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第3章 スライム5兆匹と戦う男編
第36話 すげえ眺め
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第36話 すげえ眺め
「なんだよ。あの大臣は! あいつが依頼した作戦じゃないのかよ」
大臣と面会した部屋から従者たちも全員出て行って、自分たちだけになってから、レンジは地団太を踏んだ。
「説明してなくて悪かったわね。ボルトを使える人間を探して連れてくるっていうこの作戦は、うちの騎士団が立案したの」
「正確に言うと、こいつの案な」
イヨが椅子の背を抱えるように座りながら、ライムを指さした。
「大臣は我々の計画の後見役になって下さったのだ」
団長が立ったまま言った。
「この作戦の路銀や、レンジ殿への報酬の金貨などすべて用立てて下さったのもパウアマレロ様だ」
「そ。あの大臣、うちの何代か前の団長を嫁にしててな。その縁で、うちの騎士団には昔からなにかと肩入れしてくれてるんだ」
バレンシアはそう言って、団長をチラリと見た。
「でも、あの言い方はねえだろ」
レンジがなおも不平を口にすると、ライムが首を振った。
「今、デコタンゴール王国の内政はぐちゃぐちゃよ。目の前にスライムの大群が迫っている現状、大貴族や大商人はみんなこぞって国外へ逃げ出しているの。宰相も1か月前から病に臥せってるってことになってるけどぉ、とっくに逃げだしてるわ。バーレバレよ。そんな状況で、国としてなんとか踏ん張ってるのは、あのパウアマレロ様がほとんど一人で奮闘しているおかげなの」
団長もうなづいた。
「実際のところ、今あの方に倒れられては、スライムの群れに襲われる前に、この国は内側から崩壊しかねないのだ」
「そう……なのか」
レンジは、怒りを持って行く場所がなくなっていくのを感じて、頭をがりがりと掻いた。
「我々に今必要なのは労いの言葉ではない。やるべきことをやれる環境なのだ」
団長の言葉のあとを、バレンシアが受けて言った。
「大臣が言ってくれたろ。いいから、やってみろ。好きなようにしろって。今王国の戦力は魔王城襲撃作戦の失敗でガッタガタに落ちてる。傭兵団まで逃げやがった。そんな状況で、アタシらに自由に動いていいって言ってくれたんだぜ」
「あー! わかった、わかった! 俺が悪かったよ。悪かった! 空気が読めなくてな!」
レンジが天井を見上げてそう言うと、ライムがまたその肩に手を置いた。
「でもあんたの気持ちは嬉しかったよ。ありがと」
そんなやりとりをしていると、ふたたび扉が開いた。
あの取り次ぎの小男が汗を拭きながら顔を覗かせて言った。
「あの。大臣が、あなたがたを来賓として遇するようにと……」
それを聞いて、レンジたちは顔を見合わせてから、笑った。
「あー! 風呂も借してくれるとはな!」
バレンシアが廊下を歩きながら上機嫌で言った。
「王宮の風呂にいっぺん入ってみたかったんだよ!」
聖白火騎士団の一行は、王宮の来賓として接待を受けていた。まず最初に所望したのは、もちろん風呂だった。
どれほど入っていなかっただろう。ここまで体を拭く余裕もなかったのだ。
「おいレンジ」
バレンシアがレンジの頭を抱えた。
「ちゃんと洗えよ」
「なんだよその子ども扱いは。汗くせえから、おまえこそとっとと行けよ」
「なんだコラ」
レンジは女性陣と別れ、男風呂に案内された。超上流階級の風呂というものを初めて体験したが、すべてがだだっ広すぎて、結局隅のほうで心細い思いをしながら体を洗った。あと、世話役の女性がついてくれたが、大変なベテランの方だったので、懸念の息子は眠ったままだった。
その後、大食堂のようなところで食事にありつけた。まともな食事はいつぶりか、という状態だったので、食べている間の記憶がほとんどない。
