【R18】半獣の見習い騎士が師匠の寝込みを襲おうとしたら、逆に襲われた話

みちょこ

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13話

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 チュンチュンと鳥が囀ずる音が聞こえる。
 ああ、もう朝なのか──と寝惚けた頭の中で呟き、重たい瞼をゆっくりと開いた。

「あっ……」

 いつの間に起きていたのだろう。目の前には私を抱きながら瞳を細めている師匠の顔があった。師匠は「おはよう」と優しく囁くと、唇に触れるだけのキスをした。

「んっ、おはよ、う、ございます……」

 昨日たっぷり愛し合ったせいで身体が重たくて、声まで掠れている。へにゃりと力のない笑顔を浮かべ、瞼を擦ろうとしたその時だった。

「……え?」

 左手の薬指に見覚えのない光があって、思わずぐっと目を凝らした。シルバーのシンプルな指輪に、小さな宝石が埋め込まれている。これは……?

「ナーシャ」

 顎を持ち上げられ、師匠と視線が交わる。透き通った瞳に見つめられ、息を呑んだのと同時に、師匠の唇がゆっくりと開いた。

「結婚するぞ。ナーシャ」

「……え?」

「俺の子供を産んでくれ」

 真っ直ぐに言葉を告げる師匠に、思わず瞬きを何度も繰り返す。
 結婚、子供、結婚──と同じ言葉が頭の中でループし、言葉の意味をやっと理解した刹那、瞳からぶわっと涙が溢れ出した。

「師匠っ!!」

「っ、んんっ!?」

 師匠の頬を両手で包み、ちゅううう、と唇に吸い付く。んぱっと音を立てて離すと、不意打ち喰らって目を見開く師匠の顔が見えた──けど、構わずにそのまま頬に顔を擦り寄せた。

「師匠! わたし、絶対師匠のこと幸せにします!」

「……それは俺の台詞だ」

「師匠の子供、産みますね!」

「……ああ」

 師匠は柔らかな笑みをこぼすと、私の身体に徐に跨がった。そのまま頬に手を添えられ、溶けてしまいそうな師匠の熱が伝わる。

「ししょ……う……」

 愛おしむように私を見つめる師匠に、心臓が切なく疼き出す。師匠は私の前髪をかき上げるようにして撫でると、低く穏やかな声で呟いた。

「……子供。三人は欲しい」

「……ふふっ。頑張ります」

「今からな」

 師匠は再び笑みを溢すと、私に顔を近付けた。そんな師匠の後頭部に腕を回し、甘く蕩けるような口づけを受け入れる。

「ん……っ」

 ベッドが軋む音と淡い吐息が部屋に響き渡ったのは、それから数分経ってのことで。私達はまた、深く愛し合った。









 ──それから、時はあっという間に流れていった。

 師匠に結婚しようと言われてから、直ぐに師匠の家に行ったものの「どこの娘かも分からないようなやつと結婚させられるか!」と師匠のお父さんに言われてしまい、家の中にすら通して貰えなかった。それから何度も何度もめげずに挨拶に行っているけれど、未だに結婚は認めて貰えていない。

「また来たのか! お前達は!」

 今日は既に屋敷の前にお義父さんが立っていた。どこか師匠に似た目付きで険しい表情を浮かべながら、何故か両手いっぱいに袋を持っていた。
 私は師匠と顔を見合わせ、愛娘のリーシャを抱えながら恐る恐る近付く。

「お義父さん。あの、今日はお話が……」

「うるさい! 帰れ! 結婚は認めん!」

 鼓膜が破れそうな大きな声に、リーシャが腕の中でぐずり始める。慌ててあやそうとしたものの、リーシャは瞳を潤ませて声に出して泣き始めた。

「もういい、ナーシャ。親父に会わすのはリーシャが可哀想だ」

「で、でもっ」

「親父がそう言ってるんだ。今後は挨拶に来るのもやめよう」

 師匠は私の肩を抱くと、そのままお義父さんに背を向けて、元来た道を辿ろうとした。然り気無く後ろに視線を向けると、どこか悲しそうな表情を浮かべるお義父さんの顔が。

「ま、待て!」

 お義父さんは声を裏返しながら大股で此方に近寄ると、両手に抱えていた袋を私に押し付けるように差し出した。突然の行為に躊躇したものの、リーシャが先に袋の中を覗き込んでいた。

