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第034話 ぐりぐりと子供を愛でる会

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 お姉様方の賛成多数について。

 昔から子供を望むなら肉食え、肉。

 そんな言い伝えがあるそうで。

 まぁ、鉄分が足りなくなりがちな女性。

 手軽に摂取出来るとなれば、肉でしょうか。

 冬の間はあれです。

 お仕事も滞りがちなので、巣籠りの時期なのです。

 なので、自然とね。

 ぽこっと。

 子供が出来ちゃう時期なのですよ。

 人生ゲームの車に、棒を一本足す感じになるんです。

 その準備と言いましょうか。

 なので、鉄分寄越せって感じなのです。

 まぁ、実際には熊とかの大物。

 あいつのお肉に対して、塩の絶対量が足りないって。

 調理担当だから、分かるんです。

 で、再度現れました。

 村の中央にドンとそびえる、露天竈。

 ずんずんと串刺しにされて並べられる肉、肉、肉、野菜、肉。

 お酒?

 駄目です。

 まだまだ冬支度は始まったばかり。

 ここで飲んだくれていては、終わりません。

 男性陣は意気消沈していますが。

 怖いお姉様方が睨みを利かしています。

 抜けるような秋の空。

 ぱちぱちと鳴る薪に零れる脂。

 その度に、じゅわっと上がる煙と香り。

 肉の焼ける匂いと相まって。

 ダイレクトにお腹へアタックです。

「んだば。麦蒔きも終わったでな。そぃを憩うちゅぅ事で」

 唐突に前に立たされたセディスさん。

 村長歴もそれなりとあって、奇麗にまとめてきます。

「宴じゃ!!」

 セディスさんの宣言と共に、群がる村人達。

 ちびっこ達の歓喜はリミットが振り切れています。

 収穫祭なんて一年に一回の宴の後に、また宴。

 盆暮れ正月が一度に押し寄せた感じと見た。

「おじちゃん、ありがと!!」

「おぃちぃ……」

 とことこてちてちと、少年と小さな女の子が近づいてきてお礼を述べる。

 いつもならリサさん一家に向かっていくのだが。

 今回は違うと伝えられたそうだ。

 ぐりぐりと頭を撫でてみると、嬉しそうにててーっとまた竈の方に向かっていった。

 あぁ和むなと。

 振り返ると、目をキラキラさせた子供達の列。

 あー、精霊さん達、精霊さん達。

 関係の無い方の列への侵入はご遠慮下さい。

 ちぇっ、とか言わない。

 という訳で、暫しの間、ぐりぐりと撫でる会が開催されるのであった。

「お疲れ様」

 そっと皿を差し出してくれるのはリサさん。

 はい、大変でした。

 子供もそれなりの数がいますので。

 あ。

 赤ちゃんもいました。

 だーとかって言いながら、指をにぎにぎしてくれましたよ。

 お母さん、たっぷり食べて、たっぷりとお乳を上げて欲しいものです。

 はくりと口に含むと、少し臭い野生の味。

 でも、溢れるようなドングリを思わせる甘い香りに満ちた脂とハーブがそれを上手く包み込み。

 野趣という感じに仕立て上げている逸品。

 最近のお気に入りは、赤くならない唐辛子といったハーブ。

 ハバネロみたいな顔をしているんですが、丸いホットさで何にでも合うのが特徴。

 辛すぎず、旨味を引き立てる、名バイプレイヤーという感じなのです。

 こいつがふんだんに使われたクマのロースト。

 おいしゅうございました。

 持ってきてくれたリサさんに感謝。
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