坂木兄弟が家にやってきました。

風見鶏ーKazamidoriー

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鷹野3兄弟になりました。《閑話》

俺はお兄ちゃんです




 父が再婚し、マミさんと坂木兄弟が家にやってきた。仮の同棲どうせい期間をすごし、俺たちはめでたく兄弟になった。父たちは結婚式をあげ中学3年生のソウマが卒業してから入籍する予定だったけど、苗字に慣れるため早い方がいいとソウマが言い、在学中に鷹野たかの3兄弟になった。



 朝晩の冷えこみに布団をひきよせ丸まっていると、部屋のドアがひらいた。かまえる間もなく重いものが上へ乗ってくる。俺は布団のすきまから腕を出して応戦するが、大きさの破壊力にかなうはずもなくくうを切るだけだった。
 やっとのことでベッドを抜けだし、むくれた顔で睨みつける。朝食当番の日だったらよくある光景だけど今日の当番はソウマ、今まさに俺を圧しつぶそうとしているヤツだ。

「なんだよソウマ? 朝から重いだろ!」

 ぬくぬく寝ていたら体のでかい弟に起こされる休日の朝、丸めた布団から顔を覗かせるとヤツは無言でこっちを見ている。バスケのコートではボールを追う鋭い目つきだが中学生に俺が怯むはずもない、眠いまぶたを見ひらきヤツの眼光に対抗する。間をおきソウマは目をそらした。ちょっと拗ねたような表情が可愛くて、睨みあいに勝ったのを素直によろこべない。

 目の前にいるのは俺を圧しつぶすほどデカい弟、可愛くみえるのは目の錯覚だ。

「えっと、なにか用だったの?」
「……タマゴサンド」
「?」
かえでのタマゴサンド、作りかた教えろ」

 ヤツは不遜ふそんにタマゴサンドの作り方をたずねてきた。たのみ方ってものがあるだろうが、俺はこんなことで咎めない。

 彼らと俺の家のタマゴサンドはちがう。坂木さかき家はふわふわに焼いたオムレツをはさみ、鷹野家はゆで卵をカットしてマヨネーズなどで和える。
 ユウマのほうが料理は上手い、けれどもソウマにとって兄の料理は少々むずかしいのかもしれない。俺のは簡単にできるからこうして聞いてくる。しぶしぶ着がえて1階へおりる。けっして俺のタマゴサンドが好いと言われて気分がよくなったわけではない、俺はお兄ちゃんなのだ。

 顔を洗いに洗面所へいくと、すでに洗濯機はまわっている。朝練の多かったソウマの起床時間は早い、部活を引退して家事へ目をむける余裕ができたようだ。



 玉子を1パックまるまる出したソウマがキッチンで待っていた。

「ソウマ、1パックは多すぎ」

 父もマミさんも仕事へ出かけ家には俺と兄弟の3人分だけ、玉子をいくつか取ってパックを冷蔵庫へ仕舞った。ソウマは1パック食べる気だったみたいで不服そうだ。かわりにハムやレタスを用意し、作り方を教えながら料理する。

「玉ねぎ入れんな」
「それはツナサンド用の玉ねぎだ、かえせ!」

 酢づけの玉ねぎを冷蔵庫から取りだしたらソウマが奪いとった。俺の届かない位置へ腕をのばして持ちあげる。ヤツの腕へしがみ付き、どうにか奪い返してみじん切りにする。
 俺に跳びかかられたくらいではダメージもないソウマは作業へもどった。ゆでたまごの殻を剥きおわったところで声をかける。

「エッグスライサーで切って塩コショウ……ソウマ、最初は大さじで量れ、マヨネーズでヒタヒタになるだろ」
「これでいいか?」
「うん、混ぜてみて少ないなら足して」

 握力にまかせマヨネーズを容器から押しだすのであわてて止めた。ソウマがスプーンでのせるタマゴは俺の2倍はある。厚みのあるタマゴサンドが完成した。
 ラップで包んで寝かせるあいだ別のサンドイッチをつくる。野菜室からトマトを取りだすとソウマが取り上げた。

「トマト入れんな」
「栄養満点だし、すききらいせず食べろよ」

 ソウマは玉ねぎ、ピーマン、トマトが苦手だ。苦手といっても好き嫌いの範疇で調理して出せばきっちり食べる。ソウマはトマトを上へかざし高い壁になった。ユウマが前に言っていたが不器用な弟なりのコミュニケーションなのかもしれない、俺はふたたび腕へよじ登る。

 ふいにソウマは静止した。俺も視線を追ってふり向き、悲鳴を上げそうになった。
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