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兵長の憂鬱
シヴィル
しおりを挟むあわや戦争で隊が全滅という事態をまぬがれ、復興のためひと足先にヴァトレーネへ帰還した。こわれた住居は建て直され、町はもとの生活へ戻ろうとしている。
雪が降って本格的な冬がおとずれる。生まれそだった港町とちがう山岳地帯の寒さに身ぶるいした。
いかに頑強な兵士でも寒いものは寒い。
皆いちばん暖かい大部屋へ集まる。浴場に隣接する部屋は、炉の配管が壁や床へ通っていて全体が暖かい。
それでも窓辺は冷気がただよい配管のない石床は凍みる。配管がすくない2階や3階の部屋はなおさら、兵たちは夕食が終わると毛布を持ってきて大部屋で過ごす。あたらしい兵舎は食堂と風呂も併設され、まえより利便がよくなった。
酒をあおり楽しそうな部下たちを横目に俺は部屋をでた。
「兵長、ゆっくりして行かねえんですかい? 」
「ああ、今日はもう寝るよ」
下っぱにも慕われてるイリアス隊長から声をかけられる。まじめでかたい兵長が居たら部下もリラックスできないだろう、俺は階段をランプで照らし自室へもどった。夏は薄手のカーテンで仕切ってるけど寒い日は扉を閉める。緊急で部下がくる場合もあって鍵だけは開けてる。
屋内用のサンダルを履き、ムートン絨毯を踏んで本棚へいく。兵長にもなると待遇はそこそこいい、報奨に一軒家を提案されたこともあったが断った。かわりに希望したのは目のまえに置かれている書物だった。
うすい紙で作られた書物は高価。重要な手紙や文書でもないかぎり、一般兵は粘土板や木版を使用する。とくに粘土板は使いまわしが利き伝達や学習にはちょうどいい。
兵法や哲学、その他もろもろの本がある。年上の部下もたくさんいて経験のあさい部分を補うために書物を頼る。階級があがれば上官や貴族との会話にそれなりの知識も必要だ。
1冊の建築書をベッドわきのテーブルへ置いた。復興で建物を視察することも多い、建築士や大工が説明してくれるけれど基本を知らなければ話にもならない。
ベッドサイドのランプが煌々とゆらめく。俺は本を片手に冷えたベッドへ潜った。
本を読みながら眠ってしまい、首の力がぬけ落ちて目が覚めた。ランプの灯芯が燃えつきかけ部屋は寒々しい色に包まれる。
重みをました毛布はやけに温かい、毛布をめくると忍びこんだシヴィルが一体化して寝ていた。シヴィルは最年少で入隊した若者、山村出身で在籍は1年ほどだが経験をかさねた兵士のように強い。そして――――
そして、なぜだか分からないが懐かれている。
毛布を持参して俺の部屋へ泊まる。ふだんは絨毯のうえで寝てるけど、今日はベッドに忍びこんでいた。
「うぅ~」
毛布をめくったせいでシヴィルは寒そうにうなる。
「シヴィル! さっさと起きて自分の部屋へもどれ」
抵抗する酔っぱらいは俺の服へ頭を突っこみ、温かさをもとめ服の中へ収まった。こんもり盛った衣類にむかって再度帰れと言おうとしたら、胸元を湿った感触がつたう。
それがシヴィルの舌だとわかりうろたえた。
「シヴィルッ!! 」
俺は部屋へひびくほど大声をだした。
ぬくもりにまみれた酔っぱらいは服のなかでうごめき、なだめるように柔らかく濡れた舌を這わせる。頭をわし掴みにしたが、ガッチリ抱きついて離さない。俺より細身なシヴィルのどこにこんな力があるのだろう。
俺が嫌がれば嫌がるほど湿った感触はうごめき、ねっとりと肌をつたう舌は胸元の突起をみつけた。
「……っ!? 」
舌先で触れられた部分へピリリと電流がはしり身をすくめた。手のひらへ力をこめたけどシヴィルは離れず、みつけた突起を執拗に弄る。舐められるたびにピリッとした感覚がして、胸の突起はかたく凝った。
ちゅ。
尖った胸元は生温かい口に吸いあげられる。
「……くっ! 」
声をあげそうになったものの、かろうじて噛みころした。シヴィルは突起を強く吸い、感じたことのない奇妙な疼きが押し寄せる。弄られた乳首はさっきより敏感に反応した。
たくみに吸いつく口は尖りの先をもてあそぶ。
「っう……く……シヴィ……ルッ」
シヴィルの唇は移動して、もうひとつの突起をなぶり始める。背中を弓なりにそらせ体の奥からおしよせる波に耐えた。焦らすように体を責められ、まるで拷問のようだ。かりに敵に捕まってどんな拷問を受けようとも耐える自信はあった。それなのに与えられている感覚に反応した身は強張る。
たまらず両手でシヴィルの頭を引きはがす。
胸の尖りを蝕んでいた唇は離れまいと噛みついた。
「ぅあっ――――っ! 」
なぶられて凝固した乳首はかたい歯に挟まれて形をかえた。声をおさえ下唇を噛んだまま手へ力をこめる。突起からシヴィルが離れて安堵の息をつく、しかし濡れた感触は腹筋の溝へそって下降した。
服はチュニックと短パンだけ、舌は下腹をつたい半起ちになったものをパンツごしに舐めた。俺の足の付け根へ力がはいり筋が張る。
パンツを押しあげる俺の先端へシヴィルが舌を這わせた。生温かい舌は布の先端をなぶり、唾液が自身の雫と混ざる。腰が浮き吐息をおさえた。
「シヴィッ――やめっ」
恋人はおろか自慰ですら片手で数えるくらい、人にされるのが未経験な体は快感の証を吐きだそうとしている。たまらず服をめくって灰色のくせ毛をつかむと、顔をあげたシヴィルは笑っていた。
「こんなになってる。ここは温かいねぇツァルニ」
かたさを増して布を押しあげるものへ彼は頬ずりをする。チェシャ猫みたいな無邪気な顔ではなく、ギラついた目と悪魔の笑み。彼がひと筋縄ではいかない性格なのは知っていたけど、酒が入ってるせいで豹変した感じだ。
シヴィルは俺のパンツを引っぱった。
「シヴィル、やめろっ! 」
「あれれ? こんなになったの、見られたら恥ずかしいのかなぁ? 」
足を藻掻いたが、俺のいちもつは握られて抵抗を封じられてしまった。握られた痛みは下半身へひろがり太ももが引きつる。
シヴィルは鼻歌をうたいながらパンツを下ろし、そり返った俺のものを露わにした。
「すげ~、さきっちょが濡れてヤラしい」
指先が濡れた鈴口へ触れる。他人には見られたくない恥ずかしいものを撫でまわされてノドの奥で声を抑えた。手の動きにあわせ反応する俺を見てシヴィルが笑う。ねっとりと弄ばれて体は汗ばみ、張りつめたいちもつは果てた。
シヴィルがこちらへ好意を寄せているのは漠然と察していた。
でもこんなこと1度もなかったのに。
――――――――――
読んで頂きありがとうございます。
「精霊の港」の シヴィルのひとりごと の対になる話かもしれません。兵長ツァルニさんの物語です。短編で済まそうと思っていたらすこし長くなってしまったのでジワジワ読んで下されば幸いです。
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