「わぁ! おかしがいっぱい!」

「え……?」

 目を輝かせるリーシャの言葉に、恐る恐る袋の中を覗き込む。そこにはたくさんの焼き菓子、玩具、そして子供が読みそうな本──リーシャの為に用意したと思われるものが詰め込まれていた。

「ただの余り物だ! 結婚を認めるかは、考える!」

 お義父さんは俊敏に踵を返すと、足早に屋敷の中に戻っていった。師匠は受け取った袋を覗き、分かりやすく溜め息を吐き出す。

「……こんなもの、従者にでも渡すのを頼めばいいものを」

「なんか師匠にそっくりだね?」

「は?」

 主に素直になれないところが──と言いかけた言葉を呑み込み、ふふっと笑いかける。師匠は不満げな表情を浮かべたものの、暫くして私からリーシャを抱き上げた。

「お腹に障るだろう。俺がリーシャを抱いて帰ろう」

「えっ、でも。袋も持って貰ってるのに」

「駄目だ。転けないように俺の腕も掴んでおけ」

 有無を言わさない口調で、師匠はリーシャを抱いたまま腕を近付ける。
 やっぱりお義父さんにそっくりだなぁ、なんて思いながら、身体を寄り添うにして師匠の腕をそっと掴んだ。

「……お義父さんに二人目のこと話したら、何て言われるかな?」

「さぁな。また持ち帰る袋が増えるだけじゃないか」

「ふふっ、そうだね」

 小さな命が宿ったお腹を優しく撫でながら、師匠に微笑みかける。そして師匠の腕を握り直し、並んで歩きながら私達は帰路を辿った。



 師匠のお義父さんにやっと家に入れて貰えるようになったのは、私達の間に二人目の子供が生まれてからのことで。それはまた別のお話。

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感想 3

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みんなの感想(3件)

如月 めぐる

最高!!
本当にみちょこさんの作品大好きです!!
作品全部読みました!!
これからも頑張ってください!!
応援しています
٩(๑>∀<๑)۶♥Fight♥

2020.10.05 みちょこ

如月めぐる様、感想ありがとうございます(^^)

全ての作品を読んでいただけたとのことで、嬉しい気持ちでいっぱいです✨

温かな応援メッセージ、確かに頂きました(`・ω・´)ゞ

本当にありがとうございます💕

解除
ソフィア
2020.09.02 ソフィア
ネタバレ含む
2020.09.02 みちょこ

ソフィア様、感想ありがとうございます(^^)

師匠とルイスのまさかのぼーいずらぶ(*ノωノ)

ナーシャは学習能力の無さがまた笑
次回、師匠にまた襲い返されます💕

お気に入り登録ありがとうございます(/▽\)♪
応援も心強いです✨

そしてどうかお大事にしてください~😞💦
風邪が早くなおりますように((〃´д`〃))

解除
ソフィア
2020.08.30 ソフィア

団長キュンです。
作者様の作品全部好みどストライクでございます(*^^*)
良すぎて、ついつい感想を書いてしまいます…。



毎度毎度感想に返信ありがとうございます😅
結構嬉しいです(笑)

2020.08.30 みちょこ

ソフィア様、感想ありがとうございます(^^)

此方の作品にも遊びに来ていただきありがとうございます~(*ノωノ)

いえいえ!
こんな風にたくさん感想を書いていただけて、私は家で小躍りしてしまうくらい嬉しいです~!✨
作品どストライクなんて、嬉しいお言葉です!

ついつい、感想の返信に熱が入ってしまってごめんなさい💦

ソフィア様は、風邪の症状はお変わりないでしょうか?
早く体調が良くなるように祈らせて頂きます🙏

解除

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