百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

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第四章 モノ・インフィニティ編

172 真理眼の選別と眠らされた冒険者

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 翌朝。
 昨晩のうちに、女性たちへの“治療”は済ませてある。そして女性の三人だけを、男性より一時間早く目覚めるようにしておいた。
 俺はメスのゴブリン“セインテス”の姿で、リビングで待機する。一応、ベッドの横には白いガウンとスリッパ、それからリビングへ来るようにとのメッセージを書いた板を置いておいた。だが、もう筆談を続ける必要はないため、ソファに腰掛け、紅茶を飲みながら静かに待っていた。
 やがて、一人の女性がリビングへやって来た。俺は穏やかに声をかける。

「初めまして。私はメスのゴブリンです。みなさんをインキュバスとサキュバスから救出しました。まずはそちらに服と下着と靴がありますので、お好きなものを着けてください。サイズが合わない場合は私が調整しますので、気軽に声をかけてください」

 女性は目を丸くして固まっていたが、やがて一度深呼吸し、口を開いた。

「ありがとう。冒険者ギルドに『メスのゴブリンに助けられた』と言っていた女性冒険者が何人かいたけど、本当だったのね……」

 そういえば、これまでにも何人もの女性冒険者を救出し、治療して地上へ送り返していた。噂が広まっていても不思議ではない。

 その後、残りの女性二人も目を覚まし、同じように着替えてもらった。

「男性の方々は、もう少しあとで目を覚ますはずです。みなさんは同じパーティなのですか?」

 すると、一人の女性が答えた。

「同じパーティと言えばそうだけど……今回はお試しで組んだだけなの。厳密には同じパーティではないわ。もともとはこの三人で活動していたのよ」

「そうでしたか。それでは、先に朝食をどうぞ」

 俺はテーブルの上に、エルマが作った朝食を亜空間から取り出して並べた。

「どうぞ、お召し上がりください」


 三人の女性が食事を終え、食後の紅茶を飲んでいるころ、ようやく男性三人も目を覚まし、リビングへやって来た。

「初めまして、男性の方々。私はメスのゴブリンです。みなさんをインキュバスとサキュバスから救出しました。まずはそちらに服と下着と靴がありますので、お好きなものを着けてください。サイズが合わない場合は私が調整しますので、気軽に声をかけてください」

 女性たちのときとほぼ同じ説明をしたのだが、男性たちの反応はまったく違っていた。

「おい! マジでメスのゴブリンっていたのかよ!」
「すげぇ! かなり希少種じゃねぇか!」
「耳がでかいだけで、ほとんど人間に見えるな!」

 まるで珍しい動物を見るような視線だった。
 確かに、この大陸でメスのゴブリンは俺一匹だけかもしれないが……どうにも、感謝されているようには見えない。

 女性たちと同じように食事を提供したが、男性冒険者三人の態度は終始尊大だった。

「おい、ゴブリン! この美味いメシ、まだあるんだろ? あるなら持ってこい!」
「さっさと追加を出せよ!」
「こんなうまいメシ作れるなら、俺の従魔にしてやってもいいぞ! ガハハハ!」

