24 / 28
坂木兄弟が家にやってきました。
エピローグ
*****
「母さん遅くなるってさ」
ひそやかなデートを終え、電車を降りた俺たちは顔を見合わせた。スマートフォンを確認したユウマはマミさんの帰りが遅くなることを伝えてきた。早く帰宅する予定だった彼女は残業で遅くなり夕食を作れなくなったようだ。冷蔵庫にお惣菜があるものの、こういう日は弁当や外食もめずらしくない。
「ざる蕎麦とか鍋焼きうどんで良かったら作るけど? 玉子あったっけ?」
「久しぶりにうどんもいいね、材料買いにスーパーへ寄ろうか」
「ソウマにも連絡しとく」
ソウマにも連絡すると返信があり店のまえで待っていた。ソウマが率先して持ったカゴには餅アイスやサラダチキンも追加される。お菓子を多めに買って帰り、俺が鍋焼きうどんを煮込むあいだ、ユウマとソウマは掃除と洗濯を終わらせる。ソウマは半熟の玉子と野菜をたっぷり入れて煮込んだうどんが気に入り、カレーのレパートリーに代わり時々出てくるようになった。
「ソウマ、勝手にチャンネル変えるなって」
「……」
リビングでは俺とソウマのリモコン争奪戦が発生していた。スポーツチャンネルへ切り替えたヤツは腕の長さにまかせてリモコンを上へをあげる。俺がソウマの腕へよじ登っていたら、真剣にスマートフォンの画面を見るユウマが視界へ入った。
「ユウマはさっきから何見てるんだ?」
「これ? かわいい楓のすがたを撮ってる」
「そんな動画どうするつもりだ!? スマホよこせ、消してやる!!」
ユウマへ跳びかかるとヤツも俺の届かない位置へ腕を持ち上げる。ユウマへよじ登りやっとのことでスマホを奪った。終始ニコニコしている彼を後目に画像を確認すると俺の部屋の写真まであった。
「いつ部屋へ!? あっ、こんなものまで!?」
ミズキから借りた本が写っていた。ドアが開けっぱなしだったから俺がいると思って覗いたらしい、枕元へ置いた本はスナップ写真みたいに撮影されている。表紙はポップなイラストでユウマが興味を示しそうにないライトノベル、なぜ写真へ撮ったのだろう。俺はゴクリと喉を鳴らした。
「ユウマ、まさか……読んでないよな?」
「さあ、読んだら不味いことでもあるの? なんの本?」
「べ、べつにフツーの本だよ」
「楓、またエロ本か?」
「ちがうって!!」
年下のソウマにまで冷やかされた。ユウマは意地悪な笑みをうかべるだけで真相はわからない、ぜったいに俺の反応を弄んでいる。俺がユウマに翻弄されてるうちにリモコンをせしめたソウマが寄りかかってきた。圧しつぶされてくやしい俺は明日から腕立てすると心に誓った。
ふと大事なことを思いだした。
「そういえば苗字って変わるのかな? どっちの姓になるんだろう、ユウマ聞いてる?」
「俺たちが鷹野に変わる。色々なところへ届け出しないといけないからややこしいけどね。いまは変更の手つづき中さ」
「坂木って苗字、好きだったのに……」
「俺も養子縁組せずに坂木のままでいいと思ってた。でも楓といっしょになった時におなじ姓を名乗れるから変える」
「楓、俺も同じだぞ。鷹野ソウマだ」
ユウマはくすぐったくなるような言葉を吐く。彼は法律について教えてくれたけど難しすぎて説明の半分は耳をすり抜けてしまった。ユウマとソウマは坂木兄弟ではなくなり、これからは俺が加わって鷹野3兄弟、学校でも呼び方が変わるから大変だろうが彼らは笑っていた。
買ってきたお菓子をひろげ、3人でくつろいでいたらマミさんが帰宅した。もちろんマミさんと父のぶんも夕食を用意していた。1人用土鍋へ材料をいれて煮込むだけ、お手軽に作れる。
