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第092話 口合戦
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「諸人よ、聞けぃ!!」
リサさんに教えてもらい、豪族さんその人と分かった男が叫びます。
中々堂に入った雄叫びで、きちんと長城の中まで響いてくるのは流石豪族。
伊達に人を率いている訳ではないなと思わせます。
「皆が汗水を流し塗炭の苦しみに喘いでいる最中、先祖より賜いし伝来の土地を台無しにし、あまつさえ税も払わぬ悪行千万の数々……」
通常ですね。
口合戦って、自陣を高揚させて、敵陣に動揺をもたらすものなのです。
勝っても負けても賊滅なんて不可能ですから、きちんと正当性を主張しておいて。
後で同化して合流という流れになったとしても、その正当性を拠り所に一緒になりましょうって話なのです。
でもね。
豪族さんの言い分に関しては、独り善がりというより捏造の数々で。
いや、盛るのは良いんですよ?
歴史を見ても、それなりに盛るのが文化でしたから。
でも嘘八百を並び立てるとどうなるかは……。
長城の壁をびりびりと揺らすほどの響きが村の中から轟く。
それはこの生活を。
父祖の地を追われ、今までとは違う農地を耕す事を強いられ、その上で課される労働に喘ぐ人達の、心の砲声だった。
それはそうだ。
こういう理由で二進も三進も行きません。
なので、先祖が大切に育てた地を捨てて、新天地へ赴きましょう。
しょうがないので従う。
表向きに否を言ったとしても、統制が崩れるだけで何も良い事はない。
特に長く恵みを受けてきた老いた人に取っては苦渋の選択だったろう。
畑の土を持ってきたといっても、ここは見知らぬ地。
日々の生活を重ねてきた風景は失われ、慣れぬ土地での過酷な労働。
その上、知らぬ作業まで課される日々。
リサさんは語ってくれた。
村長が、今まで付き合ってきた人々が懇切丁寧に皆を説得してくれたと。
慣れぬ地で心身を損ないがちな人々を、皆がかばい合い生きてきたと。
祭りが多い?
そうやって発散でもしなければ、いつか籠ったガスは大爆発を起こしていた。
それほどまでに誰もが体を引きずり、心の爪を荒れ地に引っ掛けながら僅かに前進する日々。
それを知らぬ、それを成した元凶の言葉。
魂の慟哭、心の怨嗟。
それが形を成し、噴き出した叫びは百里をかける勢いで、大気を揺らした。
はるか彼方に見える人々の動揺すらも目に見える中。
私は口を開く。
「私は問う。塗炭の苦しみに喘ぐ仲間とやらに、私心無くすべての財を分け与えるのか? 新たな仲間として女を犯さず迎え入れるのか? 老いた者をこれよりの生活の障害とみなさず殺さないのか?」
精霊さんがひよひよと手のひらを振ると、向こうの陣に声が届くのが分かります。
「自らの行いを悔い改めることもなく、悪逆非道を重ねようとするさもしさ。誰が許そうとしても、踏みにじられたものが許す訳もなく」
ふぅと一つ、大きく息を吐き、そして吸う。
「疾く去ね。貴様らへの怨嗟は天をも焦がす劫火に匹敵する」
私が手を挙げると、精霊さん達がインディアンポーズで円を描き始める。
その瞬間、噴火もかくやという勢いで、炎が天まで昇っていく。
「それでも尚戦うというなら、微塵となるまで刻まれるが良い。我らの意気は天を衝く」
私の言葉に合わせるように村の人達の怨嗟の叫びはボルテージを上げ、ゆっさゆさと長城を揺らしかねない圧力を生じていた。
引きつった顔で回れ右をして戻りゆく豪族さん。
どう考えても動揺している敵陣さん。
意気軒昂……というか、バーサークな自陣。
それを見て、どうやって宥めようかなと悩んでしまう自ら。
この対比は酷いなと思いつつ、片手を上げます。
もう、口論は終わりです。
後は、力と力でぶつかり合いましょう。
リサさんに教えてもらい、豪族さんその人と分かった男が叫びます。
中々堂に入った雄叫びで、きちんと長城の中まで響いてくるのは流石豪族。
伊達に人を率いている訳ではないなと思わせます。
「皆が汗水を流し塗炭の苦しみに喘いでいる最中、先祖より賜いし伝来の土地を台無しにし、あまつさえ税も払わぬ悪行千万の数々……」
通常ですね。
口合戦って、自陣を高揚させて、敵陣に動揺をもたらすものなのです。
勝っても負けても賊滅なんて不可能ですから、きちんと正当性を主張しておいて。
後で同化して合流という流れになったとしても、その正当性を拠り所に一緒になりましょうって話なのです。
でもね。
豪族さんの言い分に関しては、独り善がりというより捏造の数々で。
いや、盛るのは良いんですよ?
