百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

文字の大きさ
71 / 182
第二章 リーファリアへの道編

066 若返りの賢者と水色の騎士

しおりを挟む
 屋敷に戻り、さっそくリンファの剣術指導を始めた――が。

 すでに〈短剣術[8]〉を持つリンファの上達は異常に早く、あっという間に一通りの型を覚えてしまった。
 打ち込み稽古をしてもすぐにコツをつかむので、初日だというのにもう試合稽古まで進んでいた。
 一応、明日と明後日も教えてほしいと言われているが……正直、今日だけで十分なんじゃないだろうか。

 稽古が終わったあと、屋敷全体――外壁から地下の基礎部分までを空間魔法で包み込み、〈修復(空間)〉で一気に修理した。結果、屋敷は完全に新築状態になった。

「アレス様、こんなことまでできるのですね……」

 作業を見ていたリンファは、ぽかんと口を開けたまま屋敷の中を隅々まで見て回る。
 全体を修理したので、屋敷の中にあった家具や調理道具などもすべて新品同然になっている。

 しばらくして、ショッピングに出かけていた三人も戻ってきた。

「え? どういうこと? アレス、何かした?」

 エルマがそう言って屋敷中を調べ回る。

「全部新品になってるじゃないの……」

「ああ、スキルで修理しておいた」

「すごいスキルがあるもんだね……」

 エルマは呆れたようにため息をつく。ヒカルも同じく驚いていたが、エリュシアまで目を丸くしていたのは少し意外だった。

「あれ? エリュシアにはこのスキル見せただろ? 着てた服、新品にしたじゃないか」

「いや、規模が違いすぎるだろ……」

 せっかくなので、〈黎花れいかの翼〉の三人が着ていた冒険者装備も新品にすることにした。
 三人には一度ほかの服に着替えてもらい、預かった装備をすべて修復して返した。


 その夜。エルマの作る美味しい夕食を食べ、大きな風呂を堪能したあと、俺は自室で待機していた。
 この屋敷は買い取って《万紫千紅》の拠点としたので、広すぎて今まで誰も使っていなかった一番広い部屋を、俺が使うことになっている。
 十人が寝られるほどのベッドを置ける広さだが、例の巨大ベッドはアストラニア王国の王都の屋敷に置いてきたままだ。特注でもう一つ作るか――そう考えていたとき、扉がノックされた。

「アレス。あたしだよ。入っていい?」

 声の主はエルマだった。扉を開けて中へ招き入れる。
 昨日のリンファと同じように、エルマもパジャマ姿だ。だが、彼女の身体は曲線がはっきりしていて、ただのパジャマでも妙に色っぽく見える。

「アレス、あんまりジロジロ見るもんじゃないよ。あたしだって恥ずかしいんだから」

 エルマは頬を少し赤らめ、気まずそうに笑った。意外とこういうのに慣れていないらしい。

 リンファのときと同じように、ベッドに並んで座って話をする。

「そういえばエルマは十歳くらい若返らせたけど、問題ないのか?」

 俺はもっと騒ぎになるかと思っていたのだが、

「ああ、どうやって若返ったのか聞かれるのがちょっと面倒なくらいさ。いずれ誰も気にしなくなるだろうし」

 エルマはあっけらかんとした口調で答える。
 若返れるなら、それくらいは気にならないらしい。体も軽くなって、動きやすいという。確かに以前よりずいぶん体が締まったからな。

 続いて、どんなスキルを望むのか尋ねると、ヒカルを支えるために「どんな状況でも魔法で解決できるほど強くなりたい」と言う。
 ならば、俺の持つ〈聖魔法〉以外の全魔法を渡すことにした。

「あ、エルマ。渡したいものがある。一つがこれ」

 俺は彼女に球形の宝石を手渡す。

「アレス、これは……?」

 アクアマリンに第九階梯水魔法〈獄波メイルシュトローム〉を魔法陣化して付与したものだ。杖の宝石をこれに換えれば、魔法が大幅に強化されるはずだ。

「あと、これも」

「銀の指輪?」

 それは第五階梯呪魔法〈禁能呪カースバンスキル〉を組み込んだ指輪で、一定範囲内にインキュバスがいた場合、インキュバスの〈催淫〉スキルだけを封印できるようにしてある。
 この指輪はその都度魔力を消費するので、本来なら地下四十階以降の宝箱で手に入る〈催淫無効の指輪〉が理想だが、それまではこれで代用してもらう。

「それと、これもあげる」

 先日のダンジョン攻略で手に入れた〈エレメンタルローブ〉だ。アストラニア王国にいる《万紫千紅》のメンバーも使用する予定だが、それはまた入手すればいい。まずは彼女に渡す。

「ありがとう、アレス!」

 そう言って抱きついてくるエルマは、年相応の落ち着きを持ちながらも、とても魅力的な女性だった。
 そのままそっとベッドに倒すと、急に落ち着かなくなったが……まあ、昨日のリンファのときと同じように、まずは恒例の“永久脱毛”から始めれば大丈夫だろう。

