精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

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第016話 新たな商機

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 試食による宣伝効果には二つの意味がある。

 一つは勿論、品質の保証。

 美味しさは元より、それがあなたに取って合うものであるというのを確実に伝えられる事。

 二つ目は。

「ちょ!! テルタの味見はもう無いの!?」

「すみません。先程のお客様がご賞味なさったので最後でして……」

「じゃあ、良いわ。テルタは三つ買うから。そこのゲール。食べさせて。良いものなら買うから!!」

「畏まりました、お嬢様。流石ですね、お目が高い。このゲールも逸品でして」

「そういうの良いから。好きだから頼んでいるの!!」

 ディスプレイ、視覚による宣伝効果だ。

 真横で他人が美味しそうに商品を食べている。

 視覚の暴力である。

 僅かな試食が尽きれば、その恩恵には与かれない。

 ならばと、新規開拓。

 買わなくても良いものでも、場の熱狂に煽られて財布のひもが緩む。

 たまの贅沢を覚えて頂いているという事で、さくさくと処理を進める。

 会計的な問題?

 元々精霊さん案件なので元手はタダだし、試供するのは極僅か。

 朝市に関しては、常設市程客引きにうるさくはない。

 客層が主婦やお仕事で来ているプロ、偉い人絡みのため、騒動を起こす人というのが極端に少ないためだ。

「すまない。そこのレンドラーナ草に触れても良いかな?」

 穏やかな風貌の男性の言葉に微笑みを返す。

「えぇ。是非ご確認下さい。肉厚で弾力も申し分ありません。そのまま切って生で食べても美味しく、正に今が食べ頃でしょう」

「ほぉ。分かるのかい。本当だ。この弾力を維持しているのは凄い。新鮮な証拠だ」

 如何にもプロの料理人といった温和だけど鋭い視線と挙動で品物を選別していく男性。

 リサさんの話だと、この手のプロは珍しいものならば手を出すけど、一般的なお野菜何かは馴染みの店から卸すと聞いていた。

 折角なのでちょいと話を聞いてみたら、昨日の薬種の噂を聞いて市場に出てきたそうだ。

「この時期に森に入ったのなら、旬の幸も扱うかと思ったんだ。これだけの品質だったのは誤算だけどね」

 はにかみながら籠一杯に詰め込んで去っていく料理人。

 どうもこの人も有名人だったらしく、そこからはプロの比率が若干上がる。

 こうなると経験値不足なリサさんだと追い付かないので、空蝉モードを発動出来そうなくらい俊敏に動き回る必要が出てきた。

「リサさん、リーロ二束とポイタヌ五個をこのお客様に。代金は頂きました!!」

「う、うん!!」

 昨日に輪をかけての大忙し。

 在住の主婦や店舗のプロが相手なので、貨幣での支払いが主体なのは大助かり。

 こんな状況で物々交換とか、死ねる。

 高価な果実も、安価な野菜も万遍無く売れていき、太陽が中天を超える頃には概ね完売御礼かんばいおんれい状態になった。

 もうね、二人してぱたんきゅー。

 ぐるぐるまなこで、にへらっと笑いあう。

「凄かったですね……」

「凄いなんてものじゃ無いよ……。あー、疲れた」

 憩い合って、さくさくお店を閉めるかなと。

 これならば村に早めに帰られそうだと思ったら、ぽつりと人が一人立っている。

 先程お客さんで訪問してくれた女性だなと。

 偉く上品な装いで、記憶に残っていた。

「少しお時間を頂いても?」

「えぇ。後は閉めるだけですので、問題ありません」

 態々閉店を狙ってくるだけ気を使ってくれているのだなと思いながら話をしてみると。

 北側の結構な有力者のお家の使用人らしく。

 出来ればこのレベルの品質のものをある程度の期間定期的に仕入れられないかと。

 初秋は実りの季節。

 冬になるまでに社交が頻繁に行われる時期でもあり、良い食材は欠かせないそうで。

 特に珍しい辺境の滋味を求めるお客様が多いのだが、そんなものは早々手に入らない。

 なので、伝手があればどこも喉から手が出るほど欲しいのだそうだ。

 取りあえず暫定上司のリサさんにお伺いの視線を向けると、ふるふると首を振られる。

 表情からして、否定ではなく判断不可能って感じの答えだ。

 まぁ、精霊さんに頼ればまだまだ実りは残っているし、大丈夫かなと。

「森の恵みですので、どれ程がご用意出来るか分かりません。それでも尽力させて頂く範囲でよろしければ」

 私の言葉に、使用人の女性のたおやかな腕が伸び、拳を握る。

 こつんと合わせれば、契約成立なのだった。
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