歴史を見ても、それなりに盛るのが文化でしたから。
でも嘘八百を並び立てるとどうなるかは……。
長城の壁をびりびりと揺らすほどの響きが村の中から轟く。
それはこの生活を。
父祖の地を追われ、今までとは違う農地を耕す事を強いられ、その上で課される労働に喘ぐ人達の、心の砲声だった。
それはそうだ。
こういう理由で二進も三進も行きません。
なので、先祖が大切に育てた地を捨てて、新天地へ赴きましょう。
しょうがないので従う。
表向きに否を言ったとしても、統制が崩れるだけで何も良い事はない。
特に長く恵みを受けてきた老いた人に取っては苦渋の選択だったろう。
畑の土を持ってきたといっても、ここは見知らぬ地。
日々の生活を重ねてきた風景は失われ、慣れぬ土地での過酷な労働。
その上、知らぬ作業まで課される日々。
リサさんは語ってくれた。
村長が、今まで付き合ってきた人々が懇切丁寧に皆を説得してくれたと。
慣れぬ地で心身を損ないがちな人々を、皆がかばい合い生きてきたと。
祭りが多い?
そうやって発散でもしなければ、いつか籠ったガスは大爆発を起こしていた。
それほどまでに誰もが体を引きずり、心の爪を荒れ地に引っ掛けながら僅かに前進する日々。
それを知らぬ、それを成した元凶の言葉。
魂の慟哭、心の怨嗟。
それが形を成し、噴き出した叫びは百里をかける勢いで、大気を揺らした。
はるか彼方に見える人々の動揺すらも目に見える中。
私は口を開く。
「私は問う。塗炭の苦しみに喘ぐ仲間とやらに、私心無くすべての財を分け与えるのか? 新たな仲間として女を犯さず迎え入れるのか? 老いた者をこれよりの生活の障害とみなさず殺さないのか?」
精霊さんがひよひよと手のひらを振ると、向こうの陣に声が届くのが分かります。
「自らの行いを悔い改めることもなく、悪逆非道を重ねようとするさもしさ。誰が許そうとしても、踏みにじられたものが許す訳もなく」
ふぅと一つ、大きく息を吐き、そして吸う。
「疾く去ね。貴様らへの怨嗟は天をも焦がす劫火に匹敵する」
私が手を挙げると、精霊さん達がインディアンポーズで円を描き始める。
その瞬間、噴火もかくやという勢いで、炎が天まで昇っていく。
「それでも尚戦うというなら、微塵となるまで刻まれるが良い。我らの意気は天を衝く」
私の言葉に合わせるように村の人達の怨嗟の叫びはボルテージを上げ、ゆっさゆさと長城を揺らしかねない圧力を生じていた。
引きつった顔で回れ右をして戻りゆく豪族さん。
どう考えても動揺している敵陣さん。
意気軒昂……というか、バーサークな自陣。
それを見て、どうやって宥めようかなと悩んでしまう自ら。
この対比は酷いなと思いつつ、片手を上げます。
もう、口論は終わりです。
後は、力と力でぶつかり合いましょう。
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