「楓くん、当番でもないのに夕食作ってもらって――――」
「ユウマとソウマも手伝ったから手間はかかってないよ。それよりもおかえり母さん、仕事おつかれさま」
マミさんの動きが止まりこちらを見た。彼女の顔はみるみるうちに赤くなった。
「おかえり母さん、せっかく出迎えたのにただいまって言わないの? あと楓は俺のだから」
「マミ、鍋を温めていいか?」
「たっ、ただいま、ありがと……ソウマはちゃんと母さんって呼びなさい!!」
俺に『母さん』と呼ばれて不意をつかれたマミさんへ兄弟が追い打ちをかける。ユウマは俺が恥ずかしくなるような主張を付けくわえ、ソウマは覚えたての煮込みうどんを作るため台所へ消えた。マミさんはうろたえていたが、しばらくして嬉しそうにはにかんだ。
「はぁ~やっぱりマミさんに追いつけなかった。ただいま、いい匂いがするね」
「おかえり父さん、今日は鍋焼きうどんだよ。父さんもすぐ食べる?」
「匂いでお腹が減ってきたから、食べようかな」
タイミングよく父も帰宅した。父の鍋焼きうどんを作りに俺もソウマのいる台所へ走った。台所は湯気がたち、美味しそうな匂いが充満する。家族のそろったダイニングは今日も賑やかだ。
「母さん遅くなるってさ」
ひそやかなデートを終え、電車を降りた俺たちは顔を見合わせた。スマートフォンを確認したユウマはマミさんの帰りが遅くなることを伝えてきた。早く帰宅する予定だった彼女は残業で遅くなり夕食を作れなくなったようだ。冷蔵庫にお惣菜があるものの、こういう日は弁当や外食もめずらしくない。
「ざる蕎麦とか鍋焼きうどんで良かったら作るけど? 玉子あったっけ?」
「久しぶりにうどんもいいね、材料買いにスーパーへ寄ろうか」
「ソウマにも連絡しとく」
ソウマにも連絡すると返信があり店のまえで待っていた。ソウマが率先して持ったカゴには餅アイスやサラダチキンも追加される。お菓子を多めに買って帰り、俺が鍋焼きうどんを煮込むあいだ、ユウマとソウマは掃除と洗濯を終わらせる。ソウマは半熟の玉子と野菜をたっぷり入れて煮込んだうどんが気に入り、カレーのレパートリーに代わり時々出てくるようになった。
「ソウマ、勝手にチャンネル変えるなって」
「……」
リビングでは俺とソウマのリモコン争奪戦が発生していた。スポーツチャンネルへ切り替えたヤツは腕の長さにまかせてリモコンを上へをあげる。俺がソウマの腕へよじ登っていたら、真剣にスマートフォンの画面を見るユウマが視界へ入った。
「ユウマはさっきから何見てるんだ?」
「これ? かわいい楓のすがたを撮ってる」
「そんな動画どうするつもりだ!? スマホよこせ、消してやる!!」
ユウマへ跳びかかるとヤツも俺の届かない位置へ腕を持ち上げる。ユウマへよじ登りやっとのことでスマホを奪った。終始ニコニコしている彼を後目に画像を確認すると俺の部屋の写真まであった。
「いつ部屋へ!? あっ、こんなものまで!?」
ミズキから借りた本が写っていた。ドアが開けっぱなしだったから俺がいると思って覗いたらしい、枕元へ置いた本はスナップ写真みたいに撮影されている。表紙はポップなイラストでユウマが興味を示しそうにないライトノベル、なぜ写真へ撮ったのだろう。俺はゴクリと喉を鳴らした。
「ユウマ、まさか……読んでないよな?」
「さあ、読んだら不味いことでもあるの? なんの本?」
「べ、べつにフツーの本だよ」
「楓、またエロ本か?」
「ちがうって!!」
