にあった、備え付けの家具をすべて亜空間へ収納し、今ある高炭素鋼インゴット八十個で牢屋を作ってみる。
「できるかな? 〈合成(空間)〉って結構単純な形にしかできないんだよな」
仕方がないので、〈合成(空間)〉で牢屋の棒一本の太さのものをたくさん作り、さらに〈合成(空間)〉を使って牢屋の形にくっつけていく。
「なるほど。段階踏めば〈合成(空間)〉でも、そこそこのものは作れそうだ」
食事のトレーが通る穴だけで入口がなく、天井も床も囲った牢屋が完成。亜空間に入れておく。
「家具は……王城で貰ってきたものがあるか。料理道具と食材ぐらいあれば、今日はどうにかなるかな」
料理道具と食材をざっと買う。足りなければ明日買えばいい。収納に入れたら、彼女のもとへ。
彼女を拘束した屋根の上にきたが、俺が見てもそこに何かあるようには見えない。ただ、俺の魔力空間がそこにあるのはわかるので、彼女がまだ捕まったままなのはわかった。間に合ったようだ。周りに誰もいないことを確認し、一度透明化を解除する。うん、捕まえたときと同じ状態だ。
〈部分収納〉で拘束されている彼女は、彼女自身は自分で動けないが、俺は彼女を動かすことができる。しかし、手の先と足の先がない女性を運んでいるのは異様なので、俺と彼女をセットで透明化し直して運ぶことにした。
透明化していると、当たり前だが人には見えないので、まわりが普通にぶつかってくる。危ないので、できる限り屋根の上を移動して、借りた家までたどり着いた。
「さて、準備しますか」
とりあえず家全体を魔力空間で囲み防音に。彼女を一番大きな部屋で透明化を解いて、空中に固定する。そして彼女を囲うように、先ほど作った牢屋を出現させる。これで、入口のない牢屋に入った女性のできあがり。
俺はというと
「第八階梯空間魔法〈空間転移〉」
いまのところ、自分が見えている範囲でしかできないが、テレポートできる。もっと遠くまでテレポートする方法は探しているところ。これを使って牢屋の外から牢屋の中に入る。そして、王城から持ってきた新品のダブルベッドを牢屋の中に置く。
「とりあえずはこれくらいでいいか」
第八階梯空間魔法〈空間転移〉で牢屋の外に出て、彼女の拘束を解く。
「あれ? 意外と大人しいですね」
あ、彼女の防音だけ切ってなかった。防音も解く。
「なにすんのよコラァ! ふざけんじゃないわ! さっさとここから出しなさいよ!」
口悪いなあ……もう一回彼女に防音をかけておこう。
「……! ……!! ……!!」
何か騒いでいるようだが無視。あ、つば飛ばしてきた。障壁で囲ってやれ。
さて、勇者スキルでやる実験は決まっている。だが、できるだけ多くやりたい。つまりは、できるだけ生かしておきたい。そうなると、今持っている回復魔法の“プリセット”だとちょっと不安なところがある。
「独自魔法作るか」
まずは気絶対策だ。気絶状態が長引くとあまりよくないと聞く。なので気絶から復活させる魔法
――第一階梯回復魔法〈気付〉
次に、普通にご飯を食べてもらうつもりだが拒否されたりして栄養失調になられると困るので
――第二階梯回復魔法〈栄養補給〉
そして、おそらくどこかの段階から脳にダメージを与えるのではないかと思っている。そこでダメージ前の脳の状態を記憶し、ダメージがあった場合はダメージ前の脳に戻すための魔法を二つ
――第五階梯回復魔法〈脳状態保存〉
――第六階梯回復魔法〈脳状態復元〉
最後に心肺停止状態から復帰させる魔法
――第七階梯回復魔法〈心肺蘇生〉
〈心肺蘇生〉は死者を蘇らせる魔法じゃない。心臓マッサージとマウストゥマウスを同時にするような魔法だ。心肺停止してから五分以内くらいまでしか効果がないはず。雷魔法があったらAEDとかもいけるんじゃないかと思っている。
さて、準備は完了した。食事したら実験開始だ。
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