百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

文字の大きさ
118 / 182
第三章 エヴァルシア開発編

110 エヴァルシア開発 初日(1)

しおりを挟む
 翌朝。
 俺は朝から皆に挨拶を済ませると、王都の外でドラゴンへと姿を変え、背中にメディアを乗せてエヴァルシアへ向かった。
 三十分もしないうちに、俺たちは目的地の上空へと到着した。

 かつて、オークの大群に襲われ壊滅したエヴァルシア村。
 その跡地は、今ではひどく静まり返っていた。

 上空から見下ろしても、住居があったと思われる基礎部分が、ところどころ地面に残っているのが分かる程度だ。
 家々の形はすでに失われ、かつて人の営みがあった痕跡は、土と草に呑み込まれつつあった。

 村を囲っていた防御柵も、住居を支えていた木材も、もはや一片たりとも見当たらない。
 中心地と思しき場所に残る、黒く焼け焦げたたき火の跡――おそらく、回収できる木材はすべて薪として使われたのだろう。

 セレナたちは、まだ到着していないようだ。しかし――。

『こちらアレス。セレナ、今エヴァルシアに向かっているところか?』

『こちらセレナ。そうよ。アレスたちはもう着いたの?』

『ああ。今、元エヴァルシア村と思われる場所の上空にいる。……それと、荷馬車が四台確認できる。人影もあるな。ここは街道からかなり外れているはずだ。気を付けろ』

『わかったわ。全員に情報共有しておく。アレスもこちらに来ない? 先に合流しましょう』

『了解。そっちに向かう』

 ほどなくしてセレナたちの馬車を見つけ、着陸して合流した。

「ヒカルとミリアは、ノワゼリア侯爵のところか?」

「ええ。私の顔を立てるために、あちらに残ってくれたの。少し申し訳ないけれど」

 ヒカルとミリアは、剣術指導と騎士団の訓練のため、ノワゼリア侯爵のいる領都ヴァルグラントに残ったらしい。

「それで、アレスが見た感じ、どんな連中だった?」

「遠目だったから断定はできないが……商人に見えたな」

「商人ね。でも、どうしてこんな場所に? 街道から外れて、二日もかかる場所にわざわざ来るなんて」

「まあ、直接話してみれば分かるだろ」

「そうね」


 二十分後、俺たちは、先ほど上空から確認した荷馬車四台が停まっている、元エヴァルシア村の空き地へと到着した。

 セレナが一歩前に出て、大きな声を張り上げる。

「私はセレナ・エヴァルシア! このたび、この領地を治めることになった者です! あなたがたは、ここで何をされているのですか?」

 すると、少し面倒そうな表情を浮かべながら、四人の商人と思しき男たちが荷馬車の陰から姿を現した。

「おお! これはこれは、領主様にお会いできるとは、なんとも光栄です! 我々はゼフィランテス帝国の奴隷商人でして、こちらで野営を――」

「セレナ。荷馬車の中にエルフがいる。こいつら、違法奴隷を扱っているぞ」

 俺の〈魔力感知〉は、はっきりとエルフの反応を捉えていた。

「なるほどね……〈部分収納パーシャルストレージ〉! 少し、そこで大人しくしていなさい!」

 セレナは四人の奴隷商を即座に拘束し、周囲の空間を防音して放置した。

 荷馬車の中を確認すると、それぞれに二十人ずつ、計八十人の奴隷が乗せられていた。
 そのうちの二十人が、エルフの女性だった。

「セレナ、この人たちの扱いはどうなる? まだアストラニア王国の奴隷管理局には登録されていないんだろ?」

「ええ。この人たちは、現時点ではアストラニア王国の奴隷扱いにはならない。あくまで商人との私的な奴隷契約よ。それを解除すれば、解放しても何の問題もないわ」

「じゃあ、解放するか。手伝うぞ」

「ええ、お願い」

 俺とセレナ、そして〈隷属魔法〉を持つイレーヌとリディアで、全員の奴隷契約を解除していった。

「とりあえず、この人たちに食事を。ろくに食べさせてもらっていないみたいだ」

 俺は空き地にテーブルと椅子を並べ、エルマが作り置きしてくれていた全員分の食事を並べる。

「まずは食べてくれ。話はそれからだ」

 念のため、全員に〈洗浄クリーン〉をかけてから食事をしてもらった。