年下のソウマにまで冷やかされた。ユウマは意地悪な笑みをうかべるだけで真相はわからない、ぜったいに俺の反応を弄んでいる。俺がユウマに翻弄されてるうちにリモコンをせしめたソウマが寄りかかってきた。圧しつぶされてくやしい俺は明日から腕立てすると心に誓った。
ふと大事なことを思いだした。
「そういえば苗字って変わるのかな? どっちの姓になるんだろう、ユウマ聞いてる?」
「俺たちが鷹野に変わる。色々なところへ届け出しないといけないからややこしいけどね。いまは変更の手つづき中さ」
「坂木って苗字、好きだったのに……」
「俺も養子縁組せずに坂木のままでいいと思ってた。でも楓といっしょになった時におなじ姓を名乗れるから変える」
「楓、俺も同じだぞ。鷹野ソウマだ」
ユウマはくすぐったくなるような言葉を吐く。彼は法律について教えてくれたけど難しすぎて説明の半分は耳をすり抜けてしまった。ユウマとソウマは坂木兄弟ではなくなり、これからは俺が加わって鷹野3兄弟、学校でも呼び方が変わるから大変だろうが彼らは笑っていた。
買ってきたお菓子をひろげ、3人でくつろいでいたらマミさんが帰宅した。もちろんマミさんと父のぶんも夕食を用意していた。1人用土鍋へ材料をいれて煮込むだけ、お手軽に作れる。
「楓くん、当番でもないのに夕食作ってもらって――――」
「ユウマとソウマも手伝ったから手間はかかってないよ。それよりもおかえり母さん、仕事おつかれさま」
マミさんの動きが止まりこちらを見た。彼女の顔はみるみるうちに赤くなった。
「おかえり母さん、せっかく出迎えたのにただいまって言わないの? あと楓は俺のだから」
「マミ、鍋を温めていいか?」
「たっ、ただいま、ありがと……ソウマはちゃんと母さんって呼びなさい!!」
俺に『母さん』と呼ばれて不意をつかれたマミさんへ兄弟が追い打ちをかける。ユウマは俺が恥ずかしくなるような主張を付けくわえ、ソウマは覚えたての煮込みうどんを作るため台所へ消えた。マミさんはうろたえていたが、しばらくして嬉しそうにはにかんだ。
「はぁ~やっぱりマミさんに追いつけなかった。ただいま、いい匂いがするね」
「おかえり父さん、今日は鍋焼きうどんだよ。父さんもすぐ食べる?」
「匂いでお腹が減ってきたから、食べようかな」
タイミングよく父も帰宅した。父の鍋焼きうどんを作りに俺もソウマのいる台所へ走った。台所は湯気がたち、美味しそうな匂いが充満する。家族のそろったダイニングは今日も賑やかだ。
あなたにおすすめの小説
殿堂入りした愛なのに
たっぷりチョコ
BL
全寮の中高一貫校に通う、鈴村駆(すずむらかける)
今日からはれて高等部に進学する。
入学式最中、眠い目をこすりながら壇上に上がる特待生を見るなり衝撃が走る。
一生想い続ける。自分に誓った小学校の頃の初恋が今、目の前にーーー。
両片思いの一途すぎる話。BLです。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
夢の中の告白
万里
BL
バレー部のムードメーカーで、クラスのどこにいても笑い声の中心にいる駆(かける)。好奇心と高いコミュニケーション能力を持つ彼は、誰とでもすぐに打ち解けるが、唯一、澪(れい)にだけは、いつも「暑苦しい」「触んな」と冷たくあしらわれていた。
そんな二人の関係が、ある日の部活帰りに一変する。
あまりの疲れに電車で寝落ちした駆の耳元で、澪が消え入りそうな声で零した「告白」。
「……好きだよ、駆」
それは、夢か現(うつつ)か判然としないほど甘く切ない響きだった。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。