レンジは、ただただ、目の前に盛られた料理を肉食獣のように片っ端から平らげていく女騎士たちに負けまいと、手と口を動かし続けた。
ようやく人心地がついたところで、レンジはライムからワインを勧められた。
「え、いいの?」
「今日はもういいわ。おかげさまでスライムアタックには間に合ったから。今日はゆっくりして、明日作戦の打ち合わせをしましょう」
そう言われては断る理由はない。レンジはワインをガブガブと飲み干した。
「せいのつくものも食えよ」
バレンシアにそう言われ、レンジはやたらと味の濃い亀の血などを喉に押し込まれた。
なんなの。
その間も、レンジはマーコットが顔を合わせてくれないのが気になっていた。あの求婚騒動以来、ずっとこんな調子だ。
まあ、明日になればまたいつものマーコットに戻るだろう。
そんな風に軽く考えていた。
そんなこんなで、酒宴がお開きになった時には、もう夕方だった。
昼間っから、なにやってんだ俺は。
レンジが頭を振って、酔いざましに風にあたりたい言うと、団長とライムが「いい場所がある」と言って、連れ出してくれた。
王宮の中の階段をどんどん登り、「もう歩けねえよ」と弱音を吐いたところで、ようやく外に出た。
「すげえ眺めだな」
城の一番高い塔の上だった。
夕焼けが地表を染めている。
王都の全景が一望できる場所だった。レンジはその絶景に、しばし酔いを忘れた。
「あそこ、見てみて」
ライムに肩を叩かれて、そちらに目をやると、王都の城壁の外のはるか先に、なにか青いものが見えた。
蜃気楼のように横に広がっている。
目を凝らしてそれを見ていると、ふいに気が付いた。
「あれが、スライムの群れか!」
「そう」
答えたライムは歯を食いしばっている。セトカも同じだった。
そこに至るまでに、いくつもの町や村が点在しているのが見えた。相当な距離がある。なのに、青くたなびく一帯は、どこまでも広がって見えた。
「5兆匹……」
レンジは絶句した。あらためて、その数の恐ろしさを認識させられた。まるで湖か、海のようだった。
「すげえ、眺めだな」
レンジはただ茫然とその光景を見ていた。
「なんだよ。あの大臣は! あいつが依頼した作戦じゃないのかよ」
大臣と面会した部屋から従者たちも全員出て行って、自分たちだけになってから、レンジは地団太を踏んだ。
「説明してなくて悪かったわね。ボルトを使える人間を探して連れてくるっていうこの作戦は、うちの騎士団が立案したの」
「正確に言うと、こいつの案な」
イヨが椅子の背を抱えるように座りながら、ライムを指さした。
「大臣は我々の計画の後見役になって下さったのだ」
団長が立ったまま言った。
「この作戦の路銀や、レンジ殿への報酬の金貨などすべて用立てて下さったのもパウアマレロ様だ」
「そ。あの大臣、うちの何代か前の団長を嫁にしててな。その縁で、うちの騎士団には昔からなにかと肩入れしてくれてるんだ」
バレンシアはそう言って、団長をチラリと見た。
「でも、あの言い方はねえだろ」
レンジがなおも不平を口にすると、ライムが首を振った。
「今、デコタンゴール王国の内政はぐちゃぐちゃよ。目の前にスライムの大群が迫っている現状、大貴族や大商人はみんなこぞって国外へ逃げ出しているの。宰相も1か月前から病に臥せってるってことになってるけどぉ、とっくに逃げだしてるわ。バーレバレよ。そんな状況で、国としてなんとか踏ん張ってるのは、あのパウアマレロ様がほとんど一人で奮闘しているおかげなの」
団長もうなづいた。
「実際のところ、今あの方に倒れられては、スライムの群れに襲われる前に、この国は内側から崩壊しかねないのだ」
「そう……なのか」
レンジは、怒りを持って行く場所がなくなっていくのを感じて、頭をがりがりと掻いた。
「我々に今必要なのは労いの言葉ではない。やるべきことをやれる環境なのだ」
団長の言葉のあとを、バレンシアが受けて言った。
