百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

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第四章 モノ・インフィニティ編

170 四十人の救出と黒牙団の処理

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 俺は屋敷の中にいる女性たちに声をかけた。

「昨日、武具を作ったときの四人組で集まってくれ。一度に四人組二つ、合計八人で地上に出てもらう。地上に出たら右側に黒い大きなテントが張ってあるから、そのテントまで行き、中にいる女性に声をかけてくれ。中にいる女性は今、モニターに映っている三人だ」

 そう言って奴隷の女性たちにモニターを見せた。

「では最初はこの八人で。ここに並んで」

 八人の女性に並んでもらい、俺はその八人を奴隷から解放した。首にあった黒いチョーカーを外して亜空間に収納し、エヴァルシアの紋章がついた銀の指輪を指に嵌めてもらう。

「それと念のため、これを持って行ってくれ」

 それは各集落で集めた冒険者のギルドカードだ。カードの提示を求められた場合に備え、女性冒険者のものと思われるカードを、一人に一枚ずつ渡した。

「では、このまま階段を登って地上に出てくれ。焦らなくても君たちの未来は必ず明るいものになる。走らず、慌てず、落ち着いて、黒いテントまで行ってくれ」

 そう言って、俺は第一陣の八人を階段エリアに送り出した。

「残りの皆も準備だけしておこう。奴隷から解放して、指輪とギルドカードを渡しておく」

 一度に四十人の冒険者を地上に出すとかなり目立つため、時間を空けて八人ずつ送り出す。第二陣は十五分後だ。

***

 一時間後、すべての女性たちを階段へ送った俺は、二つの屋敷を亜空間にしまい、モニターを見つめていた。
 すでに三十二人が地上のテント内に到着している。

「特に問題なさそうだな」

 彼女たちを運ぶための客車は新しく作ってあり、共有空間に置いてある。今日のために作ったドラゴン運搬用の客車も〈空間拡縮スペースサイジング〉で中の空間を拡張してあり、部屋は1LDKで風呂・トイレ付きのかなり広いリビングの間取りにしてある。百人でも余裕で過ごせる広さだ。これで四十人の女性たちを一度に運ぶことができる。

「ああ、それと彼女たちに渡したギルドカードを後で回収しておいてくれ。いずれここの冒険者ギルドに提出したいし」

 今回は便宜上利用させてもらったが、ギルドに提出することで長らく消息不明だった冒険者の死亡が確定することになる。家族がいた冒険者もいるだろうから、いずれギルドに提出するつもりだ。


 そんな話をしていると、最後の八人もテントに辿り着いた。

「全員無事に辿り着いたようだな。リディア、あとは頼んだ」

 俺がそう言ってモニターを見ると、映っているリディアは涙ぐんでいた。

『すぐそこまで来ているのに……アレスさまのお手伝いができないのが歯がゆいです……』

「大丈夫だ、リディア。それにここを踏破するとなると、あと二ヶ月から三ヶ月かかりそうだ。ここの踏破は俺に任せて、リディアたちはエヴァルシアを頼むよ」

『アレスさま……』

 よく見ると、後ろでイレーヌとエリュシアが泣いていた。そうだった、この二人は泣き虫だった。

「イレーヌ。エヴァルシアに着いたら、その女性たちに〈美療〉でリラックスさせてやってくれ。頼りにしてるぞ」

『わ、わかったわよ。アンタも……ケガするんじゃないわよ!』

 そこまで言うと、イレーヌはモニターの画面から走って消えた。だが、イレーヌの泣き声だけがこちらに聞こえていた。

「エリュシア、無事でよかった。安心したよ」

『ア、アレス! ごめん! アタシのせいで!』

「違う。エリュシアのせいじゃない。俺が油断しすぎていたんだ。これまで順調すぎたせいで、相手を侮っていた。いい勉強になったよ。エリュシア、前を向いてくれ。エリュシアが笑ってくれていたほうが、俺は嬉しい。『ルミナ・ブランカ』は受け取ってくれたか? 俺が地上に戻れたら、少し時間をくれ。伝えたいことがあるんだ」