「じゃあ、あとは俺に任せて」


 エルマ ヒューマン 三十八歳
 Bランク冒険者

 所持スキル:
  火魔法[8] ↑UP
  水魔法[8]
  土魔法[8] ※NEW
  風魔法[8] ※NEW
  闇魔法[8] ※NEW
  氷魔法[8] ※NEW
  回復魔法[8] ※NEW
  生活魔法[8] ↑UP
  隷属魔法[8] ※NEW
  空間魔法[8] ※NEW
  波動魔法[8] ※NEW
  性魔法[8] ※NEW
  植物魔法[8] ※NEW
  呪魔法[8] ※NEW
  身体強化[8] ※NEW
  魔法付与[8] ※NEW
  魔法陣付与[8] ※NEW
  魔法陣生成[8] ※NEW
  鑑定[8] ※NEW
  料理[8] ↑UP
  裁縫[8] ↑UP
  美容[8] ※NEW
  全スキル経験値アップS ※NEW
  アイテムボックスS ※NEW
  饗膳恩寵
  無詠唱
  強靭 ※NEW
  念話 ※NEW
  魔力常時回復 ※NEW


 《饗宴の賢者》の名に恥じないよう、〈聖魔法〉以外のすべての魔法を渡した。
 一気に増えた魔法を把握するのは大変だろうが、〈鑑定〉を付与しておいたので第八階梯までのプリセット魔法は確認できるはずだ。
 さらに〈身体強化〉で行動力も底上げしてある。〈複合魔法〉まで渡したらセレナに怒られそうなので、そこは自重した。

 翌朝。
 柔らかい感触に包まれながら目を覚ますと、裸のまま俺に抱きついて眠るエルマの姿があった。

「こうして見ると、俺と同じくらいの歳にも見えるな」

 童顔気味の表情がそう感じさせるのか、眠る彼女は十代後半にしか見えなかった。
 なんとなく頭を撫でていると、ぼんやりと目を開けたエルマが俺を見て――

「な、なにしてるんだい! こんなおばちゃんの頭を撫でるなんて!」

 顔を真っ赤にして抗議してくる。

「エルマ、今はもう“おばちゃん”じゃないだろ。早く慣れてくれ」

 軽く唇を触れ合わせると、彼女の顔は一気に真っ赤になり、布団にもぐり込んだ。

「と、年上をからかうもんじゃないよ!」

 ……どうやらエルマはかなり初心らしい。それは昨晩で十分にわかっていたけど。


 美味しい朝食を食べた後、俺はヒカルを呼び止めた。

「今日もリンファに剣術を教えるんだが、ヒカルも一緒にやらないか?」

「わ、私は剣は一切使えないから……習っても意味がないと思う……」

「ああ、〈全スキル経験値アップS〉のことも教えられていないのか」

 このスキルは通常の千倍の経験値を得られる。
 一日でも剣を振れば、ほぼ確実に〈剣術[1]〉が生える。三ヶ月でレベル6、一年半でレベル7、十年ほど続ければレベル8にも届く。関係を持たなくてもスキルを得ることはできるのだ。

「始めるなら今からでも全然遅くないぞ」

「わ、わかった。やってみる」

 ヒカルもリンファと一緒に、俺から剣術を習うことになった。


 リンファには〈短剣術〉、ヒカルには〈剣術〉を教える。
 リンファは基礎をマスターしているので、あとは実戦経験だ。エリュシアに模擬戦相手を頼み、俺はヒカルをマンツーマンで指導する。

 エルマはその間に料理のストックを作ると張り切っていた。

 ヒカルは完全な初心者なので、今日の内容は素振りと型の練習だけ。
 真面目な彼女は、俺の説明を真剣な眼差しで聞き取っている。この調子なら、今日中に〈剣術〉スキルが生えるだろう。

 屋敷の庭で稽古をしていると――

「こんにちはー」

 少しおとなしそうな女の子の声が聞こえた。玄関のほうで、どうやらエルマが応対している。

 しばらくして、エルマが一人の少女を連れてきた。

 まだ十代のあどけなさを残した顔立ちで、淡い水色の髪が陽光を受けてやわらかく揺れ、肩のあたりでふわりと跳ねる。まるで澄んだ湖面の波のように静かで、見る者の心を穏やかにする。
 青い瞳は誠実さを湛えているが、その奥にわずかな不安の影を宿していた。
 王国騎士団の装備に身を包んでいるものの、甲冑は最小限。磨かれた胸当ての銀がきらりと光っている。
 姿勢は真っすぐで、訓練を受けた者らしい凛とした気配を放っている――が、胸の前でそっと手を組む仕草は、どこかぎこちなく、初対面の緊張を隠せていなかった。

「この子はミリア。ヒカルのお友達だよ」

 エルマに紹介された少女は、俺を見ると少し肩をすくめて小さく会釈した。

「ミリアです。初めまして」


 ミリア・アズール ヒューマン 十九歳
 エルセリオン王国騎士団 騎士

 所持スキル:
  生活魔法[4]
  剣術[3]
  盾術[3]
  騎馬[3]


 (ん? 騎士にしてはずいぶん弱いな。王国騎士団ってこんなものなのか?)

 話を聞くと、王城に出勤した途端に急に非番を言い渡され、そのままここへ来たらしい。だから騎士装備のままなのだという。

「今、ヒカルとリンファに剣術を教えてるんですけど、よかったらミリアさんも一緒にどうです?」

「ぜひ!」

 ミリアは、太陽のように眩しい笑顔で答えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

辺境の落ちこぼれと呼ばれた少年、実は王も龍も跪く最強でした

たまごころ
ファンタジー
村で「落ちこぼれ」と呼ばれた少年アレン。魔法も剣も使えず、追放される運命だった。 だが彼の力は、世界の理そのものに干渉する“神級スキル”だった。 自覚のないまま危機を救い、美女を助け、敵を粉砕し、気づけば各国の王も、竜すらも彼に頭を下げる。 勘違いと優しさと恐るべき力が織りなす、最強無自覚ハーレムファンタジー、ここに開幕!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...