 なんだ、こいつらは。
 女性冒険者たちは、そんな男たちを白い目で見ていた。

 ……こういう手合いに親切にしても、ろくな結果にならない。元の世界で、そんな経験をした気がする。
 試してみるか。

〈真理眼〉――女性たちへ問いかける。

「あなたたちは女性ですよね?」

 女性たちは、何を言っているのか分からないという顔をしながら答えた。

「そうよ、女よ」
「え? まさか男に見えたとか?」
「れっきとした女ですよー」

 続いて、男性たちへ同じように問いかける。

「あなたたちは男性ですよね?」

 男性たちは面倒くさそうに答えた。

「当たり前だろ!」
「はあ? 女に見えるのか?」
「どう見たって男だろうが!」

 ふむ。この質問自体に意味はない。比較のためだ。本命は次の質問だ。

「このあと、あなたたちが使っていた武具を返します。そのとき、あなたたちは私を捕まえようとしますか?」

 女性たちを見る。

「そんなことしないわ!」
「恩を仇で返すようなことはしない!」
「あなたには感謝しかないの。絶対に危害を加えないと誓うわ」

 続いて男性たちを見る。

「そんなことするわけねぇだろ?」
「助けてもらったのに、捕まえるわけないじゃないか」
「そんなに警戒するなよ。こっちで一緒に話そうぜ」

 なるほど。
 嘘をついた人間は、赤く光って見えるのか。

「では――一、二、三」

 俺は順番に男性たちへ触れ、〈熟睡ディープスリープ〉を発動させた。三人は即座に意識を失い、その場に崩れ落ちる。

 女性たちへ説明する。

「彼らは嘘をつきましたので、眠らせました。このまま階段エリアに放置します。地上へ戻ったら、ギルドへ報告して回収してもらってください」

「わ、わかったわ……」

 その後、集落の倉庫にあった武具を修理したものをすべて見せ、彼女たちが元々着ていた装備を返した。男性たちの装備についても、女性たちが覚えていたため、男性たちの服を脱がせて武具を装着させておいた。


 それから客車ごと階段エリアまで運び、男性三人をその場に放置した。

 女性たちへ告げる。

「ここは魔物が強いダンジョンです。あのエリアでさえ対処できないようなら、このダンジョンへの挑戦は控えたほうがいいでしょう」

 女性たちは申し訳なさそうな表情を浮かべた。そして、そのうちの一人が代表して口を開いた。

「私たちは自信過剰だった。このダンジョンに挑むのは早すぎたのよ……あのままだったら、きっと死んでいたでしょう。本当にありがとう。もっと強くなってから、また挑戦するわ」

 ……そうか。
 本音を言えば、このダンジョンにはもう来ないほうがいい。だが、それを決めるのは彼女たち自身だ。俺が口出しすることではない。

「では、皆さま、お元気で」

 俺は透明化し、その場から姿を消した。

 さて――ゴブリンエリアの攻略を進めるか。
 俺は透明化したまま“レッドキャップ”へと変身し、階段エリアから二十一個目のゴブリンエリアの集落へ向かって飛行した。

 ◇

 ――一週間後。

 俺はゴブリンエリア最奥にて、ゴブリンキングを討伐した。
 ゴブリンは基本的にオークより弱い。たとえ高レベルのスキルを持っていたとしても防御力は低く、“全滅バッチ”で使用している〈溶岩弾マグマショット〉がボスにも有効だった。そのため、これまでで最も容易なエリアだったと言える。
 これで、このダンジョンからゴブリンは完全に消滅したことになる。

 さて、ゴブリンのオーブをオークエリアへ設置するため、中央エリアへ向かって飛行していたとき――

「あれ? 〈気配察知〉に反応がある?」

 採取ポイントには、俺が壊滅させたあとに新たに建てられた簡素な木造の建物が存在していた。そして、その中には――

「ああ……この短期間で捕まった人がいるのか」

 捕らえられていたのは、若い女性ばかりだった。女性というよりも、まだ少女と呼ぶべき年齢の者も多い。
 やはりゴブリンを甘く見て、このダンジョンへ挑む初心者が後を絶たないのだろう。

 しかも――捕らえられていたのは、この集落だけではなかった。

「マジか……こんなにいるのか」

 中央エリアへ向かう途中で、合計十人の少女を救出した。
 全員に〈熟睡ディープスリープ〉をかけて安静状態にし、〈完治2エクストラヒール・セカンド〉を施したあと、客車のベッドで眠らせている。

「今日はオークエリアにオーブを設置して……夜はそこで“治療”だな……」

 俺は中央エリアを経由し、オークエリアへ入る。そして城の一つ手前にある城壁を目指し、空を飛んだ。
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