 だが、エリュシアは俺の言葉の途中から涙が止まらず、もはや返事もできない状態だった。リディアがそっとエリュシアを抱きしめ、代わりに答えた。

『エリュシアはこれまで自分を追い詰め続けていましたが、アレスさまのお言葉で救われたと思います。これでエリュシアは大丈夫です。私たちはこれから、この女性たちをエヴァルシアに運びます。どうか、アレスさま、ご健勝であられますように』

 リディアの頬に一筋の涙が流れた。

「大丈夫だ、リディア。俺は負けない。必ずこのダンジョンを踏破してみせる。それじゃ、リディア、またな」

『どうかアレスさまに神のご加護がありますように』

 その会話を最後に、俺はモニターの魔力を切った。名残惜しいが、今回は四十人の女性の救助が目的だ。俺たちの会話でいつまでも待たせるわけにはいかない。それに、リディアたち三人は不法入国状態なので、見つからないうちにそこを去ったほうがいいだろう。

 ◇

 四十人の女性を地上に送った俺は、気になって階段エリアの南側にある石板を確認した。

「やはり名前は書き換わっているか」

 東の穴と南の穴の付近には“アレス”と書かれていた。コボルトのオーブとアンデッドのオーブの所有権が俺にあるということだろう。

「さて、次はあいつらを処理するか」

 俺はオークのエリアに置いてきた、女性化した〈黒牙団〉がいる城壁で囲んだ採取エリアに向かって飛んだ。


 三十分ほどでオークキングの城の手前、城壁で囲まれた採取ポイントに到着した。鉄格子の前で女性化した〈黒牙団〉の七人を見つめながら、どうするか考える。このまま置いておいても使い道はないし、地上に戻しても奴隷から解放されたら再び邪魔されるだろう。殺せば心配はいらないが、俺は人を殺したくはない。

「スキルさえ奪えば、地上に戻しても問題ないのだが……」

 俺はいくら女性化していても、元男性を相手にしたくはなかった。

「オークに頼むか」

 俺は〈黒牙団〉が入った鉄格子をそのまま浮かせ、七人を一つ手前の集落へ運んだ。一つ手前の集落は、壊滅させた後、すでに数日が経っており、百十匹の新たなオークが集まっていた。

「とりあえずオークジェネラル七匹を従魔にして、あとは殲滅」

 俺は七匹だけ残して、残りのオークを殲滅した。

「じゃ、お前たちはここで待て」

 従魔にしたオークジェネラルをその場で待たせ、鉄格子に入っていた〈黒牙団〉の七人を外に出した。鉄格子は亜空間に回収しておく。

 俺はオーク七匹に一つずつ指輪を配り、

「この指輪を使って、この七人のスキルと称号をすべて奪え」

 オークに、その七人のスキルと称号を奪わせた。すべて終わったところで、俺はそのオークを殺して亜空間へ収納し、元々その七人が持っていたスキルと称号を自分に移した。

(俺が直接七人から奪えないから、この手段しかなかったとはいえ、我ながら鬼畜な方法だな……)

 すべてのスキルと称号を奪った女性化した〈黒牙団〉の七人は裸だったが、〈洗浄クリーン〉をかけた後、今日解放した女性四十人から回収していた黒いチョーカーとその女性たちが元々着ていた貫頭衣かんとういを着せ、〈念動サイコキネシス〉で浮かせて階段エリアまで運び、そのまま置いた。

「お前らは階段を登って地上に出たら、街の奴隷商館へ行け。そこで自分たちが奴隷であることを伝えろ」

 途中で衛兵に捕まる可能性もあるが、隷属状態は解除していないため、いずれ奴隷商館が主人を書き換え、七人はそのまま奴隷として扱われるだろう。名前は男のままなので、主人を書き換えて俺の奴隷から解放されると「自分は実は男で冒険者だ」と騒ぐかもしれない。しかし、おそらく高い確率で無視されるだろう。この帝国の奴隷の扱いはかなりひどいのだから。
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