「大臣が言ってくれたろ。いいから、やってみろ。好きなようにしろって。今王国の戦力は魔王城襲撃作戦の失敗でガッタガタに落ちてる。傭兵団まで逃げやがった。そんな状況で、アタシらに自由に動いていいって言ってくれたんだぜ」
「あー! わかった、わかった! 俺が悪かったよ。悪かった! 空気が読めなくてな!」
レンジが天井を見上げてそう言うと、ライムがまたその肩に手を置いた。
「でもあんたの気持ちは嬉しかったよ。ありがと」
そんなやりとりをしていると、ふたたび扉が開いた。
あの取り次ぎの小男が汗を拭きながら顔を覗かせて言った。
「あの。大臣が、あなたがたを来賓として遇するようにと……」
それを聞いて、レンジたちは顔を見合わせてから、笑った。
「あー! 風呂も借してくれるとはな!」
バレンシアが廊下を歩きながら上機嫌で言った。
「王宮の風呂にいっぺん入ってみたかったんだよ!」
聖白火騎士団の一行は、王宮の来賓として接待を受けていた。まず最初に所望したのは、もちろん風呂だった。
どれほど入っていなかっただろう。ここまで体を拭く余裕もなかったのだ。
「おいレンジ」
バレンシアがレンジの頭を抱えた。
「ちゃんと洗えよ」
「なんだよその子ども扱いは。汗くせえから、おまえこそとっとと行けよ」
「なんだコラ」
レンジは女性陣と別れ、男風呂に案内された。超上流階級の風呂というものを初めて体験したが、すべてがだだっ広すぎて、結局隅のほうで心細い思いをしながら体を洗った。あと、世話役の女性がついてくれたが、大変なベテランの方だったので、懸念の息子は眠ったままだった。
その後、大食堂のようなところで食事にありつけた。まともな食事はいつぶりか、という状態だったので、食べている間の記憶がほとんどない。
レンジは、ただただ、目の前に盛られた料理を肉食獣のように片っ端から平らげていく女騎士たちに負けまいと、手と口を動かし続けた。
ようやく人心地がついたところで、レンジはライムからワインを勧められた。
「え、いいの?」
「今日はもういいわ。おかげさまでスライムアタックには間に合ったから。今日はゆっくりして、明日作戦の打ち合わせをしましょう」
そう言われては断る理由はない。レンジはワインをガブガブと飲み干した。
「せいのつくものも食えよ」
バレンシアにそう言われ、レンジはやたらと味の濃い亀の血などを喉に押し込まれた。
なんなの。
その間も、レンジはマーコットが顔を合わせてくれないのが気になっていた。あの求婚騒動以来、ずっとこんな調子だ。
まあ、明日になればまたいつものマーコットに戻るだろう。
そんな風に軽く考えていた。
そんなこんなで、酒宴がお開きになった時には、もう夕方だった。
昼間っから、なにやってんだ俺は。
レンジが頭を振って、酔いざましに風にあたりたい言うと、団長とライムが「いい場所がある」と言って、連れ出してくれた。
王宮の中の階段をどんどん登り、「もう歩けねえよ」と弱音を吐いたところで、ようやく外に出た。
「すげえ眺めだな」
城の一番高い塔の上だった。
夕焼けが地表を染めている。
王都の全景が一望できる場所だった。レンジはその絶景に、しばし酔いを忘れた。
「あそこ、見てみて」
ライムに肩を叩かれて、そちらに目をやると、王都の城壁の外のはるか先に、なにか青いものが見えた。
蜃気楼のように横に広がっている。
目を凝らしてそれを見ていると、ふいに気が付いた。
「あれが、スライムの群れか!」
「そう」
答えたライムは歯を食いしばっている。セトカも同じだった。
そこに至るまでに、いくつもの町や村が点在しているのが見えた。相当な距離がある。なのに、青くたなびく一帯は、どこまでも広がって見えた。
「5兆匹……」
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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