「みんな! 食べながらでいいから聞いてくれ! 俺はドラゴンに変身できる! このあとドラゴンが出てくるけど、俺だから安心してくれ!」

 全員から「何を言ってるんだこいつは?」という視線を向けられたが、構わない。
 パニックになられるより、よほどマシだ。

「セレナ。今日中に仮の屋敷までは建てたい。俺とメディアは、さっそく開発に入るぞ。計画通り、城壁は一辺五キロメートルの正方形。主要道路は中心を通る十字でいく」

「本当に一辺五キロメートルで作るのね……。広すぎないかしら?」

「大丈夫だ。それくらいないと、後から何度も拡張する羽目になる。あ、それと――」

 俺は、先ほどから気になっていたことを口にした。

「これから城壁で囲う予定の領域内に、魔力が高い場所がある。あの方向だ。イレーヌ、リディア、ちょっと見てきてくれないか」

「了解。任せとけ」
「わかりました、アレスさま」

 あの魔力の感覚……俺が知っているものと、よく似ている。
 もしかすると――。

「それと、あの山脈のふもとにも、もっと大きな魔力反応がある。今回は囲う範囲の外だから、落ち着いたら調べよう。じゃ、行ってくる」

 俺はその場でドラゴンへと変身した。
 元奴隷たちがざわついたが、事前に話していたおかげでパニックにはならなかった。

 メディアを背に乗せ、空へと舞い上がる。

『メディア。こうして見ると、一辺五キロメートルで囲うと南東側は森になるが、大丈夫か?』

『ええ。問題ありません』

『よし、じゃあ始めるか』

 俺は〈空間魔法〉を使い、一辺五キロメートルの正方形を描くように展開する。
 その外側十メートルの範囲にある木や草、岩など、邪魔になるものをすべて亜空間へ収納した。
 これで、メディアも城壁を作る位置を把握しやすくなる。

『次は主要道路だな』

 正方形の中心を通る十字の形に、幅十メートルで障害物を取り除き、石畳を敷く分の地面を一気に掘り下げた。

『準備完了。メディアは城壁を頼む。俺は主要道路の石畳を作る』

『承知しました』

 俺は正方形の北側中央付近に着陸し、ドラゴンの姿を解いた。そして気づいた。

「あ、しまった……。“アリス”じゃないとダメじゃん……」

 解放した奴隷の中に、エルフが二十人もいる。すでに発情させてしまったな、たぶん……。

 今さらだが、ここからは“アリス”で作業する。
 メディアは魔法で城壁を構築するらしいが、俺は岩山一つ分の素材がある。天然の石を使って石畳を敷いていく。
 もっとも、魔法で岩を切断しながら高速で並べていくだけなのだが。

 石畳の作業を始めて間もなく、イレーヌから〈念話〉が入った。

『アレス! ダンジョンがある!』

 やはりか。
 よく知っている魔力だと思ったんだ。

 セレナから、故郷にダンジョンがあるという話は聞いていなかった。
 となると、この村が壊滅したあとに発生したダンジョンなのだろう。

『セレナにも伝えてあげて。たぶん天然ダンジョンだから、一度クリアして、都合のいい構成に作り替えたほうがいいと思う』

『ああ、“アリス”になってたのか。そういや、エルフがいたもんな。でも、さっき“アレス”でエルフの前に立ってたから、今さらじゃね?』

『まあ……そうなんだけどね……』

 イレーヌにまでツッコまれてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

辺境の落ちこぼれと呼ばれた少年、実は王も龍も跪く最強でした

たまごころ
ファンタジー
村で「落ちこぼれ」と呼ばれた少年アレン。魔法も剣も使えず、追放される運命だった。 だが彼の力は、世界の理そのものに干渉する“神級スキル”だった。 自覚のないまま危機を救い、美女を助け、敵を粉砕し、気づけば各国の王も、竜すらも彼に頭を下げる。 勘違いと優しさと恐るべき力が織りなす、最強無自覚ハーレムファンタジー、ここに開幕!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。 ※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)

処理中です...